ジェントルなエンジンとブレーキ、しなやかなサス…誰もが扱える優しい一台【スズキ ジクサーSF250・走り編】

■最新油冷エンジンのなめらかパワー

ジクサーSF250のエンジンは、4ストローク油冷単気筒249cc。9000rpmで26PSの最高出力を発揮します。

ジクサー250SF
249cc油冷単気筒エンジンは、最高出力26PS。軽くてトルクフルなパワーユニットです。

中低速から高速域までストレスなく吹け上がるフラットな特性で、爆発的なパワーこそありませんが、するすると軽快に回ります。停止状態から全開発進すると、2速8000rpmくらいで一般道のスピードリミット60km/hに到達します。

ただローギアでは、ライダーの体感以上に回転が上がってしまうことがあるので要注意。振動が少なく滑らかなエンジンフィールも手伝って、排気音や加速Gなどに頼って感覚的にシフトすると、知らないうちに回りすぎてレブリミットに当たってしまうことも。とくに低速ギアでは、必ずレブカウンターをチェックして、適切なタイミングでシフトアップしましょう。

ジクサー250SF
中低速のリッチなトルクをうまく使えば、思うぞんぶんワインディングを楽しめます。

スカッと気分よく回るエンジンですが、だからといって回せば回すほど楽しいタイプではありません。トルクは2000rpmくらいから実用域に入り、3000rpmまで回せば十分スポーツライディングが可能に。高回転側まで伸びるとはいっても、無理にぎりぎりまで回すよりは、トルク豊かな中速域をうまく使って走るのがおすすめです。

エキゾーストノートは耳に心地よく、とてもジェントル。SOCS油冷エンジンには空冷エンジンのような冷却フィンの振動がないせいなのか、どこか水冷エンジンっぽい、緻密でメカニカルなサウンドです。

●ストリートで冴えわたる秀逸ブレーキ

ジクサー250SF
フロントディスクブレーキには300mmの大径ディスクを採用。リアのディスクは直径220mmです。

フロントブレーキのタッチはとてもソフトですが、利きはバッチリ。握り込みを深めるにつれニュートラルに制動力が上がっていく素直でパワフルなブレーキです。どちらかといえば、サーキットのような極限シーンで力を発揮するというよりは、街乗りやツーリングなど、ストリートで真価を発揮するブレーキかなという気がしました。

ジクサー250SF
ソフトタッチでよく利くブレーキと優秀なABSがウェット路面のブレーキングを強力にサポートしてくれました。

ブレーキには、フロント/リア共にABSが装備されています。めいっぱいレバーを握り込んでフロントのABSを働かせてみると、フロントサスが律動するように小さな沈み込みを繰り返すリアクションがありました。ガタガタと音や振動を感じる激しいキックバックはないので、ABSが働いてもびっくりせずにすみそうですね。

いっぽうリアのABSは、作動時にがちゃがちゃと後輪まわりから音がしますが、振動はほとんどありません。思い切り踏み込みさえすれば、いつでもがっちりブレーキングできます。ジクサーSF250のABSは動作感がナチュラルで、ライダーの感覚によくなじみます。もともと優しいタッチのブレーキ本体との組み合わせで、特別なブレーキングテクニックを意識しなくても、誰もが安全に使いこなせる素晴らしいブレーキに仕上がっていました。

●ギャップに強いしなやかなサスペンション

ジクサー250SF
荒れた路面を軽やかにいなす、コシのあるサスペンション。ストリートでこそ輝く足まわりです。

スポーツバイクのサスペンション性能は高速域からのフルブレーキングやハードコーナリングのように、とくに大きな負荷がかかるシチュエーションで評価されることが多いもの。でもジクサーSF250のサスペンションは、ふつうのライダーが日ごろ公道でよく出遭う平凡なシチュエーションでの性能にすぐれたタイプです。

ジクサーSF250のサスは、ガチガチに硬くもなければ、ふわつくほど柔らかくもありません。コシの強さがひとつの特長といえるでしょうか。柔らかそうにみえて意外と踏ん張りがきき、しかも乗り心地はバツグン。とくに荒れた舗装路で圧倒的な強さをみせる、しなやかさ重視のサスペンションです。

たまたま試乗エリアの近くに、暴走車対策のためらしいバンプ舗装の道路がありました。通過する車両を揺らし、振動で警告することでスローダウンを促す仕掛けなので、舗装路としてはハードな部類に入るバンプですが、ジクサーSF250は、そんな路面でもライダーがわずかに腰を浮かせて進入するだけで、まるで何事もなかったようにあっさり走り抜けてしまいます。

フルカウルのスポーツバイクとはいえ、ジクサーSF250はインド生まれのラグジュアリーマシン。まだ日本ほど道路整備が行き届いていないインドの街を優雅に走れる性能を求めて作られたことを思えば、このサスペンションの特性にも納得できますよね。

●安心快適なライディング・ポジション

ジクサー250SF
身長164cmの私の場合、足つきには十分ゆとりがありました。

ジクサーSF250のハンドルは低めにセットされたセパレートハンドル。そのためライダーは前傾したライディングポジションをとることになります。でも極端な前傾姿勢にはならず、街乗りやツーリングでも快適なレベルです。足付きがよくハンドルが大きく切れるので、Uターンもらくらく。どんな場所でも余裕をもって気楽に取り回せるマシンです。

●誰もが楽しめるスポーツバイク

ジクサー250SF
エッジのきいたフルカウルに包まれているのは、ライダーにやさしい高性能。ジクサーSF250なら、誰もがスポーツ・ライディングを楽しめます。

現代のスポーツバイクは、高性能の追求が生んだ機能美と、しびれる走りのスピリットがぎゅっと詰まったエキサイティングなマシンです。でも反面、その高性能は、走りのための環境が整ったサーキットのようなステージでこそ光り輝くものでもあります。

ジクサーSF250は、高性能スポーツバイクでありながら、実用性をたっぷり加味して作られたマシン。誰もが気軽に公道で走らせ、自分なりのライディングを楽しめる、真のストリートスポーツバイクです。ふだんの暮らしの中で、バイクと遊ぶアクティブな時間をたっぷりもちたいと願うライダーには、うってつけの一台といえそうですね。

【スズキ ジクサーSF250 主要諸元】
全長×全幅×全高:2010mm×740mm×1035mm
シート高:800mm
エンジン種類:油冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒
総排気量:249cc
最高出力/最大トルク:19kW/2.2kgm
燃料タンク容量:12.0L
タイヤ(前・後):110/70-17・150/60-17
ブレーキ:前後油圧式シングルディスクブレーキ(ABS)
メーカー希望小売価格:48万1800円(税込)

(写真:高橋 克也/文:村上 菜つみ)

【関連リンク】

ジクサーSF250 Official Site
https://www1.suzuki.co.jp/motor/lineup/gsx250frlm0/?page=top

村上菜つみさんがスズキ・ジクサーSF250で出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2021年1月号(12月6日発売)に掲載されています。

モトチャンプ2021年1月号

この記事の著者

村上菜つみ 近影

村上菜つみ

福岡出身・東京在住のモデル&モータージャーナリスト。ツーリング雑誌での編集経験を経て独立し、二輪・四輪問わず幅広い分野で執筆中。「月刊モトチャンプ」連載中の「ぶらり二輪散歩」で使用したバイクのインプレッションを毎月6日(モトチャンプ発売日)に公開する他、乗り物関連の展示を紹介する「村上菜つみのミュージアム探訪」をシリーズ連載しています。
愛車はホンダ・モビリオスパイク&ホンダ・VTRです。
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