■全車9速ATと4WDの4MATICを搭載する、新型Sクラス
8年ぶりのフルモデルチェンジとなるメルセデス・ベンツSクラスは、走りも大幅な進化を遂げているようです。
搭載されるパワーユニットは「S 400 d 4MATIC」「S 400 d 4MATIC ロング」に最高出力 330PS(243kW)・最大トルク 700Nmと、メルセデス・ベンツ乗用車のディーゼルエンジンの中で最高水準の出力を誇る3.0Lの直列6気筒ディーゼル「OM656」が積まれています。
2ステージターボが採用され、小さいタービンには可変タービンジオメトリーも用意され、低回転域から高回転域まで全域でトルクフルな加速を可能にするとしています。さらに、低振動で高い静粛性も実現するそう。
また、排出ガスの浄化システムがエンジン近くに搭載されたことで、排出ガスの温度低下による浄化効率の低下を防ぐことが可能になっています。
ターボから出た排出ガスは、まず酸化触媒へ送られた後、AdBlue(アドブルー)が添加されます。下流の「sDPF(DPF with SCR Coating(選択触媒還元法コーティング付粒子状物質除去フィルター)」により、粒子状物質の捕集とNOx(窒素酸化物)の低減を行った後、SCR触媒でさらにNOxの処理が行われます。
その後、新しく追加されたSCR触媒でさらに窒素酸化物の低減を行うと同時に、余剰のアンモニアを処理するアンモニアスリップ触媒(ASC)を備えることで、運転状況が急激に変化した場合にもアンモニアが外気中に放出されることを防ぐことが可能になっています。
一方の「S 500 4MATIC」と「S 500 4MATIC ロング」には、コンパクトな3.0Lの直列6気筒ガソリンエンジンの「M256」に、「ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)」、 48Vシステムなどの技術を搭載することにより、効率性、快適性、高性能化を同時に実現。エンジン単体で最高出力は435PS(320kW)、最大トルクは520Nm。
ISGは、最高出力22PS(16kW) ・最大トルク250Nmを発生するモーターを備え、48Vシステムにより、従来のハイブリッド車のような回生ブレーキによる発電を行い、約1kWhの容量のリチウムイオンバッテリーに充電できます。
エンジンの低回転時には、その電力を利用して動力補助を行うことで、高い効率性、力強い加速をアシスト。また、スターターが従来より高出力なモーターになることで、エンジン始動時の振動を抑え、エンジンスタートおよびアイドリングストップの際の再スタートの快適性が高められたそうです。
さらに、モーターはシフトチェンジ時にも使われ、エンジンが理想的回転数に達するまでの時間を最小限に抑えるためのアシストも行われます。シフトチェンジに必要な時間が短縮され、スムーズでタイムラグの少ないシフトチェンジが可能になるとしています。
組み合わされるトランスミッションは、全車9G-TRONICオートマチックトランスミッションで、1速から9速までの変速比幅が広いことから、エンジン回転数を大幅に抑え、優れたエネルギー効率と快適性に貢献しています。
また、全車に四輪駆動システム「4MATIC」が採用され、路面状況を問わず安定した走行が可能。大型ボディのSクラスでの四輪駆動システムの採用は、後輪駆動と比較して小回りが効きづらくなるというデメリットも生んでいましたが、新型Sクラスに後輪操舵システム「リヤ・アクスルステアリング」が採用されたのがトピックス。
約60km/h以下では、後輪を前輪とは逆方向に最大4.5度傾け、日常の走行シーンや駐車する際には回転半径が小さくなるなどの利点があります。約60km/hを超えると、後輪を前輪と同じ方向に最大3度操舵することで、走行安定性の向上に貢献。
ほかにも最新のドライバーサポート機能、先進安全装備が満載されていて、メルセデス・ベンツが現在、実用可能な装備や機能が新型Sクラスには惜しみなく投入されています。
(塚田 勝弘)