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■生産性や形状の自由度が高く、複雑な形状でも容易に成形可能
●安価で軽いだけでなく、熱や衝撃に強いエンジニアリングプラスチックも出現して用途が拡大
プラスチック材料は、軽量で安く成形しやすいため1980年代にはスクーターの外装に使われ始めました。その後、耐熱性や耐衝撃性などが改良され、軽量化のための置換材料として急速にバイクへの使用が拡大しました。
技術進化によって使用用途が広がっているプラスチック材料について、解説していきます。
●プラスチックの製造法と基本特性
プラスチックの原料は、石油を精製して得られるナフサです。
ナフサを熱分解して、「エチレン・プロピレン(気体)」「ベンゼン(液体)」など、プラスチックのもとになる製品原料が生成されます。これらは、炭化水素(HC)の分子なので、この分子を結合させて、「ポリエチレン」や「ポリプロピレン」などのプラスチック材料が作られます。
プラスチックは「合成樹脂」とも呼ばれますが、厳密に言えば樹脂は原料、プラスチックは成形品を指します。最大の特徴は、以下のように安くて軽い、形状が自由に変えられることです。
・鉄の比重に対して、アルミが約1/3、プラスチックは1/8~1/10
・熱によって変形しやすいため、複雑な形状でも容易に成形可能
・電気や熱の絶縁性が高い、錆性と防食性に優れ塗装加工やメッキ処理が可能など
一方デメリットは、温度変化に弱く燃えやすい、強度が低い、溶剤に対して弱い、表面に傷が付きやすく耐久性が劣るなどです。
●プラスチックの種類
プラスチックは、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」に大別されます。
・熱可塑性樹脂
軟化し自在に変形させることができ、冷却することで固化するプラスチックです。安価で多くの生活用品に用いられている「汎用プラスチック」と、工業製品に使われる「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」、「スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)」に分けられます。エンプラとは、一般に耐熱温度が100℃以上、強度500kg/cm2以上、曲げ弾性率2万4000kg/cm2のプラスチックで、これ以上高性能なのはスーパーエンプラと呼ばれます。
・熱硬化性樹脂
加熱により硬化するプラスチック、その後加熱しようが冷却しようが元に戻ることはありません。熱可塑性樹脂のように広く使われていませんが、耐溶剤性や耐熱性、強度に優れています。
●バイクへの適用例
バイクでは、強度が必要な部位には金属材料が使われますが、外装品のような部位には目的や用途に応じて様々なプラスチックが使用されます。ここでは、代表的な適用例を上げます。
・ポリカーボネート(PC)
可視光透過率が80~90%でガラスのような透明なプラスチックで、フロントスクリーンに使用。軽量で強度があり、変形しにくく耐熱性や耐衝撃性に優れた特性を持ちます。
・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS)
カウルなど外装部品に使用され、耐熱性や耐油性、耐衝撃性に優れ、表面の光沢が特徴。加工しやすく、安価なのでプラスチックの多くは、ABSです。
・ポリウレタン(PU)
軽くて伸縮性があり、シートやクッションに使用されます。
・フェノール樹脂(PF)
商品名ベークライトで古くから使用され、電気や熱の絶縁性や難燃性に優れています。ブレーキのディスクパッドやライニング、エンジンのプーリーなどに使われます。
・ポリアミド(AD)ナイロンおよび熱可塑性ポリィミド(TPI)
ともに耐熱性と強度を上げた高機能プラスチックで、ADはエンプラ、TPIはスーパーエンプラです。エンジンの吸気マニホールドやロッカーカバーなどに適用されます。
・炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
炭素繊維を樹脂で固めた複合資材で、ロケットや航空機で活躍している高強度かつ超軽量、耐熱性などに優れる高級プラスチック素材です。バイクでも外装などで使用され始めています。詳細については、別途紹介します。
汎用プラスチックは、軽量ながら金属に比べると強度や剛性が低いので、使用は限定されます。しかし、軽量の他、電気や熱の絶縁性や成形性の容易さなど固有のメリットを持っています。また、耐熱性や強度を高めたエンプラやスーパーエンプラが開発されており、今後さらに金属からの置換が進むと期待されています。
(Mr.ソラン)