■使用済みタイヤを持続可能材料に再生させ、循環経済実現に寄与
タイヤ世界大手のミシュランは、Enviro社(エンバイロ)との合弁事業として、ミシュラン初のタイヤリサイクルプラントを南米チリのアントファガスタ地域に建設すると発表しました。
同プラントは2021年に着工され、2023年生産開始予定。投資額は3,000万ドル以上となるそうです。
廃タイヤは、日本では主に熱利用(サーマルリサイクル)されているほか、ブリヂストングループは、日本や米国、欧州にある同社グループの販売店で回収された、乗用車用やトラック・バス用の使用済みタイヤのほぼすべてが、原材料や燃料などとして活用されています。
住友ゴムグループでは、廃タイヤを新たなタイヤによみがえらせる更生タイヤ事業や、廃タイヤのリサイクルも行っています。
タイヤメーカーにとって使用済みタイヤのリサイクルは重要な課題であり、ミシュランは、持続可能な原材料調達の取り組みのひとつと位置づけています。
スウェーデンのエンバイロは、使用済みタイヤからカーボンブラック、熱分解油、ガス、スチールを回収する特許技術を持っていて、同プラントでは年間3万トンのアースムーバー(大量の土を動かす大型土工機械)用タイヤをリサイクルできる見込みとしています。これは、チリで毎年廃棄される当該タイヤの約60%に相当するそう。
同プラントでは、使用済みタイヤを直接、顧客の敷地から回収、運搬、切断してリサイクルされます。回収された材料の90%は、タイヤ、コンベヤーベルト、防振製品などさまざまなゴム製品に、残りの10%はプラントが自社の熱や電力として再利用する予定です。
タイヤリサイクルプラントの建設は、「VISIONコンセプト」の実用化を進め、タイヤ生産に持続可能な原材料を増やすというミシュラン・グループの取り組みと完全に一致しています。ミシュランは、この分野のイノベーションには、新しい形のコラボレーションが必要であることを認識し、多様な技術分野の革新的なパートナーシップを構築すると表明。
「VISIONコンセプト」は、持続可能なモビリティを具現化するためのミシュランの経営、開発戦略として2017年の「Movin’Onサミット」で発表されました。
「VISIONコンセプト」のイノベーションとして4つの大きな柱が掲げられています。「エアレス」「コネクテッド」「3Dプリンティングの活用」「100%の持続可能原料の使用(すべて再利用できること、または生体材料を使っていること)」で、この4つを最終的に実現することを目指すとアナウンスしています。
(塚田 勝弘)