■開けても閉じてもエレガントな佇まいが魅力
2020年6月に加わったレクサスLC500コンバーチブルは、5.0L V8エンジンのみで、クーペモデルが設定する3.5L V6エンジンのハイブリッドは設定されていません。
ソフトトップをリヤシート後方(一応、後席が備わる4人乗り)に格納するためで、クーペ(ハイブリッド)の駆動用バッテリーはまさにその位置に配置されています。
コンバーチブル化されてもレクサスの最上級クーペの派生モデルらしく、ソフトトップを閉じてしまえば、音・振動面はかなり抑えられていて、ずっと閉じているとコンバーチブルであることを忘れさせるような静かさ。
郊外路を流す程度であればとても快適です。コンバーチブルといえども多くのシーンで閉じていることが多いはずで、車両本体価格1500万円という価格にふさわしい乗り味が堪能できます。とくに低速域でも乗り心地は良好で、ルーフクローズ時は、ラグジュアリークーペそのものというキャビンになっています。
LC500コンバーチブルに採用されたアクティブノイズコントロールも利いているはずで、ルーフの開閉を問わず、低周波ノイズを低減しているそう。マグナ・インターナショナルが生産を担っているソフトトップ(カットボディには、サプライヤーのプレートが付けられている)は、マグネシウム、アルミニウムなどの軽量化に寄与する素材が使われているほか、ルーフ格納部を覆うトノカバーにもアルミニウムが使われています。
さらに、ボディには構造用接着剤の延長、スポット溶接打点の追加、リヤサスペンションタワーブレース、床下ブレースなどにより、ボディ剛性が確保されています。
約15秒で開閉し、50km/h以下なら走行中でも操作できるソフトトップを開け放つと、郊外路で60km/h程度であれば風の巻き込みはほとんど感じられず平穏そのもの。なお、ソフトトップの開閉は、書の三折法にヒントを得て「動き出し」「途中」「動き終わり」の3ステップに分解し、動き出しと動き終わりには適度なタメを持たせたそうで、もう少し開閉時間は短縮できたと想像できますが、襖を閉める際にゆっくり閉めるような所作にも通じているように感じられます。
また、高速道路で試す機会はありませんでしたが、試乗車にはオプションのウインドスクリーン(メッシュパターン)が装着されていて、こちらがあれば不快な風の侵入をかなり抑えられそう。さらに、エアコンも「レクサス クライメイト コンシェルジュ」に任せておけば、エアコンをはじめ、シートヒーターやネックヒーター、ステアリングヒーターを自動制御してくれますから非常に安楽。
自然吸気の5.0L V8エンジンは、当然ながらクーペモデルよりもその存在感を堪能できます。滑らかな回転フィールに加えて、街中の常用域であれば即座に加速を引き出せる余裕綽々のトルク感、さらに踏み込むと青天井かと思えるほどのパンチ力も垣間見えます。組み合わされる10速ATの「Direct Shift-10AT」がさらにそのスムーズさを後押ししています。
レクサスLCを実用車として捉える人は少ないはずで、5.0L V8のNAエンジンのハイトーンのサウンドをより楽しめるコンバーチブルをあえて選択することが、余韻も味わえる最上の贅沢といえるでしょう。
(文:塚田勝弘/写真:井上 誠)