■快適性と実用性を兼ね備えた4ドアのスーパースポーツカー
●圧倒的なパワフルさに酔う
6代目となる現行型BMW M3が2021年1月に販売開始され、3月よりデリバリーが開始されました。街乗りからサーキットまでどんなシーンでも最高のパフォーマンスを発揮するMハイパフォーマンスモデルですが、ようやく試乗することができました。
今回試乗したのは、車両本体価格1324万円の「M3コンペティション」です。このM3コンペティションはサーキットでの走行を可能としたMハイパフォーマンスモデルながら、高性能3眼カメラ&レーザー、および高性能プロセッサーによる高い解析能力を実現した運転支援システムも標準装備しています。
M3コンペティションのフロントマスクは4シリーズやM4と同様に、迫力のある縦型の大型キドニーグリルを採用。大出力エンジンの冷却性能を向上させるために大型のエアインテークを採用して、ほかのモデルと差別化を図っています。
インテリアは、スポーツシートをはじめ、メーターパネルやステアリングなど「M」のロゴが輝く専用パーツを採用し、座り心地が抜群。シートに座るだけでアドレナリンがあふれてきます。
M3コンペティションのボディサイズは全長4805mm×全幅1905mm×全高1435mm。このワイド差が際立つボディに最高出力510ps、最大トルク650Nmを発生する3L直列6気筒ツインターボエンジンを搭載。重量をバランス取りした鍛造ピストンをはじめ、高効率を実現する吸気ダクト。そして最適化されたブースト圧で低回転時でも高トルクを実現するツインターボチャージャーなど、サーキットで培われた技術を多数搭載しています。
組み合わされるトランスミッションは、ドライブロジック付8速ATのMステップトロニックを採用。サーキット走行から快適な街中での走行まで、あらゆるシーンに対応しています。しかも最高出力510psというハイパワーなエンジンながら、燃費性能はWLTCモードで10.0km/Lという低燃費を実現しています。
ボディをはじめ、ドライブトレインを構成するパーツにはアルミニウムを多用し、軽量化を図っています。しかし、M3コンペティションを動かすと、圧倒的なパワーでクルマを路面に押しつけているような重厚感を感じます。しかもそのボディは、強固で走行していてもボディのねじれなどは全く感じられません。
最高出力510ps、最大トルク650Nmというハイパワーエンジンの出力を余すことなく路面に伝えるために、前後のサスペンションは引き締められています。しかし街乗りでも決して不快な硬さはなく、まるでyogiboのイスにすわっているかのような快適さを感じてしまうほどです。
M3コンペティションはサーキットで1秒を争うようなスパルタンな走行性能。そして、GTカーのようにロングドライブを快適に行うことができるラグジュアリーさを兼ね備えた贅沢なモデルと言えます。
自宅からサーキットまでは最新鋭の運転支援システムを使用して、落ち着いた気分で運転を行います。そしてサーキットでは眠れるポテンシャルが解放され、スポーツカーに匹敵するパフォーマンスを発揮するはずです。こんなジキルとハイドのようなクルマはM3コンペティションを除いて見当たりません。
車両本体価格は1324万円と安くはないですが、スポーツカーと実用車の2台を購入すると考えれば、M3コンペティションならば1台で済みます。ハイスペックな性能と実用性の高さを兼ね備えたM3コンペティションは、決して高いクルマではないと錯覚してしまいます。
●BMW M3コンペティション (8速AT)
■Specification
全長4805mm×全幅1905mm×全高1435mm、ホイールベース 2855mm、車両重量1740kg、エンジン種類 直列6気筒ツインターボ、総排気量2992cc、最高出力510ps/6250rpm、最大トルク650Nm/2750〜5500rpm
(文・写真:萩原 文博)