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■電子制御で精度高く燃料噴射量を制御できるのが最大のメリット
●吸入空気量やアクセル開度などの情報をもとにECUからの電気信号で駆動
クルマは排ガス規制に対応するため、2000年頃にはすべてがキャブレター方式から燃料噴射弁(インジェクター)方式に切り替わりました。同様にバイクも国内向けについては、2006年頃には完全に燃料噴射弁に切り替わりました。
燃料噴射弁の仕組みと燃料噴射システムについて、解説していきます。
●燃料噴射弁の仕組みと作動原理
キャブレターは、ベンチュリー部に発生する負圧でガソリンを吸い出して、吸入空気量に応じて燃料をエンジンに供給する方式です。一方の燃料噴射弁は、ECU(エンジンコントロールユニット)から送信される駆動信号によって開閉し、吸気ポートにガソリンを噴射します。
噴射弁は電磁(ソレノイド)弁で構成され、電磁コイルに電流を流すとプランジャーが吸引されてニードル弁が開き、ノズル先端の噴孔から高圧のガソリン噴霧が噴射されます。噴孔は、燃料の分散性を促進するため4噴孔など複数の孔が開いています。
微粒化に優れたガソリン噴霧を噴射するために、噴射弁には燃料ポンプによって250kPa~300kPa程度に加圧されたガソリンが供給されます。燃料供給ラインには、燃料ポンプに加えて燃料圧力を一定に保つ燃圧レギュレーターや燃料中の異物を除去する燃料フィルターが取り付けられています。
●どのようにして適正な燃料を噴射するのか
噴射弁による燃料噴射は、エアフローセンサーや吸気圧、アクセル開度ほか様々なセンサーの情報をもとに、ECUが適正な噴射量と噴射時期を決定する電子制御の燃料噴射システムです。
基本的な燃料噴射量は、エンジンに吸入される吸入空気量で決まるので、吸入空気量を精度良く検出する必要があります。空気量を検出あるいは推定する方法には、次の3つの方式があります。
・エアフローセンサーで直接計測した吸入空気量をベースにするマスフロー方式
・アクセル開度とエンジン回転数をベースにするスロットルスピード方式
・吸入空気圧とエンジン回転数をベースにするスピードデンシティ方式
一般にバイクでは、マスフロー方式およびスピードデンシティ方式とスロットルスピード方式の併用方式が採用されます。
●電子制御燃料噴射システム
電子制御燃料噴射の狙いは、運転条件に応じて出力や燃費、排ガスが最適になるようにエンジン制御を行うことです。
そのためには、エアフローセンサーや吸気圧、アクセル開度の他にも、吸入空気温度センサーやエンジン温度センサー、水温センサー、油温センサー、さらに排ガス中の酸素濃度から空燃比を計測する酸素(O2)センサーなどの情報が必要です。
吸入空気温度センサーは、空気量を補正するために使われます。エンジン温度センサー、水温センサー、油温センサーなどは、運転中のエンジンの状態の検出、またオーバーヒートなどの異常検知のために使われます。
排気管に酸素(O2)センサーを装着するのは、排ガス低減のためです。酸素(O2)センサーを使って空燃比(吸入空気と燃料の質量比)をフィードバックしながら精度良く噴射量を制御します。常に空燃比を理論空燃比(=14.7)に制御することによって、排気系に搭載した三元触媒で有害排ガスCO、HC、NOxを効率的に低減します。
電子制御の燃料噴射弁システムによって、エンジンの制御は飛躍的に向上しました。特に、三元触媒と組み合わせた空燃比のフィードバック制御による排ガス低減が、最も大きな成果です。
(Mr.ソラン)