エンデューロとは?長距離の自然道を競うオフロードレース【バイク用語辞典:バイクレース編】

■マシンの耐久信頼性に加えてライダーの技術と持久力が勝負を分ける

●モトクロッサーに比べると、より多様なコンディションに対応できるマシンが必要

森林地帯の細い林道やアップダウンの多い山の斜面、小川を走破する自然道コースで、コース内に設定されたテスト(競技区間)でタイムを競うオフロードレースです。競技時間が長いので、ライダーとマシンの技術だけでなく持久力や耐久性が問われます。

自然の中でワイルドさや冒険的な要素を盛り込んだエンデューロについて、解説します。

●エンデューロとは

エンデューロの起源は、1913年英国で開催されたISDE(インターナショナル・シックスディズ・エンデューロ)と言われています。主催者が設定した、1周が数10km以上の自然道コースを指示標識に基づいて走行するレースです。コースは、森林地帯の細い林道やアップダウンの多い山の斜面、小川を走破するような厳しいコースで構成され、途中に設定されたチェックポイントを通過して順位を争うよりも、完走を目的にするのが最初の姿でした。

オフロードレースの分類(エンデューロ)
オフロードレースの分類(エンデューロ)

現在国際大会として、ISDEのほかエンデューロGPも開催されています。ただし競技内容は、タイムアタック(オンタイム)方式を採用しています。タイムアタック方式では、コース内に設定された数箇所の「テスト」(競技区間)があり、1台ずつコースインしてタイムを競います。大会によっては、20箇所以上もあるテストの合計時間で順位を競います。

また、テストとテストの間にはルートと呼ばれる移動区間があります。この移動区間にも、オフロードのスキルが試されるテクニカルなセクションが設定され、ルート区間を決まった時間より早く到着しても遅く到着してもペナルティが与えられます。ルートを規定時間以内に走り、テストでは1秒を削るアタックを行うことで順位を競うわけです。

●日本のエンデューロ

日本では、MFJ(日本モーターサイクルスポーツ協会)が、FIM(国際モーターサイクリズム連盟)のエンデューロ規則に準じて、タイムアタック方式の国内競技規則を定めています。現在欧州で開催されているISDEは、走行距離が250~300kmで連続6日間にも及ぶ長丁場の戦いです。

エンデューロ風景
エンデューロ風景

同じような大会を日本で行うには地形が違いすぎ、欧州の大会そのままにというわけにはいかないため、日本では距離を約半分の100~150km程度に短縮し、その分コース難易度を高くしたコース設定で開催されます。

日本のトップレースは、全日本エンデューロ選手権がMFJ主催で、全国4箇所(1回は1日、残り3回は2日間)で開催されます。このトップカテゴリーのIA、IBクラスの他にも、NA、NB、W(ウィメンズ)まで、各ライダーの技量にあったクラスが設定されており、コースや周回数などもクラスごとに別々に規定されています。

●エンデューロのマシン

ヤマハ「YZ450FX」
ヤマハ「YZ450FX」

エンデューロで使用されるマシンは、公道走行が可能な市販オフロードバイクをベースにしたものが使用されます。一般の公道を走行することもあるエンデューロでは、ナンバープレートやライト、ウインカーなどの保安部品の装備が必要です。

モトクロッサーに比べると、より多様なコンディションに対応できる、また長距離を走破できるマシンが必要です。

エンジンは、4ストロークや2ストローク、水冷や空冷にかかわらず、ほとんどは軽量で低速トルクが高い単気筒が選択されます。排気量による制限はありません。


エンデューロは、一見するとモトクロスと似たレースですが、短期決戦でなく長い距離を競うため、ライダーの技術と体力とマシンの耐久信頼性が問われるレースです。一方でモトクロスにはない大自然を楽しむ、挑戦するという醍醐味があります。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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