マフラーの保安基準とは?近接騒音が新車時より悪化しないことが原則【バイク用語辞典:カスタム化・保安基準編】

■マフラー交換時には近接騒音で装着可否を判断

●騒音規制に適合していないと「整備不良」で違反点数と反則金が科せられる

マフラーの交換は、バイクのカスタム化の定番ですが、騒音規制に適合したJMCAマークやEマークの付いたマフラーを装着すれば問題ありません。規制に適合しない不正改造は、違反点数と反則金が科せられます。

マフラーのカスタム化と騒音規制について、解説していきます。

●現行の騒音規制

騒音規制も排ガス規制と同様に国際基準調和のため、2014年から「騒音防止装置協定規則(ECE R41-04)」に準拠することになりました。

クラス分けは、従来の軽二輪、小型二輪からPMR(Power to Mass Ratio)のクラス分けに変更されました。PMRは、最大出力(kW) / (車両重量 + 75kg) x 1000 です。

・クラス1 :PMR ≦ 25(実質50cc)

・クラス2 :25 < PMR ≦ 50(実質125cc)

・クラス3 :50 < PMR  (実質126cc以上)

加速騒音試験
加速騒音試験

この新しい規制から、従来の定常騒音と近接騒音の規制が除外され、以下のように加速騒音だけが規制対象になりました。ただし新車時には、近接騒音について測定のみ実施することが定められています。

・クラス1 :73dB

・クラス2 :74dB

・クラス3 :77dB

●交換用マフラーの騒音規制の取り扱い

近接騒音試験
近接騒音試験

2017年12月、交換マフラーのバイク騒音規制の見直しが実施されました。改正では、交換マフラーについては、近接騒音を計測してそのモデルの新車時の近接騒音に対して、相対比較で同等以下であれば認可されるという相対値規制に変更されました。

新車時に近接騒音の届出値が、79dB(排気量50ccまで)、85dB(125ccまで)、89dB(126cc以上)を超えている場合には、交換マフラーの近接騒音はその届出値から+5dBまで許容します。

この対応は、加速騒音が大きくなれば近接騒音も大きくなるという関係があるので、近接騒音はマフラー交換時に加速騒音規制の代替手段になるという考え方に基づいています。

●マフラー交換時の注意点

純正マフラーから市販品に交換するマフラーのカスタム化の狙いは、概ね下記の3つです。

・排気音の変更
迫力ある排気音にする、音色を好みの音に変えて楽しむ。

・エンジンのパワーアップ
マフラー形状や内部の通気抵抗を減らして、エンジンの出力を向上させる。

・マフラー形状のドレスアップ
マフラーの形状や表面の色や光沢を変更することによってドレスアップを図る。

前述のように、新車時の近接騒音よりも悪化しないという保安基準に適合することが基本であり、適合していなければ不正改造で違反となります。

近接騒音の測定で基準を満たしたマフラーには、識別番号の末尾に「A」が記載されています。信頼できるのは、JMCA(全国二輪車用品連合会認定)マークやE(国連欧州経済委員会規制適合品)マークの付いたマフラーです。

バイクの騒音違反は「整備不良」違反になり、違反点数2点と反則金7000円(二輪)、6000円(原付)が科せられます。サイレンサーを外したり加工した場合には、「消音器不備」違反で、違反点数2点と反則金6000円(二輪)、5000円(原付)が科せられます。

また、マフラーに触媒が内蔵されている仕様では、JMCAマークやEマークが付いた騒音規制適合マフラーでも車検は通りません。マフラーに触媒が内蔵されているというマフラーの証明書が必要です。


法規の適用は、制定以降のバイクが対象なので規制の緩い時期に購入した旧型バイクが大きな騒音を発しても規制できません。また、250cc以下のバイクは車検がないことから、不正改造が多いと言われており、これらがバイクの騒音規制の問題を難しくしています。

Mr.ソラン

この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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