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■最新モデルは更に洗練された仕上がり!
ヤマハのMTシリーズは250からミドルクラス、リッターまで幅広くラインナップされている人気スポーツネイキッドシリーズ。
今回紹介するMT-09はMTシリーズで一番知られているかもしれないモデルだと思います。
フルモデルチェンジしたMT-09はさらに洗練された仕上がりでした!
今回のモデルチェンジではエンジン、フレーム、電子制御系統、デザインなど旧モデルから大幅に進化しました。発売当初から高性能なバイクでしたが、さらに細かいところまで煮詰められたモデルになります。
ピストン、コンロッド、クランクシャフト、カムシャフト、クランクケースなどエンジン主要部品が新設計で見直され、軽量化されています。
2気筒、4気筒ならよく知られた形のエンジンですが、3気筒のエンジンってあまり聞かないはず。
ヤマハ独自のクロスプレーンコンセプトの3気筒なので、2気筒のトルク感と4気筒のマルチ感を両立させたエンジンなんです。
今回のモデ一ルからクイックシフターがアップ、ダウン両方に対応しています。
また性能はもちろん、吸気・排気音がライダーが感じる乗り味に大きく関連しているという考えを元に、エアクリーナーボックスやマフラーサウンドなども見直され、乗って感じるバイクらしい感性というのも進化しています。
剛性が上がっているので、ハードなライディングにも対応してくれるスペックがありつつ、街中でのライディング時もしっかり対応してくれるという許容量の高さ!
MT-07では正立でしたが、MT-09では倒立となっています。
リアサスペンションはリンク方式が変更され、フロントと合わせてセッティングを最適化、サスペンションの動きを感じやすい乗り味を実現しています。
前後ともにプリロード、伸側減衰力の調整機能付。フロントは圧側減衰力調整機能も装備しています。
多少前傾ですがキツさは全く無く、ゆったりとしたライディングポジションなので通勤通学からツーリングまで幅広いシチュエーションに対応しています。
旧モデルから約2.3kg軽量化されていて剛性のバランスを最適化し、横剛性は旧モデルから50%アップさせたことで、直進安定性を向上させています。
●上位グレードのSPモデル
大きな違いはサスペンションでフロントはMT-09 SP専用のKYB製倒立フォークを搭載。インナーチューブはより摺動性に優れるDLCコーティングが施され、左右それぞれに伸圧減衰調整機構を備えているので、スタンダードでは調整しきれない、より細かいところまでセッティングが可能となっています。
リアサスペンションはMT-09 SP専用のオーリンズ製フルアジャスタブルサスペンションを搭載しており、前後共にスタンダードモデルよりもスペックの高いサスペンションとなっています。
他にも機能面ではクルーズコントロール機能を備え、外観面ではシートがダブルステッチ入り、塗り分け塗装のタンクなど全体的に性能も質感も向上させています。
●足つきは少々キツめ?
シート高は825mmとMT-07よりも高くなっていて、跨った感覚も07よりは足つきが悪く少し頼りない感じ。
決して重いバイクではないのでこれだけ足がつけば十分コントロールできてしまうんですが、大型ネイキッドクラスの中では少し高めかもしれません。
MT-07に同じくシートのサイドがシェイプされているので、足が下ろしづらいなどはなく、単純にシート位置が上がって足が伸びている印象。慣れてしまえば全く問題ありませんが、400クラスのネイキッドで足つきが不安の方は慣れるまで少し高さを感じると思います。
●電子制御でどっちにも化ける!
前回同様MT-09も袖ヶ浦サーキットでの試乗となりました。まずはスタンダードモデルに試乗。
走り出してみると2気筒のような下からの力強いトルクで前へと押し出されます。高回転まで回すと回り方がまるで4気筒! まさに2気筒と4気筒のいいとこ取りした味付けです。
MT-09は走行モードを選ぶことができ、大型クラスらしいダイレクトなフィーリングが「モード1」、バランス型の「モード2」、レスポンスを抑えた「モード3」、出力を押さえた穏やかな「モード4」と手元のスイッチで変更することができます。
まずはスタンダードとなるモード2で試乗し、次にアグレッシブに乗れるモード1に変更。
モード1にすると本当にダイレクトで開けた瞬間ロケットのように加速していきます。この加速の仕方はエンジンというよりモーターに近い感覚でサーキットではたまらなく楽しいですが、いざ公道ではこのパワーを扱いきれるのか不安になるレベルの速さ!
そういう意味で一番バランスの取れているモード2が快適でした。
しかしモード3、モード4に切り替えてみると全く別のマシンとまでは言いませんが、さっきまでのロケット加速は姿を消し、穏やかで扱いきれる性格に。最高速やピークパワーよりもスロットルを開けた瞬間のフィーリングが変わるので、特にモード4は牙が抜かれて物足りなさを感じたことも。
合わせてトラクションコントロールの設定も手元で変更することができるので、走る場所、その時の気分に合わせて同じマシンでもガッツリ性格を変えて楽しむことができました。
次にSPモデルに試乗。
走行モードのフィーリングなどはスタンダードと同じように感じましたが、足回りの違いは歴然! スタンダードより良く動いてくれるし、ハンドリングの自由度も高くなりました。
スタンダードではバイクを深く倒していたコーナーでも感覚的にはもう少し浅くてもバイクがどんどん向きを変えていってくれるんです。
サス以外にもトラコンや走行モードの設定など全てが上手く噛み合った結果なのかもしれませんが、スタンダードよりすべての動作が楽で限界値が高いのは確か。
スペシャルというだけあって全てにおいてSPモデルのほうが優れていました。
最初にSPモデルから試乗していたらスタンダードの良さが見えなくなってしまっていたかも…? 明らかに体感できる違いがありました。
スタンダードモデルとSPモデルの値段差は15万円ですが、個人的には30万くらいの差に感じました。実際スタンダードモデルをSPモデル同等にカスタムしていったら30万以上はかかってしまうと思います。
スタンダードモデルもバイクとして面白いし、限界値も高く、楽しく乗れるバイクですが、最初から更に高い水準で完成度の高いバイクが欲しいならSPモデルはおすすめできます。
●07、09は違う立ち位置
MT-07も面白いバイクでしたが、MT-09とは似ているようで微妙に立ち位置が違いました。
MT-07はツインエンジンなので鼓動感も09より大きく、走行モード変更などは付いていないので、バイクの素の楽しさを強く感じるのに対し、MT-09はそもそも高性能なマシンを電子制御でいろんな味付けで乗れるように考えられたバイクなので、MT-09のほうが色んなキャラクターを感じてハイテクなバイクらしい楽しさを強く感じました。
似ているようで実は別軸の立ち位置に感じるMT-07とMT-09。どちらもそれぞれ味を持った面白いバイクなので気になった方はぜひ一度試乗してみてください!
(文:Moto Be/撮影:峯 竜也)