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■作業するにはエンジンに関する知識と技術が必要
●すべてバラして点検する場合も
定期的なメンテナンスをきちんと実施していても、バイクはいずれ寿命を迎えます。なかでも動力源のエンジンは、通常10万~15万kmで寿命となり、トラブルが出始めます。さらに安心して走行を続けるためには、オーバーホールをすることがお薦めです。
エンジンを分解して、整備、修理するオーバーホールについて、解説していきます。
●オーバーホールはなぜ必要
日常点検や法令定期点検、車検などバイクには法的な点検整備が義務付けられ、さらにバイクが大好きで常日頃から点検と整備を心がけているユーザーも多いと思われます。
バイクの寿命は、日常的な点検整備を実施しているか、してないかだけでなく、バイクの使い方にも大きく依存します。例えば、日常的にバイクを使っている、乱暴な運転をしない、悪路走行や高速走行の頻度が少ないユーザーのバイクは長持ちします。
しかし、どんなに大事に乗っていてもバイクの動力源であるエンジンは、機械なので寿命を迎えます。自動車でもバイクでもエンジンは、10万km程度はもつように設計されていますが、10万~15万kmを超えると少しずつ気になる症状が出てきます。
●オーバーホールが必要なタイミングは
オーバーホールのタイミングは、走行距離10万kmを超えた場合がひとつの目安ではありますが、特に調子が悪くなければ実施する必要はありません。逆に日頃の整備が不十分で、過酷な使い方をすると走行距離10万kmより早くオーバーホールが必要です。
エンジンが寿命を迎えたときの代表的な兆候は、以下のような初心者でも気付くことができる症状であり、長く乗り続けたいならオーバーホールが必要です。
・燃費の悪化
・加速時の息つきや出力不足、加速ショックや減速ショックの発生
・オイル消費の増加
・エンジン騒音や振動の発生、排気音の増大
・排気管からガソリン臭い白煙やスモーク(黒煙)の排出
・アイドル回転が不安定、エンストの発生
●オーバーホールの実施内容
オーバーホールは、あらかじめ不良部位を特定してシリンダーヘッド側上部のみ、あるいはシリンダ―ブロック側下部のみのオーバーホールもありますが、どこが悪いかを見つける目的もあるので基本的にはすべてを分解します。したがって、オーバーホールを行うためにはエンジンに関する専門的な知識と技術が必要なので、検査工具や設備を有する専門の業者にしかできません。
代表的なオーバーホールの内容を以下に示します。
・キャブレターと噴射弁
ガソリンの供給量が適正でないと、加速不足やアイドル不安定、エンストなどが発生します。
→キャブレターは構成部品を分解して洗浄、噴射弁は先端の噴口部を洗浄
・ピストン
高速で往復運動するピストンのスカート(側面下部)部とシリンダーライナーの両方に縦傷や摩耗によるスカッフが発生すると、圧縮漏れを起こします。圧縮漏れを起こすと、出力や燃費が悪化します。
→ピストンとピストンリングの交換、酷い場合はシリンダーライナーを交換
・動弁系および吸排気弁
吸排気弁が着座するバルブシート(弁座)は熱と衝撃を受けるので、走行距離が増えるとシート表面が傷ついたり変形したりします。これにより、弁のシール性が悪化して圧縮漏れが起こり、出力や燃費が悪化します。また、弁のステムシールが劣化すると、オイル下がりによってオイル消費が増大します。
→バルブシートカッターでバルブシート面を修正、弁側が傷んでいる場合は弁を交換。また、弁ステムシールが傷んでいる場合も交換
・クランクシャフトのジャーナルやジャーナルベアリング(メタル)
ジャーナル部やメタル部の傷や摩耗が大きければ、振動や騒音が悪化します。
→ジャーナル部の修正やメタルの交換
オーバーホールの費用は排気量や気筒数、さらには「どの部品まで実施するか」で大きく変動し、場合によっては高額になります。愛着のあるバイクを乗り続けるために必要かどうかを判断し、作業を進めましょう。
(Mr. ソラン)