■スポーツカーとヒールの高い靴のアンマッチも大切!?
「相変わらず乗りにくいクルマね」
いつもの場所でクルマへ乗り込んできた彼女は、そういって微笑んだ。きつい口調と表情ではないから冗談なのかどこまで本気なのかはわからないけど、心のどこかでそう感じているのは間違いなさそうだ。
ボクはスポーツカーが好き。だからクルマの着座位置は低ければ低いほどテンションが上がるけど、同乗者も同じ気持ちではないのは分かっている。そのため彼女を乗せる時は、ちょっと申し訳ない気持ちはある。口には出さないけど。
スープラのように着座位置の低いクルマは、乗り降りがしづらい。沈み込むように乗り込む姿勢が求められるからだ。足先の出し入れだって軌跡が大きくなるし。
●共通するのはちょっとした高揚感
ボク:「思うんだけど、ヒールの高い靴だって同じようなものじゃないかな。ヒールの高い靴が好きな女性も多いでしょう」
そんなボクの問いかけに、彼女はちょっと不思議そうな顔をした。
ボク:「ヒールが高くても実用面ではいいことはないよね。歩きにくいし疲れやすい。でも、足が長く、スタイルが美しく見える。だから好んで履く……と」。
そこまで聞いた彼女は、「たしかにそうかもね」とちょっと微笑んだ。
彼女:「言いたいことはわかるわ。私もヒールの高い靴は大好きだから」
とはいえ、ヒールの高い靴だと余計に乗り込みにくいのは申し訳ないと思う。それにこのスープラのように着座位置が低いと前方へ足を投げ出す座り方になるから、座ったときに足が落ち着かないのも知っている。スポーツカーとヒールの高い靴って、実はマッチングがよくないよね。
でも、そんな非日常的な要素もスポーツカーには大切だと思うんだ。共通するのはちょっとした高揚感かな。彼女が今日履いている、そのヒールの高いシューズみたいに。
(文:工藤 貴宏/今回の“彼女”:くるす蘭/ヘア&メイク:長谷川 さほ/写真:ダン・アオキ)