ジープが2番目に売れている日本、最新プラグインハイブリッド「レネゲード4×e」を試したらエレクトリックモードが楽しかった!

■電動化により圧雪路でも快適でイージーな走りを実現したレネゲード

レネゲード4×e 前7/3
レネゲード4×eのフロントスタイル。フィアット500Xと兄弟車とは思えないジープらしいスタイル

ジープ」「フィアット」「アルファロメオ」「アバルト」の4ブランドを展開するFCA。そのFCAが開催した雪上試乗会についてお届けします。

雪での走破性が高いというのは、あらゆる状況において高性能であることの証です。会場の星野リゾートトマム周辺はまだしっかりとした圧雪に恵まれていました。

レネゲード4×e走り
ハイブリッド走行もEV走行もそれぞれが気持ちいい走りを実現するレネゲード4×e

ジープブランドのクルマが一番売れているのはもちろん、アメリカです。アメリカというと縦横に張り巡らされたフリーウエイや、どこまでも続く舗装された直線路を思い起こしますが、じつは主要な道路からちょっと外れるとラフロードなどがたくさん存在するような環境で、ジープのようにタップリしたロードクリアランスを持つクルマは必要不可欠だったりします。

そして、ジープが2番目に売れている国はどこか?というと、じつはこれがびっくり、日本なのです。第二次世界大戦終了と同時に、大量のアメリカ製ジープが日本に上陸してから約75年、今は平和的にジープが日本で走っています。

レネゲード4×eエンジンルーム
フロントは1.3リットルエンジンとISG、リヤはモーターで駆動するレネゲード4×e

前出のように、アメリカではジープのロードクリアランスが重要視されています。そのため、ジープなのに2WDというようなモデルも多数存在しているのですが、日本でジープと言えばやはりその4WDシステムに魅力を感じることでしょう。

日本は世界的な分類でみれば降雪地帯に属する地域もあり、雪が降ったときにどれだけの走破性が持てるか?は、とても重要なことです。ジープの2WDモデルは日本にも輸入されていますが、なんといっても人気があるのは4WDモデルです。そのなかでも最新のモデルは、レネゲードに追加された4×eというプラグインハイブリッドになります。

レネゲード4×e充電口
レネゲード4×eは普通充電のみに対応

さて、レネゲードはフィアット500xと基本コンポーネンツを共有するモデル。4×eはフロントにエンジンとISG(モータージェネレーター)、リヤにモーターを配置するモデルです。エンジンは1.3リットルの直列4気筒でグレードによってスペックが異なります。

リミテッドは131馬力、トレイルホークは179馬力、トルクはいずれも270Nmです。組み合わされるモーターはグレードに関係なく同一で、フロントのISGが45馬力/53Nm、リヤモーターが128馬力/250Nmとなります。

レネゲード4×eには2つのモードセレクターが存在します。ひとつはパワートレインのセレクターで、

・ハイブリッド
・エレクトリック
・E-セーブ

の3種。

もうひとつが駆動系の制御で

・オート
・スポーツ
・スノー
・サンド/マッド

となります。またトレイルホークには「4WDロック」というモードも用意されます。

レネゲード4×e スタッドレスタイヤ
試乗車にはスタッドレスタイヤのミシュランのX-アイスを装着

試乗車はトレイルホーク、リミテッドともにスタッドレスタイヤ(ミシュラン・X-アイス・スノー)が装着されていました。

トレイルホーク、リミテッドともに試乗しましたが、さすがにパワートレインの力強さを感じるのはトレイルホークです。トレイルホークはリミテッドに比べて40馬力以上も出力が上乗せされているので、その力強さはかなりのものです。しかし、せっかくの40馬力オーバーも舗装ではその威力を発揮できるものの、雪道では持て余す存在。雪道のような路面ミューの低い場面では、トレイルホークのパワーを生かし切ることも難しい印象です。

つまり、オンロードでパワフルに走りたいなら、トレイルホークを選ぶのが懸命ですが、雪道などで安定した走りが欲しいならばリミテッドでもほとんど遜色を感じることはありません。ただし、スタックするような状況に陥った際には、トレイルホークの「4WD」ロックは頼りになりそうな印象です(今回の試乗では、その状況にはなりませんでした)。

レネゲード4×e インパネ
インパネは水平基調で、車体の傾きがわかりやすいデザイン。助手席前にもグリップが装備される
レネゲード4×e 走行モードスイッチ
左側がパワートレインのセレクター、右側が走行モードのセレクター

さて、レネゲード4×eのスノードライブです。パワートレインのセレクターは「ハイブリッド」、走行モードセレクターは「スノー」で走ると、かなり安定したフィーリングを披露します。ハイブリッドモードの場合はリヤをモーター、フロントをエンジンで駆動する4WDドライブが基本となります。4WDとはいえ燃費を稼ぎ、排ガスを減らすためFFと4WD を絶妙に切り替えながら走っているため、完全な4WDという印象ではありません。

レネゲード4×e 走り2
もっともアクティブに走れるのは後輪駆動状態となるエレクトリックモード

しかし、それでいいのでしょう。なにが何でも4WD状態で走らないとならないのは、オフロードトレイルのような場面でしょうし、FF状態で不安定になると4WDになってそこで安定性を出すのですから十分と言えます。しかも、機械式の4WDのようにクラッチで駆動を断続しているのではなく、リヤのモーターを電気的に断続し立ち上げるので、その反応は非常に高く、アンダーステア抑制も上手に行えます。

レネゲード4×e  フロントシート
トレイルホークはプレミアムファブリックの専用シート地を使う

もしアクティブに走りたければ、走行モードは「スポーツ」を選ぶといいでしょう。スポーツモードにすると、アクセル操作に対するパワーの出方がキビキビとした動きになります。

しかし、スポーツモードの場合、パワートレインは「ハイブリッド」のままとなります。じつは雪道でもっともアクティブに走ることができるのは、走行モードを「エレクトリック」にすることです。フロントにISGを備えるジープレネゲード4×eですが、エレクトリックモードではISGは働かず、リヤのモーターのみが駆動します。つまり後輪駆動となるわけです。

後輪駆動となっても、スタビリティコントロールなどは作動したままですので、基本的な安定性は保たれたままでのアクティブな走りを楽しめるというわけです。ただし、バッテリーの容量がなくなれば、エレクトリックモードはもちろん使えません。

(文:諸星 陽一/写真:井上 誠)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
続きを見る
閉じる