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■関西・中部勢が上位を占める結果に
「学生フォーミュラ日本大会2021」は、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、静岡県袋井市/掛川市のエコパ(小笠山総合運動公園)で2021年9月7日(火)~11日(土)の日程で開催を予定していた車検および動的審査他の全てのイベントが中止となってしまいました。しかし、これまでとは異なる形とはなりましたが、オンラインで静的審査までで完結するという形式で8月24日(月)~9月6日(月)までの日程で開催されました。
「学生フォーミュラ」は、その名の通り学生たちが実際にフォーミュラマシンを製作するというものづくりを体験しながら、そのアイデアや技術を競うもので、世界各国でほぼ同一のルールで開催されています。現在はアメリカ・イギリス・イタリア・インド・オーストラリア・オーストリア・オランダ・カナダ・スペイン・タイ・チェコ・ドイツ・ハンガリー・ブラジル・ロシア・韓国・中国・日本で競技会が行われています。
その歴史は古く、1981年にアメリカで開催された「Formula SAE」が始まりです。学生が自ら小型フォーミュラカーを使ったビジネスの構想をし、それを売り込むという体で、車両の設計からその車両を売り込むプレゼンテーションもしながら、実際に小型フォーミュラマシンを製作。それを用意されたコースで走らせて、車両のデザインや性能評価を行ない、さまざまな角度からの審査が行われるものとなっています。
日本国内では、2003年から毎年開催されてきていました。
●2021年はオンライン審査を実施
昨年の2020年大会は、コロナ禍の影響で残念ながら開催中止となりましたが、2021年大会は限定的ではありますが開催となり、実車での審査のない静的審査と呼ばれている書類上、そしてプレゼンテーションの部分での審査となりました。
ICV(ガソリン自動車)クラスと、EV(電気自動車)クラスの2部門にエントリーがあり、静的審査はコスト(Cost&Manufacturing Event)、デザイン(Design Event)、プレゼンテーション(Presentation Event)の3領域となります。
フォーミュラマシンを製造するのにどのくらいのコストがかかっているのかといったところを審査する「Cost&Manufacturing Event(ICVクラス:44チーム/EVクラス:10チーム)」では、2019年大会に引き続いて大阪大学が1位(100点満点中81.87点)という結果でした。
提出した設計資料をもとに、どのような技術を採用し、どのような工夫をしているか、またその採用した技術が市場性のある妥当なものかを評価する「Design Event(ICVクラス:45チーム/EVクラス:10チーム)」では、名古屋工業大学と京都大学がデザインファイナル(最終審査)に進み、名古屋工業大学が1位(150点満点)となりました。
「Presentation Event(ICVクラス:46チーム/EVクラス:10チーム)」は、製造したフォーミュラマシンをどういう意図で製作しどう売り込むか、どう展開していくかといったことを取引先に提案するものです。こちらは75点満点の岐阜大学が1位という結果でした。
トータルでは、コストで2位、プレゼンテーションで2位に入った神戸大学(258.18点)が初の総合優勝となりました。2位には251.41点で大阪大学、3位には京都大学(238.62点)が入りました。
●全学年が一丸となって総合優勝を勝ち取った神戸大学
神戸大学学生フォーミュラチーム「FORTEK」の村田康貴2021年度プロジェクトリーダーは、クリッカーの取材に対し、以下のように答えてくれました。
「このコロナ禍で大学での部活動が全面的に禁止になった期間もありましたが、 現在は活動が認められています。活動できる時も、活動人数や活動時間に制限があり、例年よりも製作時間は大幅に限られました。
今年度は静的審査のみの大会となりましたが、静的審査資料作りにも苦労しました。パワートレイン班やシャシー班のように担当を分けて活動をしているのですが、 資料作りでは各班の密な連携が必要です。これまでは各班の担当者が1ヵ所に集まって資料作りをしていましたが、今年度はそれが難しく、オンラインで行いました。このあたりの連携のとりにくさが今年苦労した点です。
例年は3回生以下が中心となって活動していますが、今年度メンバーだけでは経験値が少なく、4回生以上の方に多く活動に関わって頂き、さらに限られた製作時間の中で車両を完成させるために、流用部品を多くするなどして対応しました。
そのような中でも、時には1日中zoomをつないで作業するなど、モチベーションを下げることなく部員が一丸となって取り組めたことが、今回の結果につながったと思います」。
コロナ禍という、大学生活自体がこれまでとは大きく異なる中、コミュニケーションを取ることの難しさを乗り越えて勝ち取った初の優勝ということです。
成績結果としては近年の傾向は変わらず、上位勢を関西・中部勢が占める結果となりました。短い学生生活の中で、この長期にわたるコロナの影響が今後どう出てくるのか、この勢力図が変わるのか気になるところです。
審査自体は終了しましたが、自動車技術会では実際に車両を確認する車検/動的審査代替イベントを予定していくようです。こちらもチェックしたいですね。
(青山 義明)