バイクも電動化時代。オールジャパンで交換式バッテリーを規格化して世界標準を目指す【週刊クルマのミライ】

■ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキのメーカー4社が電動二輪車用交換式バッテリーの標準化に合意

Honda_BENLYe
ホンダのビジネス向け電動スクーター「ベンリィe」でも着脱可能なHonda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)を採用。2個直列接続させた96V系EVシステムとする

いまクルマの電動化は既定路線として進んでいます。それは地球温暖化/気候変動に対して、人類が取れる手段として人為的な温室効果ガス(CO2)排出量を低減することが求められているからです。

もちろん、LCA(ライフサイクルアセスメント)といって製造から運用、廃棄までトータルで考えたときのCO2排出量については、単純に電動化すれば減るというわけではないという指摘もありますが、ポテンシャルとしては完全に電動化に移行して、化石燃料を使わないようにすることがベスト、というのが現時点での世界的なコンセンサスでしょう。

そうした電動化の流れは四輪車だけでなく二輪車にも及んでいます。

たとえば、2019年4月には本田技研工業株式会社、川崎重工業株式会社、スズキ株式会社、ヤマハ発動機株式会社の4社により、電動二輪車用交換式バッテリーのコンソーシアムが創設されました。

このコンソーシアムでは、電動二輪車における航続距離や充電時間への解決手法の一つとして、共通利用を目的とした交換式バッテリーとそのバッテリー交換システムの標準化検討を進めてきたのです。

そして、その結論が出ました。

honda_pcx_electric
ホンダの電動スクーター「PCXエレクトリック」は交換用バッテリーパック2個を搭載する。ひとつの重さは約10kgとなっている

この4社は、『日本での電動二輪車普及に向け、相互利用を可能にする交換式バッテリーとそのバッテリー交換システムの標準化(共通仕様)に合意』したことを、2021年3月に発表したのです。

二輪用の交換式バッテリーシステムについては日本メーカーだけでなく、海外でも採用の動きがあります。日本国内ではすでにホンダが業務用の電動二輪車において「モバイルパワーパック」という名称で、交換式バッテリーシステムを採用しているという実績もあります。

今回、合意した共通仕様については詳細は公表されていませんが、この規格をベースに交換式バッテリーを相互に利用するための技術的検証を進め、規格化につなげるというわけです。

また、今回の合意についてはあくまでも「日本での電動二輪車普及」が旗印となっていますが、ホンダ/ヤマハ/スズキ/カワサキという、オールジャパンでの合意というのはグローバルにも影響することは間違いありません。なにしろ、この4社を合わせると世界シェアでは4割以上を占めるからです。

つまり、日本国内向けに交換式バッテリーを規格化するということは、それが世界のデファクトスタンダードになる可能性大といえるのです。

電気自動車・電動二輪車について、バッテリーの充電時間と航続距離というのは永遠のテーマといえます。四輪についてはバッテリー交換式というアイデアは定期的に登場しますが、搭載量が多すぎるため重量も重くなり、交換するための設備が大掛かりになることもあって、広く普及するのは非現実的というのが現時点での解となっています。

しかし二輪の場合は10kg程度のバッテリーパックで済むため、人力でも簡単に交換できます。

また交換式バッテリーをサブスクやリースといった扱いにすることで、車両価格の低減にもつながるというメリットもあり、電動化における最適解という見方が増えています。

ただし、規格化には課題もあります。今後、バッテリー技術が大きく進化したときに、規格自体がレガシーとして技術の進歩の足かせとなってしまう可能性もあるからです。そのあたりも規格化においては検討されているはずです。

二輪の交換式バッテリーでは技術の進化にどのように対応するのか、日系4社による規格化の動きに注目です。

自動車コラムニスト 山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
続きを見る
閉じる