大型電動バイクとは?いまのところ大型電動バイクは海外製ばかり【バイク用語辞典:電動バイク編】

■大型電動バイクの市販化は今のところ海外メーカーのみ

●「MUGEN神電」がマン島TTレースの電動バイク部門で6連覇を達成中

電動バイクとしては、街乗り中心のスクータータイプが中心ですが、最近になってパワフルなスポーツタイプの電動バイクが登場しています。日本メーカーは、大型の電動バイクの市販化を行っていませんが、日本製EVレーサーがマン島TTレースでは6連覇中です。

最新の大型電動バイクの状況について、解説していきます。

●市販化されている大型電動バイク

大型電動バイクの市販モデルは、現在すべて外国製で日本メーカーは市販化していません。

市販化されている大型電動バイクとしては、イタリアのエネルジカ「エゴ」やアディバの「VX-1」、米国のハーレーダビッドソンの「ライブワイヤー」、ライトニング・モーターサイクルの「ストライク」、ドイツBMWの「Cエボリューション」などです。

●電動バイクが日本上陸

昨年2020年3月、日本で初めて大型電動バイクの販売が始まりました。米国の電動バイクベンチャーである「ゼロモーターサイクルズ」の「SR/F」です。

ゼロモーターサイクルズの「SRF」
ゼロモーターサイクルズの「SR/F」
ゼロモーターサイクルズの「SR/F」モーター
ゼロモーターサイクルズの「SR/F」モーター

「SR/F」は市販モデルとして最高レベルの電動パワートレインを装備しています。モーターは、クルマのEVで主流の永久磁石同期モーターを使用。最高出力は110PS、最大トルクは190Nmを発揮し、最高速は200km/h、航続距離は259kmです。

大出力のモーターのパワーをショーワ製ダブルサスペンションで支えて、ボッシュ製のスタビリティコントロールで車両の安定性を制御しています。

電動バイクは、ガソリン車に比べるとレスポンスが良く加速がスムーズ、またエンジンのような回転部分がないため、コーナリング中に車体を倒しても慣性によって起き上がろうとする「ジャイロ効果」が小さいため、操安性が優れていると言われています。

●マン島TTレースで6連覇中の「MUGEN神電」

環境意識の高まりは、レースの世界にも影響を与えています。100年以上の歴史をもつ世界GPのマン島TTレースでも、2009年から電動パワーユニットを搭載するマシンでタイムを競う「TT-Zero Challenge(TTゼロ)」クラスが設定されました。

MUGEN 神電の仕様
MUGEN 神電の仕様

2014年には、日本有数のレーシングコンストラクターである「無限」(株式会社M-TEC社)の「MUGEN 神電」が優勝、2019年まで6連覇を果たしています。

2014年に初優勝した「神電 参」は、最高出力134PS、最大トルク220Nmを発揮します。

搭載された永久磁石同期モーターは、油冷式でピポット前方に搭載され、チェーンで駆動後輪を駆動します。バッテリーは、高出力のラミネート型リチウムイオン電池を使い、その直流電源をインバーターで交流3相電流に変換します。。バッテリーが重いため、車重は250kgとエンジンを搭載した通常のレーシングバイクより70kg~80kg程度重くなります。

残念ながら、2020~2021年の2年間は「TT-Zero Challenge」クラスが開催されないことになり、神電の7連覇は持ち越しになりました。


「MUGEN 神電」は、技術的にみれば最高峰ですが、現在のところ日本メーカーの市販向け大型EVバイクは存在しません。大量のリチウムイオン電池を必要とする大型電動バイクは、クルマと同様に高価な電池が大きな障壁となり、日本メーカーが市販化に踏み出せない理由です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる