電動スクーターとは?インホイールモーターで走るシンプルなバイク【バイク用語辞典:電動バイク編】

■気軽で快適な街乗り用にさまざまなスタイルの電動スクーターが登場

●排気ガスの排出がなく静粛性に優れるが、コスト高が普及のネック

電動スクーターは、エンジンの代わりに電気の力(モーター)によって駆動輪を直接回転させて走行します。排気ガスを排出せず、振動がなく静かで環境にやさしいスクーターですが、コストや航続距離の課題があり普及はまだ限定的です。

電動バイクの先駆け的存在ですでに多くが市販化されている電動スクーターについて、解説していきます。

●電動スクーターとは

クルマでは環境対応車の本命としてEV(電気自動車)が、コスト高の課題を少しずつ解消しながら普及しています。クルマには、厳しいCO2規制や排ガス規制のためにEVにシフトせざるを得ない事情があります。

ホンダ Dio
ホンダ Dio

一方バイクには、クルマほど環境対応の強い要求はありませんが、電動バイクは静かで振動が少なく、短距離を前提とする街乗りには適しており、徐々に人気を得ています。

電動スクーターが実用化される前には、ヤマハから電動アシスト自転車が発売されました。その後、2012年に初めて電動バイクであるヤマハ「パッソル」が発売され、それを追走する形で多くのメーカーから続々と電動スクーターが投入されました。

現時点の課題は、ガソリン車に対して価格が高いことと、1回の充電の航続距離(30~50km)が短いことです。

●電動アシスト自転車とは

電動アシスト自転車
電動アシスト自転車

電動アシスト自転車は、街中でも主婦層が多用しているのを見かけますが、もちろんバイクでなく免許のいらない自転車です。電動アシストは、走行中にこぐ力をモーターが補助(アシスト)する自転車です。

道路交通法では「人の力を補う原動機を用いる自転車」と定義され、乗り手がペダルをこがないと走行しない構造であること、時速24km/hまでアシスト機能が働き、24km/hを超えると補助がなくなることなどが規定されています。

一時期、規定値を超えるアシスト力の電動アシスト自転車が市場に出回り、危険ということで問題になったことがありました。

●電動スクーターの構成

電動スクーターの基本構成
電動スクーターの基本構成

電動スクーターの電動部品の構成は非常にシンプルで、モーターとコントローラー、バッテリーの3つの主要部品で構成されます。エンジン本体や吸排気系、冷却装置、さらにトランスミッションが不要なことも、電動スクーターの大きなメリットです。

・モーター

一般的には、永久磁石同期モーターをインホイールモーターとして使います。インホイールモーターとは、駆動輪のホイールのハブ内部にモーターを配置して、直接タイヤを駆動させるシステムです。

・コントローラー

アクセル開度に応じてモーターの制御電流を制御します。その他にも、回生ブレーキを利用してバッテリに充電する制御も行います。回生ブレーキとは、減速時にモーターを発電機として使い、減速エネンルギーを回収する方法です。

・バッテリー

鉛バッテリーを使う場合もありますが、通常は高出力で充放電効率が高いリチウムイオン電池を使います。リチウムイオン電池では、車載充電器を装備して自宅や外出先の家庭用コンセントからプラグイン充電する方式を採用しているのが一般的です。充電は、車体からバッテリーを取り外して充電します。


通常電動スクーターが採用しているインホイールモーター方式は、タイヤを直接駆動するのでレスポンスが良く、エンジンとトランスミッションが不要なので軽量化できるメリットがあります。ただしクルマと同様、リチウムイオン電池のコストが高いのでガソリンバイクに比べると車両価格が割高なのが一番の課題です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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