ランドローバーがディフェンダーをベースにしたFCVのプロトタイプを2021年度中に走行テスト

■FCVはバッテリーEVを補完する位置づけ

ジャガー・ランドローバーは、現行「DEFENDER(ディフェンダー)」をベースとした燃料電池車(同ブランドはFCEVと表現)のプロトタイプを開発、2021年中にテスト走行を実施すると発表しました。

ジャガー・ランドローバーは、次世代のブランド戦略である「Reimagine」においてEV、FCVによる電動化を推進すると表明済み。2024年には、ランドローバー初のピュアEVを導入する予定で、2030年末までにジャガー・ランドローバーブランドの全モデルにピュアEVの選択肢を設定するとしています。

ランドローバー ディフェンダー
ランドローバー・ディフェンダーをベースにFCVのコンセプトカーを開発

今回、発表されたFCVのコンセプトモデルは、ジャガー・ランドローバーが2021年2月に発表された「Reimagine」に沿うもので、2036年までにテールパイプからの排出ガス量をゼロ(ローカルエミッション・ゼロ)を目指し、2039年までにサプライチェーン、製品、オペレーションのすべてを通じて排出ガス量を実質ゼロにするという目標を掲げています。

「PROJECT ZEUS」と名付けられたこのプロジェクトは、ローカルエミッション・ゼロの実現に向けた取り組みのひとつ。水素と酸素から電気を生成してモーターを駆動するFCEVは、バッテリーEVを補完する位置づけ。

水素を動力とするFCEVは、高いエネルギー密度と短時間での燃料補給、低音時でも航続距離のロスを最小限に抑えることができるため、より大型で長距離走行が求められる車両や、高温、低温の両環境下で使われる車両に最適な技術としています。

2018年以降、世界中のFCEV(FCV)の走行台数はほぼ倍増していて、また、水素充填ステーションも20%以上増加しています。2030年までに、水素を燃料とするFCEVの台数は全世界で1000万台を超え、水素充填ステーションの数も1万ヵ所を超えると予測されているそうです。

また、「PROJECT ZEUS」は、英国政府が支援する低炭素排出パワートレイン技術の研究開発支援団体である「Advanced Propulsion Centre」から部分的に資金提供を受けていて、航続距離、燃料補給、牽引、オフロード走破能力などのユーザーが期待するパフォーマンスを提供するために、どのように水素パワートレインを最適化すべきかが研究されています。

現在、開発中の「DEFENDER」FCEVは、2021年末にプロトタイプでの走行テストを英国で開始し、オフロード性能や燃費などの主要特性を検証するとしています。なお、「PROJECT ZEUS」では、デルタ・モータースポーツ、AVL、マレリ・オートモーティブ・システム、英国電池産業化センター(UKBIC)など、世界有数のR&Dパートナーと協力し、FCEVプロトタイプの研究、開発、製造を展開。

ジャガー・ランドローバーの水素、燃料電池を担当、統括するラルフ・クレイグ氏は、「輸送業界全体の将来的なパワートレイン構成において、水素が重要な役割を果たすということを十分理解しています。

ランドローバー ディフェンダー
FCV化されてもランドローバーの高い悪路走破性などが維持されるのか気になるところ

燃料電池車は、バッテリーEVと並び、ジャガー・ランドローバーがグローバルで展開するモデルラインアップに求められる特有の性能やニーズに対応しながら、ゼロエミッションを実現する新たなソリューションです。PROJECT ZEUSにおけるパートナーとの共同作業は、次世代のテールパイプから排出ガスを出さないクルマの準備を推し進め、さらに2039年までにビジネス全体を通しても排出ガス量を実質ゼロにするという弊社の目標の実現に貢献するはずです」とコメントしています。

ランドローバーのFCVは、ローカルエミッション・ゼロだけでなく、高い悪路走破性も備えているのか、ブランドのアイデンティティが保たれるのか気になります。

塚田 勝弘

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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