テレスコピック式サスとは?2本のパイプを望遠鏡のように伸縮させるフロント用サスペンション【バイク用語辞典:サスペンション編】

■ピストンメタル式とダンパーロッド式の2方式に大別

●主流のダンパーロッド式は、伸び側と圧縮側のオリフィスで減衰力を調整

フロント用サスペンションとしては、2本のパイプを伸縮させ同時にステアリング機構の一部としても機能するテレスコピック式が主流です。

テレスコピック式のピストンメタル式とダンパーロッド式の2種について、解説します。

●テレスコピック式の基本構成

フロントサスペンションとしてはテレスコピック式が主流ですが、サスペンション(緩衝機能)としての役割と同時にステアリング(操舵機能)の役割も担っています。

車軸を支える2本のパイプをアッパーブラケットとアンダーブラケットで支持して、両ブラケットに取り付けられたステアリングステムシャフトがフレーム側にあるヘッドパイプを貫通して車体に固定されています。

テレスコピック式は、アウターチューブの中にそれより一回り小さいインナーチューブを挿入し、チューブの中にはスプリングとダンパーが配備されています。望遠鏡(テレスコープ)のように伸縮してサスペンションとして機能します。

●ピストンメタル式とは

ピストンメタル式は、インナーチューブとアウターチューブの隙間にオイル室、インナーチューブの下端にはチェックバルブ付きのピストンが設けられています。

インナーチューブの伸縮によってオイル室の容積を変化させ、オイル室の容積が増える圧縮行程時にはインナーチューブのオリフィスを通してオイル室にオイルを供給します。一方、伸び行程時にはオイル室のオイルがオリフィスを通過してインナーチューブの内側に移動します。

ピストンメタル式は、インナーチューブとアウターチューブの接触面が少ないため剛性が低い、またサスペンションストロークが十分に確保できないため、現在はビジネスバイクなどの一部にしか採用されていません。

●ダンパーロッド(チェリアーニ)式とは

ダンパーロッド式の仕組み
ダンパーロッド式の仕組み

ダンパーロッド式は、アウターチューブの底部にシリンダーを設けて、インナーチューブ内側とシリンダー外側との隙間に2つのオイル室を設けています。2つのオイル室は、インナーチューブ内側のフローティングバルブによって上下に分割され、インナーチューブの伸縮により上下のオイル室の容積が変化します。また、フローティングバルブとシリンダーの上部と下部には圧縮側と伸び側のオリフィスが設けられています。

・圧縮行程

アウターチューブ内へインナーチューブが沈み込むと、インナーチューブ容積分のオイルが上へ押し出されます。オイルは、シリンダー下部の穴を通じて上に流れ、同時にインナーチューブとシリンダーの隙間へもオイルが流れます。

減衰力は、オイルが移動するときの粘性抵抗によって発生します。

・伸び行程

アウターチューブ内からインナーチューブが伸びると、インナーチューブ容積分のオイルが下に移動します。このとき、オイルはシリンダー下部の穴を通じて下へ流れるとともに、フローティングバルブが閉じてシリンダー上部の小さな穴からもオイルを流します。

減衰力は、オイルが移動するときの粘性抵抗で発生しますが、フローティングバルブが閉じているので抵抗は増えます。

オイル室をインナーチューブ内側に設けることで、インナーチューブとアウターチューブが直接摺動する構造となるため、接触面積が大きくとれるとともに外径も大きくでき剛性が高くなるメリットがあります。細やかな減衰力調整ができるので、主流となっています。


フロントサスペンションとして主流のテレスコピック式は、太さの異なる2本のチューブ「アウターチューブ」と「インナーチューブ」が、望遠鏡のように伸縮して衝撃を吸収します。ダンパーロッド式は、チューブ内部に設けられたオリフィスを通過するときに発生する粘性抵抗によって減衰力を発生させる方式です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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