白熱のEVレース第2戦、ポルシェ・タイカンが2連敗? テスラモデル3は土つかず【JEVRAシリーズ】

■テスラ・モデル3に乗る地頭所光選手の連勝が続く

12年目のシーズンを迎えているJEVRA(日本電気自動車レース協会)主催のEVレース・シリーズ「ALL JAPAN EV-GP SERIES」。4月の開幕戦に続いて、このGWに第2戦(5月5日/千葉県 袖ケ浦フォレスト・レースウェイ)が開催されました。

JEVRA Rd2スタート
スタートで前に出たのはTAKAさん選手。背後にはタイカンが迫る

このJEVRAシリーズは、電気自動車(BEV)および、最終的な出力が電動のみとなる車両(燃料電池車やレンジエクステンダーEV)で行われるレースシリーズで、2010年の初レース開催以来、いわゆる市販車から、フリートテストで使用された市販されていない車両も含め、実に数多くの車両が参戦をしているシリーズとなります。

参戦する選手も元F1ドライバーやGTドライバーといった有名どころもいれば、普通のEVオーナーまで、実に幅広いのも特徴です。

JEVRA Rd2 1号車
地頭所選手は昨シーズンからの8連勝を達成

その12年目のシーズンがスタートしています。2019年の最終戦から参戦のあるテスラモデル3が昨年も圧倒的な速さで、全戦全勝となっています。そのモデル3の快進撃に待ったをかけるべく参戦してきたのが、ポルシェ・タイカンです。

JEVRA Rd2 36号車
タイカンをこのEVレースに持ち込むKUNI選手(右)と同チームからモデル3で参戦するKIMI選手(左)

タイカンは、モーターを2基前後に搭載し、2トンを超える車両ですが、0-100km/h加速は最速2.8秒(ターボS)というモデルです。そのプロトモデルでドイツ・ニュルブルクリンク北コース(ノルトシュライフェ/20.81km)を7分42秒というラップタイムを記録(2019年8月)しています。

JEVRA Rd2 36号車
前半は良いペースでレースをリードするも…

そのタイカンの国内初レースとなったのが、4月10日(土)に富士スピードウェイで開催されたJEVRAシリーズ開幕戦でした。このタイカンを持ち込んだのはガルフ・レーシングのチームオーナーであるKUNI(国江仙嗣)選手です。SUPER GT選手権へガルフカラーのポルシェGT3で参戦していたチームのチーム・オーナーです。

開幕戦の予選では、そのタイカンが圧倒的な速さを見せました。1分54秒882というタイムでポールポジションを獲得しました。連勝記録を作ってきたモデル3の最速タイムが1分55秒779(地頭所光選手/TEAM TAISAN東大UNテスラ)とコンマ9秒も離されていることからも、その速さが光ります。

迎えた決勝レースでも、序盤から一気に後続を引き離す走りを見せます。2番手以降を5秒以上離すという離れ業を見せつけたわけですが、全55kmのレース(周回数は12周)の折り返しを前に、車両の制御モードが入ってしまって失速し、4台のモデル3にパスされ、結果は5位というデビューレースとなっていました。

JEVRA Rd2スタート
スタートで前に出たのはTAKAさん選手。背後にはタイカンが迫る

そして今回、第2戦の舞台は千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイ。国際格式の大きなサーキットではなく、全長2.463kmのいわゆるミニサーキット。タイカンの得意とするストレート加速を発揮するポイントは少なく、高低差もあまりないためモデル3とのタイム差もそれほどでないのではないか?という予想でした。

JEVRA Rd2トップ3バトル
レース前半は逃げるタイカンを追う2台のモデル3という展開

気になる予選では、タイカンの前回の速さは影を潜め、地頭所光選手(#1 TEAM TAISAN東大UNテスラ)がトップタイムとなる1分13秒085のタイムでポールを獲得しました。気になるタイカンは1分15秒095というタイムでKUNI選手(#36 GULF RACING TAYCAN)は5番グリッドという結果に。2番グリッドのTAKAさん選手(#33 適当LifeアトリエModel3/1分13秒539)から、アニー選手(#35 スエヒロModel3/1分14秒901)、KIMI選手(#8 GULF.RACING.Model3/1分15秒076)と上位4台がテスラモデル3となっています。

ちなみに今回、この第2戦には10台が参戦。タイカン1台、モデル3が5台、EV-2クラスの日産リーフが1台、EV-Rクラスの日産ノートe-Powerが3台という内訳でした。

JEVRA Rd2充電
ICCの電源車と東洋電産の充電トラックが充電サービスを展開

予選後、充電時間を挟んで、夕方4時に決勝レースがスタートしました。今回も55kmレースということで、この袖ケ浦ではコース23周で争われました。この日の天候は曇りで、気温はそれほど高くなく、予報されていた雨の影響を受けることなくレースは行われそうです。

レーススタートで2番グリッドのTAKAさん選手が1コーナーへ真っ先に飛び込んでいきます。ポールスタートの地頭所選手がこれに続き、3番手に上がったのがタイカンのKUNI選手でした。5番グリッドからの加速で一気に2台をパスしてきました。さらにタイカンは前を行く2台のモデル3をパスして、オープニングラップをトップで通過します。

JEVRA Rd2トップ3バトル
タイカンがセーフティモードに入るや否や、2台のモデル3が襲い掛かる

このタイカンを2台のモデル3が追いかける展開となりました。といっても開幕戦の様相とは異なります。富士では後続を一気に引き離していった姿とは異なり、常に2台のモデル3を従えての走行です。ストレートで離されるもののコーナーで詰めるという展開です。

トップを快走する地頭所選手
2位のTAKAさん選手を引き離しての優勝は地頭所光選手です。地頭所選手は今季2連勝

しかし、この展開もレース半分を待たずして、11周目にまたしてもタイカンが失速です。これでトップは入れ替わりますが、2番手で追い上げていたTAKAさん選手に対して、そのトップ2台のバトルを冷静に見て、バッテリーの温度も含め、温存していた地頭所選手が一枚上手。まさに漁夫の利というカタチでTAKAさん選手をあっさりとパスして、トップでチェッカー。

地頭所光選手(#1 TEAM TAISAN東大 UN テスラ)の連勝は昨年の7戦6勝(1戦欠場)、そして今季の2連勝で8連勝となりました。ちなみにモデル3の連勝は2019年の最終戦以来、10連勝となりました。

JEVRA Rd2表彰台
表彰台に上がったのは、地頭所選手とTAKAさん選手、そして今回初参戦の今橋選手

2位にはTAKAさん選手(#33 適当LifeアトリエModel3)。3位には、今回EVレース初参戦となった今橋彩佳選手(#2 ガーデンクリニック TAISANアキラR)が入りました。6番グリッドからスタートでしたが、スタートで直前の車両が発進できなかったため、出遅れたものの、冷静に徐々に追い上げ、このポジションを獲得しました。

タイカンは最終的に5位フィニッシュとなりました。KUNI選手は「冷却についても準備を進めてきましたし、今日のレースでは多少ペースは抑えたのに、前回と同じ距離(富士では12周のうちの6周目、袖ケ浦では23周のうちの11周目)で制御モードに入ってしまった。これはニュルのアタックと関係あるのかなぁ? 早く原因を調べて対策したい」とのことでした。

JEVRAシリーズは、続くALL JAPAN EV-GP ROUND.3「全日本 筑波 EV 55kmレース大会」を6月6日(日)に茨城県・筑波サーキットで開催予定です。

(文・写真:青山 義明

この記事の著者

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青山 義明

編集プロダクションを渡り歩くうちに、なんとなく身に着けたスキルで、4輪2輪関係なく写真を撮ったり原稿書いたり、たまに編集作業をしたりしてこの業界の片隅で生きてます。現在は愛知と神奈川の2拠点をベースに、ローカルレースや障がい者モータースポーツを中心に取材活動中。
日本モータースポーツ記者会所属。
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