■「ああー、上野選手が!」上野選手が単走1本目でクラッシュ
単走1本目、けっこうショックを受けたひとも多いのではないでしょうか? レクサスRCでD1GPに参戦している上野選手が、第3戦の単走決勝で、ピットウォールにテールをヒット! その反動でさらにピットレーンの先のガードレールに衝突してしまうというクラッシュがありました。
上野選手はエアロパーツメーカーの社長でもあるので、クルマはつねにピカピカにしてキズや汚れなどもないようにしています。また、上手い選手なのでクラッシュはそれほど多くないんですね。それだけになかなか衝撃的なクラッシュでありました。
ところが、翌日の第4戦、上野選手のマシンは何事もなかったかのようにバリッと元どおり。見事な走りで追走トーナメントにも進出しました。
私もクラッシュのあと上野選手のピットに行ったのですが、けっこうピリピリしているかと思いきや、本人は余裕の表情。「なんならもう1本走ろうかと思った」とさえ言っていました。
ダメージを受けたのはおもにボディ外板で、足まわりには深刻なダメージを受けていなかったようです。これがサスペンションメンバーが曲がるような衝撃を受けていたりすると、修復も大変で、なかなか1日で元どおりにはならないのですが、そうではなくて幸いでした。
もっとも、何事もなかったかのようにキレイに見えたのは遠目からだけ。近くに行くと、じつはガムテープで修復した跡だらけ。その模様をビデオオプションが密着取材して動画をアップしているので、ぜひご覧ください。
↓こちらがその動画です。
●様々な専用工具とお馴染みのガムテで完全復活!?
現代のD1GPマシンは、ほとんどワイドボディ化されています。リヤは、もともとのタイヤハウスを切って拡大してタイヤが当たらないようにしておいて、その外側にFRPのフェンダーを貼り付けているんですね。そんなボディの作りもよくわかります。
この工具、皆さんご存じですかね? スライドハンマーといって、引いて使うハンマーのような工具です。凹んだボディパネルを引っ張り出すときに使います。モータースポーツではけっこうよく使われます。
本格的に直すのであれば、ボディ外板パーツを修復したり交換してキレイにして、カッティングシートでグラフィックを貼り直すという作業を行います。でも、大会期間中にそこまではできない。
じゃあ、どうするかというと、ガムテープで修復するのです。そう、上野選手がラッキーだったのは、ボディカラーが白と黒と赤。それぞれ、ボディ色に近いガムテープが存在するのです。
というわけで、上野選手の車両は、遠目には何事もなかったように見えたのでした。これが緑色とか水色とか紫だと、なかなか同色のガムテープがないので、こうキレイにはいきません。
ところで、上野選手はこの大会期間中にインタークーラーのサイドタンクが割れるというトラブルも2回あり、そのたびにピットで修理していました。といっても直してくれたのは髙橋和己選手のチームなんですけどね。
というわけで、D1GPチームはさまざまなノウハウと装備と人脈があるので、大きなクラッシュや故障から、翌日までにきれいにクルマを直すのも簡単なんですね。
……なんて言っていたら上野選手は「簡単に直ったとか言わないで! けっこう大変だったんだから」と怒っていたそうです。
先日も、『海外製パーツ増殖中!? 現代のD1マシンにおける輸入品事情とは?【D1GP TSUKUBA DRIFT】』という記事で上野選手のマシンを紹介していますが、あれはこのクラッシュの前に取材したものです。
期せずして上野選手の記事が続いてしまいましたが、よかったらそちらもどうぞ。
YouTubeの『VIDEO OPTION』チャンネル、『D1GP MOVIE CHANNNEL』では、こういったD1GPの裏側やさまざまな企画動画も見られるので、ぜひチャンネル登録してみてください。
D1GPの次のラウンドは2021年8月21日〜22日の福島県・エビスサーキットで行われます。
(文:まめ蔵/写真提供:サンプロス/まめ蔵)
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D1グランプリの詳しい情報は、D1公式サイトで。
www.d1gp.co.jp