ヤマハの歩みとは?:日本楽器から分離独立してバイク事業に参入【バイク用語辞典:バイクメーカーの歴史編】

■ホンダを追走する形で世界市場と国際レースに進出して成長

●美しいスタイリッシュなデザインと先進的なエンジン技術が特徴

ヤマハは、楽器メーカーから生まれたユニークなバイクメーカーですが、その美しいデザインと技術には定評があります。また、ファミリーバイクから業務用、スポーツバイクまで広い用途のバイクを提供していることも特徴です。

ホンダを追走するNo.2のバイクメーカーのヤマハの歩みについて、解説します。

●起源

ヤマハの起源は、「日本楽器株式会社」です。

その歴史は古く、オルガンの修理をしていた山葉寅楠が自らオルガンの製作に取り組むために設立した「日本楽器株式会社」まで遡ります。その後、ピアノの製造にも成功して様々な楽器やオーディオ機器の製造に取り組み、楽器メーカーとしての地位を確立しました。

しかし世界第二次大戦が勃発すると、日本楽器製造は陸軍と海軍の軍需指定工場になり、プロペラなどの軍事品を製造することになります。戦後もしばらくの間、工場や工作機械は進駐軍に接収されていました。

やっと接収が解除された1953(昭和28)年、4代目社長の川上源一社長は工作機械技術を活用して2輪車事業への参入を決断。そして、1955年日本楽器製造から分離独立する形で「ヤマハ発動機」が設立されました。

●山葉寅楠の創業までの生い立ち

日本楽器の山葉寅楠は、時計やオルガンなどの修理からオルガン製造に転身しました。創業までの略歴は、次の通りです。

・1851(嘉永4)年、紀州藩の下級武士の三男として生まれる

父である山葉孝之助が天文係であったこともあり、幼少のころから機械いじりに没頭

・1871(明治4)年、長崎で英国人のもとで時計の修理を学ぶ

・1884(明治17)年、浜松で医療器械を中心に機械全般の修理を始める

小学校のオルガンの修理を依頼され、オルガンの構造を学ぶ

・1888(明治21)年、日本最初の本格的オルガンの製造に成功

・1889(明治22)年、「山葉風琴製作所」を設立

・1897(明治30)年、「日本楽器製造」に改組して社長に就任

●ヤマハのバイク史概要

バイクとはまったく関係ない楽器製造から分離独立したヤマハですが、最初の開発で参考にしたのは当時名車と言われたドイルDKW社の2ストローク125ccエンジンでした。

1954年発売のYA-1 (赤トンボ)
1954年発売のYA-1 (赤トンボ)

・初めての量産モデルが大ヒット
1954(昭和29)年に初めて市販化した「YA-1(通称、赤トンボ)」は、第3回富士登山レースで初出場ながら圧倒的な強さで優勝。高性能と洗練されたスタイリングで爆発的な人気となり、ヤマハの記念すべき第1号になりました。

1977年発売のパッソル
1977年発売のパッソル

・スーパーカブを追走するスクーターも開発
1960年に初めて発売したスクーター「SC-1」は、先進的ながら大ヒットとはいきませんでした。しかし、長いブランクの後1977年に発売した「パッソル」は大人気に、また2002年の電動バイク「パッソル」も大ヒットを記録しました。

1970年発売のXS1
1970年発売のXS1

・ヤマハ初の4ストロークエンジン
2ストロークを搭載していたヤマハが初めて4ストロークエンジンを搭載したのが、1970年発売の「XS1」です。軽量でスリムな車体と組み合わせて最高速185km/hを誇りました。

・モトクロスでも活躍
1973年に250ccモトクロスのワールドチャンピオンシップで優勝。「YZ250」は、アマチュアのモトクロスライダーの間で大人気のモデルになりました。

1985年発売のTZR250
1985年発売のTZR250
2020発売のTricity300
2020発売のTricity300

・ヤマハ究極のロードレーサーはレプリカブームを牽引
レーシングマシーン「TZ」の名前を持つ「TZR250」は、レーサー譲りのメカニズムとカウルを装着した本格レーサーレプリカモデルとして1885年に登場しました。また、1998年に発売された2ストロークV型4気筒500ccエンジン搭載の「YZR500」は、1970年~1980年代かけて世界GPを席巻したレーサーYZRのレプリカ仕様として他を圧倒する走りをみせました。

・2014年、新しいコミューターバイクとしてフロント2輪のユニークな3輪バイク「TRICITY」を発売


ヤマハは、楽器メーカーから独立したユニークなバイクメーカーです。スタイリッシュなデザインで人気を博していますが、技術面では長年トヨタとの共同開発で磨いたエンジン技術に優れていることも大きなアドバンテージとなっています。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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