■実用性重視のQ3とスタイリング重視のQ3スポーツバック 走りはどちらも快適でスポーティ
初代のアウディQ3は2011年に発表され、今回試乗したモデルは2018年に発表された2代目。2020年から日本に導入されました。
初代はSUV然としたQ3のみでしたが、2代目はスポーティなシルエットを持つQ3スポーツバックも追加されました。2つのボディタイプを導入することで、シェア拡大をねらっています。
ボディ全長はQ3が4490~4495mm、Q3スポーツバックが4500~4520mmなので、ほぼ同じ長さといっていいでしょう。ホイールベースは同一で2680mm、全幅も同一で1840mmとなります。
全高はQ3が1610mm、Q3スポーツバックは1565mmでスポーツバックは全高がかなり低めに設定されていることがわかります。スポーツバックはCピラーが傾斜したスタイリングでスポーティさをアピールしているのに対し、Q3はCピラーの幅がしっかりとありSUV感をアピールする重厚感があります。
パワーユニットは1.5リットルのガソリンターボ(150馬力/250Nm)と、2リットルのディーゼルターボ(150馬力/340Nm)の2種類で、ガソリンエンジンはFFとディーゼルエンジンは4WDと組み合わされます。
このパワートレインの組み合わせはQ3、Q3スポーツバックともに適用されます。
試乗を行ったのはディーゼルエンジンを搭載する4WDのQ3 35 TDIクワトロSラインとガソリンエンジンを搭載するFFのQ3スポーツバック35TSFI Sラインです。
どちらのエンジンも低回転からしっかりとトルクを発生するもので、SUVらしい力強い走りが体感できます。ディーゼルターボのトルク感は当たり前ですが、驚くべきはガソリンエンジンのフレキシビリティの高さです。かつてのガソリンエンジンはエンジン回転を上げることでトルクアップを図ったのですが、今回のQ3シリーズに搭載される1.5リットルターボはなんとわずか1500回転で最大トルクを発生するのです。
実際に試乗していてもこのトルク感を抱くことができ、イージーで力強い走りを味わうことができます。
試乗車のQ3のSラインは18インチ、Q3スポーツバックは19インチのタイヤを履いていましたが、どちらもシャープで正確なハンドリングを披露してくれます。
先代モデルにはSラインパッケージがあり、このパッケージを選ぶとスポーツサスペンションが装着され車高もダウンしたのですが、現行モデル・カタログのSラインの説明やスペックリストにはそうした表記は見つけられませんでした。
にも関わらず、十分なスポーツ性を発揮しているところはなかなか懐の深いシャシー性能と言えるでしょう。また、18インチや19インチという大径、超扁平タイヤを履いているにも関わらず、乗り心地は十分に確保しています。この点は大きく評価されるべきでしょう。
攻めの走りができるような試乗シチュエーションでもなく、また路面も濡れてはいたものの雪道のように極端にグリップが落ちるような場面もなく、クワトロの恩恵を味わうことはありませんでした。しかし、アウディというブランドの大きな魅力がクワトロという4WDシステムであるのですから、ディーゼルのFFが選べないことはまだしもガソリンの4WDが選べないというのはちょっと残念なことだと思います。
Q3、Q3スポーツバックともにリヤシートに窮屈さはありません。シートからルーフまでの距離はQ3が976mm、Q3スポーツバックが928mmとQ3スポーツバックはかなり低く感じますが、じつはA3セダンの924mmよりも高い設定です。
実際に乗った印象もヘッドルームに不足を感じることはありませんでした。ラゲッジルーム容量はQ3、Q3スポーツバックともに定員乗車時は530リットルを確保、リヤシートを前倒ししてフルラゲッジとした場合はQ3が1525リットル、Q3スポーツバックが1400リットルを確保しています。
(文・写真/諸星 陽一)