■世界トップクラスの研究者とソフトウェアエンジニアからなる約1,200人の人材に
自動車業界で度々使われている「CASE」というキーワードの中で「A」の「Autonomous(Driving)」も重要なファクターになっています。
自動運転を自社だけでまかなうのは大手自動車メーカーでも難しいとされていて、協業や提携は不可欠。ホンダはGM、クルーズと手を組み、ルノー日産はウェイモと提携しています。トヨタもオーロラ・イノベーションとすでに自動運転技術で提携していて、相手はいずれも米国初のスタートアップもしくは、巨大IT系企業になっています。
そんな中、トヨタは子会社のウーブン・プラネット・ホールディングス(ウーブン・プラネット)を通じて、世界有数の米国配車サービス会社Lyft, Inc.(リフト)の自動運転部門であるLevel 5(レベル5)を約5.5億米ドルで買収することに合意したと発表しました。
リフトは、米国での公道試験でトヨタを大きく上回っていて、世界的な人材獲得競争が繰り広げられている中、リフトが得てきた知見も活かせると判断したと思われます。
リフトは2012年に設立された米国とカナダにおける最大の移動・輸送ネットワークの1つ。移動に関する所有からサービスへの大きな社会変化の中で、リフトはこの最前線にいます。リフトの移動・輸送ネットワークは、ライドシェアはもちろん、自転車、スクーター、レンタカー、乗り換えをすべて1つのアプリにまとめています。
今回のリフトの自動運転部門の買収は、2021年1月に旧トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)から移行して事業を開始したウーブン・プラネットにとって初になります。
ウーブン・プラネットは、ウーブン・プラネット、共に開発を進めるToyota Research Institute, Inc.(以下「TRI」)、そしてレベル5、それぞれが誇る世界トップクラスの研究者とソフトウェアエンジニアからなる約1,200人の多様で豊かなリソースと能力を持つ「ドリームチーム」ができあがるとしています。
同買収により強化されるのは、先述のように人材獲得があり、世界トップクラスのエンジニア、研究者、モビリティ・サービスに関する深い専門知識を持つエキスパートからなるグローバルなチームの形成。テクノロジーの面では、センシング、コンピューティング、ソフトウェア資産に加え、自動運転システム開発に必要な戦略的能力の強化が図られます。
さらに、グローバル展開も強化。現在、ウーブン・プラネット本社が位置する東京・日本橋に加え、パロ・アルト(米国サンフランシスコ)、ロンドン(英国)と開発拠点が拡大されます。
さらにウーブン・プラネットとリフトは、リフトのシステムと車両データを活用し、ウーブン・プラネットの開発する自動運転技術の安全性と商用化を加速させる協業にも合意。協業と資産の譲渡も含め、ウーブン・プラネットは約5.5億米ドルの買収金額のうち、調整後、約2億米ドルを先ず支払い、残りの3.5億米ドルを5年間で支払う予定としています。
トヨタと共に「Woven City」(ウーブン・シティ)」を建設しているウーブン・プラネット。ウーブン・シティでは自動運転の実証実験も進められますので、リフトの知見も活かした開発が進むのか注目です。
(塚田 勝弘)