ヘッドライトとは?「ハロゲン」「HID」「LED」の3つに大別【バイク用語辞典:電装編】

■明るさ、設計自由度、耐久信頼性の高さから今後の主流はLEDライトか

●光源の進化に加え、マルチリフレクター(多角反射板)の採用で明るさが飛躍的に向上

ヘッドライトの光源としては、ハロゲンライト(電球)が一般的ですが、最近になってHIDライトやLED(発光ダイオード)ライトを搭載しているバイクが増えてきました。1998年に安全のため常時点灯が義務化され、明るさだけでなく高い信頼性が必要となったからです。

それぞれの光源の特徴について、解説していきます。

●マルチリフレクターとは

従来のヘッドライトでは、光源の前のレンズにカッティングを入れ、光を集光させ配光していました。最近は、「マルチリフレクター」という光源の背面に複雑な角度を付けた反射板を設けて配光します。前面のレンズを使わなくて自由に配光ができるメリットがあります。

マルチリフレクターでは、前面のレンズにカットが不要となり、レンズの制約がなくなるため、形状の設計自由度が上がり、空力面でも有利です。このマルチリフレクターと進化した光源の組み合わせによって、飛躍的に明るさが向上しました。

従来のヘッドライトの光源は、安価な電球を使うハロゲンライトが主流でしたが、現在は約2倍の明るさを持つHIDライトと高級車を中心にLEDライトが普及しています。

以下に、3つの電源のそれぞれの特徴について紹介します。

●ハロゲン(電球)ライト

3種のヘッドライト
3種のヘッドライト

2010年頃までは、ヘッドライトと言えばハロゲンライトでした。不活性ガスとハロゲンガス(ヨウ素・臭素など)を封入した電球のフィラメントに電流を流し、発光する仕組みです。

明るさではHIDやLEDに劣り、発熱量と消費電力が多く、寿命が短いのが欠点です。一方で雨や霧の時には視認性が良く、発熱が大きいのでヘッドライト表面に凍結した雪を解かすので雪に強い特徴があります。

安価なので、バイクでは主流の光源です。

●HIDライト

HID(High Intensity Discharge)ライトは、メーカーによってはディスチャージライト、あるいは封入されているガスの名称からキセノンライトとも呼びます。

HIDの最大のメリットは、ハロゲンライトに対して約2倍の明るさと20%以上の広い照射角を持つことです。消費電力が少ない、フィラメントがないので球切れの心配がない、光の色が変更しやすくカラーバリエーションが多いこともメリットです。寿命は、ハロゲンライトの約3年に対して5年程度と長いです。

一方で明るい分コストは高く、点灯や放電のための制御ユニットが必要です。最大の弱点は、点灯してから最大光量を発するまでに5~10秒かかることで、使用する場合はその遅れに対する配慮が必要です。

●LED(発光ダイオード)ライト

LEDは、電気を流すと発光する半導体の発光ダイオードです。

クルマでは一般車にも普及し、バイクでは高級車で採用が進んでいます。明るさはHIDよりやや劣りますが、最大の特徴は10年以上の圧倒的な長寿命で、消費電力はハロゲンライトの1/3程度と少ないです。さらに、小型化によるデザイン性の向上や配光の制御性の良さも大きなメリットです。

コストが高いことが課題ですが、徐々に低コスト化が進み、今後は主流になると思われます。その理由は、寿命がなく球切れの心配がない、省電力化による燃費の向上、さらに配光調整の自由度が高いなどのメリットがあるためです。


1998年4月1日以降の国内生産車は、エンジンがかかっている場合には常にヘッドライトが点灯する構造であることが規定されています。明るさや消費電力、デザイン性、耐久性すべてを考慮すると、バイクも今後はLEDライトが主流になることは必然です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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