■より精悍さを増したレーシーなエクステリアデザイン
2020年10月にマイナーチェンジを受けたアウディA4と同様に、ハイパフォーマンス仕様であるRSシリーズも一部改良を受けています。今回、試乗したのはRS 4 アバントで、RS 5 クーペ/スポーツバックも同様に変更されました。
今回の変更ではエクステリアデザインが大きく変わり、より精悍な佇まいになっています。
フロントマスクでは、ボンネットの先端に往年のAudi quattroを彷彿とさせるスリットを配置。前後バンパーやエアインレット、サイドシルなどを専用デザインとすることで、キリッとした印象になっています。
さらに、試乗車のRS 4 アバントは、フロントサイドがアコースティックガラスになっています。
機能面では、RS 4/RS 5にヒーター付ステアリングホイールを標準化。足元のアルミホイールはRS 4 アバントは「5ダブルスポークエッジデザイン」の9J×20サイズになったのもトピックスです。
なお、試乗車のアルミホイールは、オプションの「5セグメントスポークデザイングロスブラック」が装着されていました。
搭載パワートレーンは2.9LのV6ガソリンターボで、450PS/5700-6700rpm・600Nm/1900-5000rpmという強力な出力、分厚いトルクを誇ります。組み合わされるトランスミッションは、8速ティプトロニック(トルコン付AT)。
0-100km/h加速を4.1秒でクリアする俊足ぶりが最大の魅力で、アクセルの踏み方によってはターボラグが感じられるものの、それを打ち消すような強大なトルクにより、低速域から上り坂まで速度を乗せていきます。
高速域まで持続的に炸裂するパワーも印象的。公道ではその一端を垣間見る程度ではあるものの、その余力は試乗ステージの箱根ターンパイクでも十分に伝わってきます。
駆動方式はアウディ自慢のquattroフルタイム4WDシステム。リヤアクスルにスポーツディファレンシャルを備えることで左右の駆動力配分を最適化し、強大なパワーを確実に路面に伝えるシステムです。
quattroフルタイム4WDシステムの恩恵は明らかで、優れた高速安定性とハンドリングをもたらしてくれます。高速コーナリングでも姿勢を崩すことなく、圧倒的な安定感でクリア。リヤがどっしりと路面を捉えながら正確なラインを描くことが容易で、ステアリングの修正舵も最小ですむ点にも驚かされます。
速い上に安定したボディコントロールが可能ですから、速さも求められるロングツアラーとして理想的な仕立てになっています。
心底驚いたのはフラットライドな乗り味で、「RS」シリーズだからと身構えて乗ると、いい意味で肩すかしを食らった感覚になります。フロントシートは見た目以上に高いホールド性を備え、シート自体の減衰も効いているとはいえ、スポーツモデルとしては上々の乗り心地を堪能できます。
リヤシートは多少の突き上げを許しながらも揺すぶられるような感覚は薄く、ファミリーユースでも許容できそう。「速さと乗り心地の良さ」という両立ぶりは、近年試乗したスポーツモデルでもかなり際立っています。
アウディの「RS アバルト」シリーズには、RS 6 アバント(全長4995×全幅1960×全高1486mm)という兄貴分も控えています。それでも全長4780×全幅1865×全高1435mmというサイズのRS 4 アバントであれば、駐車場や道路事情が許すという都市部の方も少なくないはず。
RS 4 アバントの価格は1250万円。その価格に見合う性能や機能を備えていて、「1台で速くて快適、しかも荷物も積める」ニーズに応える最適解といえそうです。
(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)