「GR010 HYBRID」が公開。新設された「ル・マン・ハイパーカー(LMH)」レギュレーション用マシン

■680PSの3.5L V6ツインターボエンジンを搭載し、フロントに272PSのモーターを配置

TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、ル・マン・ハイパーカー(LMH)の「GR010 HYBRID」を公開し、2021年シーズンFIA世界耐久選手権(WEC)に参戦するとアナウンスしました。WECも新型コロナウイルスの影響を受け、2019-2020シーズンは、シーズンの中断・中止になったレースもありました。

TGR GR010 HYBRID
TOYOTA GAZOO Racingが公開した「GR010 HYBRID」

TGRは新カテゴリーである「ハイパーカー」でも高い競争力を維持するとしています。TGRは、ワールドチャンピオンの獲得、ル・マン3連覇を成し遂げています。マツダ「787B」以来のル・マン総合優勝マシンである「TS050 HYBRID」で磨いてきたレースのためのハイブリッド技術「RACING HYBRID」が搭載された「GR010 HYBRID」で参戦することになります。

「GR010 HYBRID」は、2021年に新設された「ル・マン・ハイパーカー(LMH)」レギュレーションに則ったプロトタイプカーで、ドイツ・ケルンのチーム本拠地のエンジニアと、日本の東富士研究所に本拠を置くハイブリッドパワートレーンチームが一体となり開発したそう。

すでに2020年からテスト走行を2回行っていて、新型マシンとして「GR010 HYBRID」が正式発表されたことになります。

搭載されるパワートレーンは680PSを発生する3.5LのV6ツインターボエンジンで、後輪を駆動。さらに4輪駆動のパフォーマンスを発揮させるべく、アイシンAWとデンソーが共同開発したという272PSのモータージェネレーターユニット(MGU)をフロントアクスルに配置されています。ギアボックスは横置き7速シーケンシャル。

エクステリアは、開発中の次世代ハイパーロードカーを彷彿とさせる印象的な仕立てになっていて、レースと市販車の強いつながりを示す「GR」の文字をコンセプトとする新しいカラーリングが与えられたそう。

TGR GR010 HYBRID
TGRの新マシン「GR010 HYBRID」

また、レギュレーションに組み込まれたコスト削減の一環として、新しい「GR010 HYBRID」は「TS050 HYBRID」よりも162kg重くなり、パワーが32%絞られ、ル・マンのラップタイムは10秒程度遅くなる見込みだそう。車両のサイズは250mm長く、100mmワイドになり、100mm高くなります。

TGRは、WECプロジェクト開始以来、初めてリヤのモータージェネレーターユニット(MGU)を廃し、先述したようにフロントアクスルにのみMGUを配置したレイアウトで参戦。「GR010 HYBRID」はスターターモーターを組み込み、リヤブレーキは油圧によってのみ作動します。

また、最先端のエアロダイナミクスも特徴となっていて、高性能な流体力学ソフトウェアと風洞を使い、最大の効率を生み出すよう開発されています。

新しいレギュレーションでは、シーズン中に特定の車体パッケージを持ち込むことが禁じられたことで、ダウンフォースが求められるサーキットにでも、低ドラッグが要求されるサーキットでも同じ仕様で戦うことになります。

TGR GR010 HYBRID
「GR010 HYBRID」のサイドビュー

TGRは2019-20年シーズンにおいてル・マン24時間レース優勝、ワールドチャンピオンを獲得しています。新シーズンも同じドライバーラインナップで、参戦開始以来9シーズン目となるWECに挑むことになります。新ドライバーチャンピオンである、マイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスが「GR010 HYBRID」の7号車を、セバスチャン・ブエミ、中嶋一貴、ブレンドン・ハートレーが8号車をドライブ。ニック・デ・フリーズも引き続きテスト兼リザーブドライバーとして参加します。

WEC、そしてル・マンのトップカテゴリーに初めて「BoP(バランス・オブ・パフォーマンス)」が導入されます。WECシリーズオーガナイザーがエネルギー使用量や車両重量を規定し、各社のハイパーカーの均一なパフォーマンス実現を目指して、レース毎に車両のパフォーマンスをコントロールする規定です。

これにより、TGRとスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスやバイコレス、さらにLMP1カーで参戦を表明しているアルピーヌといったライバル・チームとの接戦が展開されることは確実。

3大陸にわたる全6レースを通じて開催されるWECの2021年シーズンは、3月19日のアメリカ・セブリング1000マイルを皮切りに、ベルギー・スパ6時間レース(5月1日)、そしてシリーズのハイライトであるフランス・ル・マン24時間レース(6月12-13日)を迎えます。さらに1992年以来となるイタリア・モンツァ(7月18日)、2年ぶりの開催となる日本・富士スピードウェイ(9月26日)そして中東・バーレーン(11月20日)の6時間レースが続きます。

新レギュレーションは、コスト削減と手に汗握る接戦を狙い、さらなるWECとル・マンの人気を高めるか注目の2021年シーズンになりそうです。なお、新シーズンは、2021年シーズンという「年」単位になります。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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