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●オリンピック・パラリンピックを陰で支えた立役者、これから一般化され販売されるクルマもありそう
新型コロナウィルスの影響で1年延期された東京オリンピック2020は、2021年7月23日に開幕、8月8日に閉幕しました。そして、8月24日~9月5日には東京2020パラリンピックが開催されます。世界中のアスリートが、感動的なスポーツの姿を見せた陰で、アスリートや大会関係者の移動にトヨタの市販車や次世代車が使用され、選手や大会関係者を支えました。
今回は、オリンピックを支えてきた、トヨタの次世代車を紹介していきます。
●ラストワンマイル移動「APM」
オリンピックスタジアムや有明テニスの森などの、大規模会場を中心に、大会関係者や選手の、ラストワンマイル移動をサポートしていたクルマです。乗車定員は6名、1列目が運転席、2列目は3人掛け、3列目は2人掛けとなっています。車いす利用時には、2列目シートを折りたたむことが可能です。
短距離、低速型EVとして、使いやすさと乗りやすさに重きを置いたデザインになっています。一部車両は救護仕様として活躍しました。2列目3列目の半分にストレッチャーをそのまま搭載でき、救護スタッフ2名も同時に乗車することができる仕様です。
ボディサイズは全長約3.9m×全幅約1.6m×全高約2.0mで、後続可能距離は100km、最高速は時速19kmとなっています。
●Autono-MaaS専用EV「e-Palette」
トヨタ初のAutono-MaaS専用EVとして選手村に十数台導入されました。Autono-MaaSとは、Autonomous Vehicle(自動運転車)とMaaS(Mobility-as-a-Serviceモビリティサービス)を融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語です。
低床フロアや電動スロープ、停留所への正着制御により、車いすの方も乗降しやすいのがポイントです。自動運転(SAEレベル4相当)で運行され、車両にはオペレーターが登場し、自動運転の運行をモニタリングしながら、各車両の運行状況を統合的に管理するシステムも提供しています。
選手がSNSにe-Paletteに乗った様子を数多く投稿しており「2050年の日本に住んでいるのか?」「ドラえもんの世界みたい」と、驚きの声が多く聞かれたクルマです。
ボディサイズは全長5,255mm×全幅2,065mm×全高2,760mmで、オペレーター1人を含む20名が乗車できます。
2021年8月26日、e-Paletteは、パラリンピック開催中に歩行する選手との接触事故があり、一時運転を見合わせました。原因は、車両の故障などではなく、視覚障害者のある選手を道路を横断しようとしたのを車両が感知し自動的に停止、安全だと思ったオペレーターが再発進したところ、歩行者も歩き出ししまい接触にいたったというもの。
人為的ミスとも言えますが、機械側での対応も完全ではないことがわかったわけです。その後e-Paletteによる運行は、車両側の警告音量アップや、人間側のオペレーターへの教育、搭乗員の増員などで即対応し、8月31日には再稼働。豊田章男社長をはじめとするトヨタ側や大会運営側による素早い対応を見せ話題となりました。今後の混在交通での自動運転のあり方にひとつの大きな経験となったことでしょう。
●マラソン競技の先導車として注目された「TOYOTA Concept-愛i」
EVによる先進的なワンモーションシルエットのエクステリアデザインで、オリンピック聖火リレーの隊列車両やマラソン競技の先導車として大会を盛り上げていました。
AIを搭載することで、人とクルマがパートナーの関係となり、モビリティ社会の未来像を具現化したモデルとなっています。東京モーターショー2017で出展されていたクルマでもあり、見覚えのある方も多いのではないでしょうか。
もっとも現代のクルマに近い形で、最先端の機能を備えた、今と未来をつなぐクルマの一つになるでしょう。
●FCバス「SORA」とFCV「MIRAI」
MIRAIは言わずと知れた、トヨタの燃料電池技術を搭載した水素カーです。関係者の移動用に500台以上が提供されています。
東京オリンピックで、トヨタが提供する車両の電動車比率は約90%となり、走行中に二酸化炭素を排出しないEV・FCVは1,350台に上りました。
FCバスSORAは、量販型燃料電池バスとして、東京を中心に活躍しています。優れた環境性能と、騒音や振動の少ない快適な乗り心地を実現したバスです。
こちらは東京モーターショー2019で、有明エリアと青海エリアの間をつなぐシャトルバスとして、走っていました。実際に乗ったことがある人も多いのではないでしょうか。
●まとめ
この他にも、選手村と大会会場をつなぐ公道では、ハイブリッドカーが数多く投入され、環境にやさしいオリンピックを、クルマ社会から作り上げていこうとする、トヨタの意気込みが感じられました。
東京オリンピックで実用化された次世代車の多くは、2020年代前半に市販化することを目指し、現在も研究開発が続けられています。近い将来、オリンピックアスリートたちが感じていた「2112年、ドラえもんの未来の世界」のようなクルマたちが、私たちの生活の中で、当たり前になっていくのでしょう。
東京モーターショーが中止となってしまった2021年、数多くのコンセプトカーを見る機会は無くなってしまいましたが、オリンピックの応援をする中で、次世代のクルマを見て、感じることができたのではないでしょうか。
(文:佐々木 亘)
※2021年9月5日追記・更新