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■最新技術をどこよりも先に実現させてきたカロッツェリア・サイバーナビ
1990年、世界初の市販GPSカーナビを登場させて30年間歩み続けてきたパイオニアのカーナビゲーションシステム。1997年には、カロッツェリア・サイバーナビがハイエンドモデルとして登場し、時代の最先端を切り開いてきました。最新のサイバーナビは、「docomo in Car Connect」による自在なネットワーク接続という武器を得て、引き続き時代をリードしています。その魅力とすごさはどこにあるのか。誕生の時代から今に至るまで、カーナビゲーションの進化を見続けてきたカーAV評論家、会田肇さんにclicccar編集長の小林和久が聴いてみました!
小林:数多い自動車系ジャーナリストの中でも、会田さんはカーナビやガジェット類がお好きで得意分野という印象ですが、カーオーディオやナビに興味を持ったきっかけは何だったんですか?
会田:中学校で入った放送部ですね。当時の音源は、オープンリールテープがメインだったんですよ。それで入部テストとして、「クラシック音楽をスムーズに繋げ」という課題が出た。オープンリールの編集はカット編集で、文字通りテープをはさみで切って繋ぐんですね。それがたまたまうまくいって入部できた。その放送部でいろいろな機材に触れたり、自分でラジオを作ったりしたことが原点ですね。
そして、大学に入って運転免許を取ったらクルマが好きになっちゃいまして。親父に頼んでクルマを買ってもらい、大阪の友だちに会いに行ったりとか日本中走りました。それが高じて、クルマ系出版社(モーターマガジン社)に就職したわけです。
小林:その頃の愛車にカーオーディオは付いていたんですか?
会田:いわゆる純正カーコンポが付いてました。でも学生でお金がなかったから、当時流行ったリアトレイに載せる箱型スピーカーを買うのが精一杯。ほとんど純正のままでしたね。
小林:パイオニア・ロンサムカーボーイのTS-X9とかが大ヒットするちょっと前ですかね。
会田:そうですね(笑)。ただオーディオ&ビジュアルにはずっと興味があって、家のオーディオやビデオなどは相変わらず好きでした。結婚して子どもができる頃にはビデオカメラも加わりました。ただ当時カーナビはまだなかったです。
現在のカーナビの原形と言えるものを知ったのは、パイオニアがAVIC-1を出したときですね。ただ正直、あの頃は「電子地図ってどうなんだろう」「高いイルミネーション付きオーディオかな」くらいに思っていました(笑)。
●機能が追加できるという発想をいち早く実現
小林:その頃のカーナビってどんな性能でした?
会田:初めて芦ノ湖にAVIC-1を持って取材に行ったとき、いきなり測位しなくなっちゃって。どうしたんだろうと思ってパイオニアに電話をかけたら「会田さん、いま空にGPS衛星がないんです」と言われて(笑)。当時は衛星の数が少なくて、日本の真上に衛星がない時間帯によっては、測位できないことがあったんです。だけど、星と繋がってるみたいで、すごい仕組みだなと感じました。
小林:会田さんは現在、カロッツェリアのナビに対して評価が高いようですが、パイオニアのナビに注目しだしたのはいつ頃ですか?
会田:90年代になって「カーコンピューター」っていう発想を聞いたときからですね。製品を買ったらそれっきりっていうのではなくて、ソフトウェアをバージョンアップすることで機能もアップする。そういう発想ってパソコンにはあったけれど、普通は「より性能のいいものが欲しければ、より新しいものを買う」のが当たり前でした。
ところがパイオニアはソフトウェアをROMに入れて、次の機能が出たときはそれを買えば機能が追加されるようにしたんです。これは発想的に素晴らしいと思いましたね。ただ、それもいいことばかりじゃなかった。ソフトの機能をアップするとハードが付いてこないっていうことが当然あるわけです。機能が上がるに従って処理が遅くなるというね。
●HDDの登場が容量の壁を取り払った!
小林:それがブレークスルーしたと感じたのはいつですか?
会田:業界初のDVDナビとしてサイバーナビが登場した頃からですね。サイバーナビって名前に変わったときです。実はパイオニアはそれまで「ナビ」とは表現していないんです。性能面でもイメージでも大きく変わったサイバーナビで、初めて「ナビ」って言葉を使ったわけです。しかも「サイバー」という未来的な名前を付けてきた。ただし、あの時点で3Dジャイロを積んで、それなりの性能を発揮していたのですが、残念ながら道路以外の一部の場所では自車位置がズレを起こすことが多かったんですね。
小林:それがHDDになって劇的に変わったと。
会田:私はそう思いましたね。まず自車位置。処理が速くなったことでデータの読み出しも速くなったから、自分の位置と地図の擦り合わせがきめ細やかにできるようになったんです。たとえばマップマッチング(位置情報の誤差をマップに合わせ補正する技術。カーナビ上ではクルマが道路外にいると道路上へ戻す補正をする)は、精度を高めるのに必要なわけですが、例えばコンビニやファミレスに寄ると道路からずれて入るわけです。その時マップマッチングが強すぎると、クルマが道路上から外れないんですね。そこでHDDサイバーナビは、そのような場所でも正確に動作を行う新コンセプト「フルタイム高精度」を掲げ、新技術を投入しました。その結果、従来の道路上はもちろんのこと、道路以外の場所においても高い精度を出すことに成功しています。
加えてHDDサイバーナビがすごかったのは「ハードディスク・オーディオ」というメディアを車内に持ち込んだことです。それまで音楽を聴くのは、基本はCDを1枚1枚再生していました。ところが自分で好きなCDを入れて、好きな曲が聴ける。しかもメディア容量という呪縛からも逃れることができたわけです。
それまではDVDならDVDの容量(片面 1層記録の場合で4.7GB)までしかデータを入れられないわけですが、HDDなら容量が増やせるので、機能をアップしようと思ったら容量アップすればいい。この新しい方向性をどこよりも先に出してきた。
小林:まさにパイオニア、開拓者精神ですよね。
会田:AVIC-1もDVDナビもHDDもそうだったんですが、パイオニアはとにかく最初に出す。カーコンピューターという発想を最初にやる。だからサイバーナビになって性能もアップすると、他のメーカーからも、ひとつのスタンダード、業界標準としてみられるようになったんですね。こういったことはすべて進化次第では容量制限がないHDDだからこそできたわけで、DVDではできなかった。当時私はHDDをメディアとしてナビに使うなんて想像すらしてなかったので、めちゃめちゃ感動したことを覚えています。
●ついに通信へ、繋がるカーナビへと進化していったサイバーナビ
小林:そして次の進化が、いよいよ通信ですね。
会田:そうなんですが、それにはちょっと前段階があります。1990年代はモバイル通信もまだ2Gで、とてもじゃないけどデータ通信には対応できなかった。
そういったなか、地図データがHDDに入ったので、パイオニアは当時普及し始めた家庭用のブロードバンド(ADSL)に着目しました。その回線を使ってやろうというのが、このホームユース。HDDを自分で抜いて、自宅で地図更新するっていう発想です。
さらに面白いのは、家でテレビに繋いでルート検索などの操作ができる点です。ドライブの前日に、家族で「ここ行きたいね」って場所など各種の検索をしたりもできたんですよ。いまは多くのナビでスマホから目的地やルートを転送できますけど、そういったことの始まりだったわけです。
そういえば、当時のサイバーナビでは、ルート上の店舗の営業時間情報も考慮してましたね。ガソリンスタンドやレストランに立ち寄ろうとすると、その時間に利用できるか地図上で区分されて教えてくれたんです。どこもやっていない機能でした。
小林:今のGoogle Mapとかでできることを、ほぼ実現していたんですね。
会田:そうです。もちろん出してきた製品や技術のすべてがうまくいったというわけじゃなかったけど、考え方は常に先進的だった。私が「自分のナビならカロッツェリアのナビが一番いい」って思うのは、ナビに対して徹底したこだわりを持って臨んでいる、そういう点なんですよね。HDDを抜いて家庭で扱うって、確かにマニアックな機能で、「そんなことやる人いないよ」と言われることもありました。でもこの頃なんですよ。自動車メーカーがパイオニアを指標にし始めたのは。いろいろなカーナビや自動車メーカーの技術者に聞くと「サイバーナビはテストしています」とよくいわれました。パイオニアを超えないと評価されないっていわれるようになったんですよね。
小林:そうして他社からも一目置かれている、と。そして家庭用ブロードバンドから車載通信の時代に繋がるんですね。
会田:そうですね。幕開けはスマートループです。
小林:どんな機能だったんですか?
会田:スマートループは、カロッツェリアのユーザーひとりひとりが発信した情報をお互いに共有できるサービスです。これを利用することで、最新の渋滞回避ルートや施設の入り口などが分かる。市販ナビゲーションではどこもやってなかった取り組みですね。
たとえばVICS(道路交通情報通信システム)がカバーする道路、今は12万kmありますが当時は7万kmくらいでした。対してスマートループ渋滞情報は当時約33万km、現在は70万kmをカバーしているんです。日本の道路って120万kmくらいあるんですが、その70万km以外は道路幅5m未満の細街路なので渋滞は少ない。だから実質的には日本の全道路に対応したことになるんですよ。それだけの道路情報をリアルタイムで更新していくっていうことをやり始めたのは、画期的でした。ネットワーク接続のさきがけというか、ナビの時代が変わった感じです。
小林:その後、カメラの映像にドライブ情報を重ねて表示するARスカウターなどが話題を集めて、現在のサイバーナビにたどり着くわけですね。
会田:最新のサイバーナビ「AVIC-CQ911-DC/CL911-DC/CW911-DC/CZ911-DC」がそれです。
■最新技術投入の歴史が現在のサイバーナビに活きる!
●これ一台で容量無制限の車内ネットワーク環境が完成する
小林:現在発売中の最新サイバーナビ、AVIC-CQ911/CL911/CW911/CZ911のDCモデルは、「docomo in Car Connect」を採用してLTEデータ通信が使い放題になりました。会田さんはこれをどう思われますか?
会田:最新の製品群には、ここまで述べてきたカロッツェリアのカーナビの歴史、技術者の情熱や思いがすべて凝縮されていると思いますね。その強力な武器となったのが通信です。これまで車内からネットワークに繋がろうと思ったら、スマホなどのデバイスに頼る必要がありました。ところがカロッツェリアのCQ911/CL911/CW911/CZ911のDCモデルにはネットワークスティックが付属するので、これだけで車内ネットワークが完成してしまうんです。そのうえスマホのような通信量の制限もない。こんな市販ナビはサイバーナビ以外ありません。
小林;その恩恵は、具体的にはどんな点ですか。
会田:まずカーナビとして、自動で地図データ更新ができる点がすごいですね。いままで定期的にPCで更新しなきゃいけなかったものが、自動的に地図が新しくなってくれる。PCでダウンロードした更新データをSDカードに入れて車内に持ち込む手間が無くなったり、これまでなかった道をカーナビがいつの間にか案内するようになってくれたり、ユーザーにとっての利便性やメリットは大きいですよ。スマホアプリが自動でバージョンアップして使いやすくなってるような感覚ですかね。
さらにルート探索にもネットワークを活用しています。これは「スーパールート探索」という機能で、ユーザーひとりひとりが発信し蓄積された情報などと、リアルタイムな交通情報を有する独自のサーバー上で幾千ものルートを計算し、ドライバーの理想に限りなく近いルートを提案してくれます。通信を使うことで日ごろのドライブも快適になるんです。
小林:エンタメ機能はどうですか。
会田:充実してますよ。サイバーナビは本体で「ストリーミングビデオ」(YouTube)が再生できるので、これだけでも結構楽しいのですが、個人的には自宅のレコーダーと連携できる「レコーダーアクセス」が非常に重宝しています。私も含め、日本のユーザーはテレビが好きだし、日本中どこに行っても自分の観たい番組は観たい。サイバーナビは車内から自宅のHDDレコーダーにアクセスし、リモート再生を実現したんです。レコーダーに録り溜めた番組をたっぷり観られるし、レコーダーのチューナーを使ってBSやCSの視聴もOK。さらに裏技的な使い方として、地デジ放送はドライブ先によって放送エリアが変わり、番組も変化するわけですが、サイバーナビなら自宅のレコーダーの地デジチューナーにアクセスするので、「いつも見ているあの番組が出先だから見られない!」なんてことも防げるわけです。
小林:私もレコーダーに録画はするんですが、いざ観ようと思うと時間がなかなか取れず、レコーダーのHDD空き容量が気になって仕方がないです(笑)。出先でのちょっとした時間にそれが観られるっていうのはすごくいいですよね。
会田:さらにサイバーナビのWi-Fiスポット機能を活用すれば、楽しみがいっそう広がります。たとえばストリーミングメディアプレーヤーを接続すれば、Prime Videoなどのコンテンツが見放題になりますし、Wi-Fiを繋いでこそできるオンラインゲームだって楽しめます。小さなお子様がいるご家庭でも、お子様が車内で飽きてしまうなんてことがなくなりますよね。
またSNSを頻繁に楽しまれる方は、ドライブで行った景色やグルメを動画や写真でアップロードする際の通信量が不安だったと思うのですが、これだってWi-Fi使い放題だから気にせずどんどんできちゃうわけです。
小林:知り合いのお母さんにサイバーナビの話をしたら「子どもの塾終わりをクルマで待っているとき、動画が遠慮なく見られる!」って興味津々でした。
●オンライン会議も通信量を気にせずできる
小林:仕事とかで試されたりはしましたか?
会田:PC作業などが、自分の家と変わらずにできますね。今はワーケーションなどが叫ばれていますが、クルマの中がWi-Fiスポットになってどこでも仕事ができちゃうっていうのは、やっぱり画期的ですよ。
小林:オンライン会議がよくあるんですが、その時間にクルマで移動中の時間と重なったりします。そんなとき、Wi-Fiが使えるカフェやコンビニを探したりするんですが、クルマでWi-Fiが使い放題だと、クルマを安全に駐車できる場所さえあれば大丈夫なので、ものすごく助かります。
会田:先ほどYouTubeの話題が出ましたが、このサイバーナビってYouTubeがバックグラウンドで流せるんですよ。これは貴重です。スマホだと、YouTubeを観ているとき他のアプリを立ち上げるとYouTubeが止まっちゃう。でもサイバーナビなら、地図画面を表示させながら、YouTubeで音楽を聴けるんです。
小林:ユーザーが何を使いたいか、どうしたら便利なのかをちゃんと考えているということですね。
会田:そうでしょうね。サイバーナビはつねに先を行くというこだわりが、開発者のなかにずーっと繋がっていることも大きいように思います。
●ナイトライダーかスーパージェッターの流星号になってほしい
小林:今後、サイバーナビに期待する進化はありますか?
会田:サイバーナビには「人」になってほしい、「相棒」になってほしい。長年かけて、ドライバーの気持ちを一生懸命理解しようと成長してきてくれたのですから。いろんなことをしゃべってくれる、サジェストしてくれる、そういうものに成長してくれるといいですね。
小林:我々の世代的にはナイトライダーですね(笑)。
会田:あ、サイバーナビも最初はナイトライダーを想定してたようですよ。開発者からもその言葉をしょっちゅう聞きました。いよいよそれが実現できる時代になったのかもしれません。
小林:使い放題の通信を手に入れて、サイバーナビはよりナイトライダーに近づいていってほしいです。
会田:自分としては、スーパージェッターの流星号ですかね。
小林:古っ!(笑) 今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
(写真:前田 惠介/まとめ:角田 伸幸)
※サイバーナビネットワークスティック同梱モデル(型番に-DCが付くモデル)には、LTEデータ通信使い放題「docomo in Car Connect」1年間の使用権が付属します。1年間の使用後、または下記同梱モデル以外で「docomo in Car Connect」を利用する場合、別途契約が必要です。利用シーンに合わせて、1日(24時間)プランが500円、1か月プランが1,500円、1年プランが12,000円の3つのプランから選べます。
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