いつでも誰でもどこででも、気分上々のエンジンフィール【ファンティック キャバレロスクランブラー250・走り編】

■扱いやすい中低速…じゃなくて、中低速こそおもしろい!

キャバレロスクランブラー250
たっぷりトルキーな中低速と、ほどよいバイブレーションが楽しいエンジンです。

キャバレロ スクランブラー250のエンジンは、まさに感動的! その感動は、高速域までブン回したときではなく、ぐりぐり走る中低速域で味わえます。

けっして高速側が回らないわけではなく、スロットルを開ければきっちり上まで回り切りますが、そのフィーリングは中速域とさほど大きくは変わりません。

いちばん楽しく、味わい深いのは、なんといっても低速域から中速域にかけてのゾーン。ねっとりと粘り強く、しかも回りごこちがいいので、軽くスロットルを開けただけのゼロ発進ですら、もうすでに楽しさあふれるエンジンなのです。

キャバレロスクランブラー250
エンジンは249.6ccの水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒。8500rpmで25HPを発生します。

エンジンの振動を消しきるのではなく、ほどよく残してあるため、250ccの小さめエンジンながら、単気筒らしいパルス感は十分。いつまでも聴いていたくなるような音楽的エキゾーストノートを伴奏に、すがすがしいパワーフィールを味わえます。

試しにわざと大きめにスロットルをあけ、ローギアでポンとクラッチを当ててみましたが、おっとりしたエンジンとロードモデル寄りの重量バランスのおかげで、そんなときでも挙動は穏やか。どかんと不意に大きくフロントが上がるようなことはまずなさそうです。

●ABSのオン/オフでブレーキが一変!

キャバレロスクランブラー250
フロントブレーキには320mm、リアブレーキには230mmのペタルタイプ・ディスクが採用されています。キャリパーに刻まれたBYBREのブランド名は「ブレンボ製」という意味。

キャバレロ スクランブラー250のブレーキは、前後ともABS付き。左側ハンドルのスイッチを長押しすればABSのオン/オフが切り替えられ、同時にブレーキの味付けも大きく変わります。

キャバレロスクランブラー250
ABSは左スイッチボックスにあるスイッチでオン/オフが可能。オフにすると、インジケーターがオレンジに光ります。

ABSをオンにしてフロントブレーキ・レバーを強く握り込むと、制動初期から介入が始まるためか、ABS作動時にもこれといったキックバックは感じられませんでした。かつんと硬く、ディスクが滑っているようなタッチにちょっと不安になりかけるほどですが、強く握り込めば、そのぶんぐいぐいと逞しいストッピングパワーを発揮するブレーキです。

ABSをオフにすると、ブレーキタッチはぐっとソフトに。ライダーのレバー入力に従って、まるでディスクをやさしく包み込むような、ナチュラルでコントローラブルな利き味に変わります。

キャバレロスクランブラー250
ABSのオン/オフで大きく性格が変わるブレーキ。使いこなせば走りの幅が広がります。

いっぽうリアブレーキのABSは、歩く程度の極低速時にはカタカタとキックバックを感じます。でも、ふつうの走行速度なら、ほとんど作動感がありません。どんなに強く踏み込んでも、まるでビデオゲームのように安定して滑らかにするすると減速できます。

ところがABSをオフにしたときは、一気に強くブレーキペダルを踏み込むと、瞬時にリアブレーキがロック。たちまちタイヤが滑りはじめてしまいます。ふだん街中を走ったりツーリングに行ったりするのなら、ABSはやはりオンの一択。ブレーキング時の安定性や安全性を考えれば他の選択はなさそうです。

でもダートに踏み込むときや、上級者があえてシビアにブレーキを使いこなしてスポーツライディングを楽しみたいと思った場合には、ABSをオフにすることで、キャバレロ スクランブラー250の能力を、よりいっそう引き出せるのではないでしょうか。

キャバレロスクランブラー250
フロントサスはゴールドのアウターチューブが美しい41mm径の倒立フォーク。リアサスにはプリロード調整機構がついています。

サスペンションは、オフ車っぽい見た目に反してきっちり硬め。小さなギャップにもカツカツと敏感に反応するシャープな足回りです。ただ、硬くてもストロークは十分あるので、フラットダートを走る程度なら、そう簡単にボトミングしそうにはありません。

キャバレロスクランブラー250
しっとり落ち着いた操縦性で、コーナリングの安定感はバツグン!

コーナリング特性は、クイックにぐいぐい曲がるタイプではなく、クルーザーのようなゆったりした安定志向。いったんリーンアングルを決めてしまえば、コーナー出口まで、まるでレールに乗ったようにぴたりとラインをトレースしてくれます。

キャバレロスクランブラー250
ダートにも恐れず踏み込める走破力で、キャバレロ スクランブラー250が、いつものツーリングを冒険旅行に変えてくれます。

フラットダートを走ってみると、スクランブラーなら当たり前ともいえますが、純粋なオフロードモデルというよりは、ちょっと足が長めのオンロードモデルみたいだなという印象をもちました。

サスペンションストロークは前後とも150mm。十分ダートを走れるキャパシティーがありますが、もしちょっとペースを上げてオフを楽しみたいなら、大きなギャップのある路面は避け、なるべくフラットなフィールドを選んだほうが無難です。

操縦性は、オフロードでもとても素直で、コーナリング中に少しくらいよけいにスロットルを開けても、いきなり大きくリアが滑ってびっくりするような過激さはありません。オフロードに慣れたライダーなら、誰でも慌てず対処できる落ち着いた乗り味です。

●美しき究極のマルチパーパス・マシン

キャバレロスクランブラー250
最先端のイタリアンデザインには、日本の古い町並みにもしっくりなじむ懐の深さがあります。

キャバレロ スクランブラー250は、ぐんと気分がアガる中低速域のエンジンフィーリングや、フィールドを選ばない扱いやすさ、飛びぬけたおしゃれ感を兼ね備えたバイク。ワインディングもツーリングも通勤もオフロードもデートもカフェタイムも、何から何まで1台のバイクで楽しみたいという欲張りなライダーにおススメです。

なかには「250ccシングルとしては、お値段もちょっと欲張りじゃない?」なんて感じる人がいるかもしれませんが、一度でも乗れば、それだけの価値は十分あると納得できる、大人のためのオールマイティーなバイクです。

【ファンティック キャバレロスクランブラー250 主要諸元】
全長×全幅×全高:2166mm×820mm×1135mm
シート高:820mm
エンジン種類:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
総排気量:249.6cc
最高出力/最大トルク:25kW/22N・m
燃料タンク容量:12L
タイヤ(前・後):110/80-19・130/80-17
ブレーキ:前後油圧式シングルディスクブレーキ(ABS)
メーカー希望小売価格:91万円(税込)

(写真:高橋 克也/文:村上 菜つみ

【関連リンク】

キャバレロスクランブラー Official Site
https://caballero.jp/scrambler

バックカントリーモーターサイクル Official Facebook
https://www.facebook.com/BackcountryMotorcycle/

★村上菜つみさんがファンティック・キャバレロスクランブラー250で出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2021年4月号(3月6日発売)に掲載されています。

モトチャンプ2021年4月号

この記事の著者

村上菜つみ 近影

村上菜つみ

福岡出身・東京在住のモデル&モータージャーナリスト。ツーリング雑誌での編集経験を経て独立し、二輪・四輪問わず幅広い分野で執筆中。「月刊モトチャンプ」連載中の「ぶらり二輪散歩」で使用したバイクのインプレッションを毎月6日(モトチャンプ発売日)に公開する他、乗り物関連の展示を紹介する「村上菜つみのミュージアム探訪」をシリーズ連載しています。
愛車はホンダ・モビリオスパイク&ホンダ・VTRです。
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