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■ECUの駆動信号によって噴射弁で高圧ガソリンを噴射
●噴霧の微粒化を促進するため高圧ポンプでガソリンを高圧化
バイクの燃料供給システムは、現在ほとんどが電子制御の噴射弁式です。燃料タンクのガソリンを高圧燃料ポンプとレギュレーターで加圧しながら圧力を調整し、ECU信号からの駆動信号によって噴射弁で噴射します。
電子制御の燃料噴射(FI=Fuel Injection)システムについて、解説していきます。
●燃料タンク
バイクの燃料タンクは、通常剥き出し状態でシートの前下部に搭載されています。したがって、単に燃料を溜めておく役割だけでなく、バイクのスタイルやデザイン性に大きな影響を与えます。
またバイクのタイプによって、燃料タンクの大きさや形状、搭載場所が異なります。
例えば、長距離走行を目的としたツアラーやアメリカンタイプは、タンクの容量が大きく設定されています。また、レース用のオフロードモデルは乗車する位置が前寄りなので、シートがタンクの上に配置されます。トライアル用バイクは、ライダーの動きを妨げないようにフレームと一体化した容量の小さな構造にしています。
ツアラーで大きいものは30L以上、トライアルマシーンでは2L以下というコンパクトな仕様があります。
●高圧燃料ポンプ
イグニッションをオンした際の「ウィーン」という音が、高圧燃料ポンプの作動音です。かつては燃料ポンプを外付けしたアウトタンク式もありましたが、現在はほとんどがタンクの中に配置するインタンク式を採用しています。
インタンク式は交換が容易ではありませんが、燃料でポンプが冷却されること、万一車両事故などが発生しても燃料漏れのリスクが小さく、安全であるという大きなメリットがあります。
燃料ポンプは、モーターとポンプで構成されている電磁ポンプです。モーターのアーマチュア(電機子)が回転すると、軸に装着されたインペラーが回転して、ポンプ内部に発生する強い旋回流によって加圧された燃料が吐出する仕組みです。通常は、ガソリンを250~300kPa程度に加圧します。
また、噴射弁は電気信号で作動する精密部品なので、供給側とリターン側の燃料パイプにはゴミや異物を除去するフィルターが装着されています。
●燃料レギュレーター
燃料ポンプで加圧された燃料圧力を調整するのが、燃料レギュレーターです。燃料圧力の調整は、余分な燃料をリターン燃料パイプから燃料タンクに戻すことで行います。
噴射弁による燃料噴射は、ECU(エンジンコントロールユニット)からの電気信号で行われます。同じ噴射期間であっても、噴射される吸気ポート内の圧力が低ければ噴射量は増え、圧力が高ければ噴射量は減ります。
これを防ぐため、燃料レギュレーターは内部のダイヤフラム室と吸気ポートを細いチューブで連通させて、吸気ポート内の圧力に対応して燃料圧力を変化させます。アイドル運転のように吸気ポート圧が低いと燃料圧力を下げ、全開運転のように吸気ポート圧が高いと燃料圧力を上昇させます。
●燃料噴射弁
噴射弁による燃料噴射は、ECUによる電子制御で行います。エンジン回転やアクセル開度、吸気圧力、吸気温度などのセンサー情報から、運転条件に応じた最適な燃料量を噴射します。
噴射弁は電磁(ソレノイド)弁で構成され、ON/OFFの噴射信号で作動します。
電磁コイルに電流を流すとプランジャーが吸引されてニードル弁が開き、先端の噴孔から高圧のガソリン噴霧が噴射されます。噴孔は、燃料の分散性を促進するため4噴孔など複数の孔が開いています。
バイクの燃料噴射システムは、基本的にはクルマのシステムと同じです。あえて違いを言うと、バイクの場合は燃料タンクが剥き出し状態なため重要なデザイン要素となっている点です。
(Mr.ソラン)