オルタネーターとは?エンジンの動力を利用した発電機【バイク用語辞典:電装編】

■走行中にバッテリーへの充電と電装部品へ電力を供給

●レクチュファイヤとレギュレータは、オルタネーターで発生する交流電力を12V直流に変換

オルタネーターは、エンジンの動力を利用した交流発電機です。バイクの各電装部品に電力を供給するとともに、バッテリーを充電するという役割を担っています。オルタネーターが機能しなければ(故障すれば)、すぐにバッテリーは蓄電力を使い切って上がってしまいます。

バイクで消費するすべての電力を発電するオルタネーターについて、解説します。

●オルタネーターの役割とは

電装システム
電装システム

オルタネーターは、走行中に動作している電装部品への電力供給とともに、エンジン始動などで消費したバッテリーの電力を補給(充電)する、2つの役割を担っています。

オルタネーターは、エンジンで駆動しているのでエンジンが回っている時しか発電できません。エンジン始動時には電力を供給できないので、セルスターターの起動は直接バッテリーからの電力で行います。

電装系の流れ
電装系の流れ

通常の走行では、オルタネーターによって発電する電力は、バイクの走行に必要な電力を上回ります。余剰の電力はバッテリーに充電するので、バッテリーが上がることはありません。

●オルタネーターの発電の仕組み

オルタネーター(発電機)の原理は、電磁誘導作用による起電力の発生に基づいています。

オルタネーターの構成
オルタネーターの構成

電磁誘導作用とは、コイルの中の磁界が変化するとコイルには起電力が発生して電流が流れるという現象です。コイルの中に磁石を入れる時と出す時で流れる電流の向きは反対になり、また磁石の極を変えたときも電流の向きは逆になります。

そのため発生する起電力は、時間の経過とともに電圧の大きさや電流の方向が周期的に変わる交流です。コイルの巻き数を増やす、磁石を出し入れするスピードを速める、磁石の磁力を強くすると起電力は大きくなる特性があります。したがって、エンジン回転の上昇とともに発生電力量は増大します。

●オルタネーターの構成

オルタネーターには、発電コイルが1系統の単相式と、3系統に分かれてエンジン1回転で3回発電する三相式があります。かつては、構造が簡単で発電量が少なくてすむ原付スクーターなどで単相式が採用されていましたが、現在はほとんどが三相式です。

オルタネーターの仕組み
オルタネーターの仕組み

発電システムとしては、交流マグネット式発電機と界磁回転型三相交流発電機があります。バイク用オルタネーターとしては、構造が簡単な交流マグネット式が主流です。

交流マグネット式発電機の構造は、エンジンのクランクシャフト後端に装着されたフライホイールの内側にN極とS極の磁石を交互に埋め込んだローターと、その内側のクランクケースに取り付けられた発電コイルを巻いたステーターから成ります。

エンジンが回転すると、フライホイールのN極とS極の磁石が発電コイルの外側を交互に通過することになります。これによって外側の磁界が変化し、内側の発電コイルには電磁誘導作用によって起電力が発生して発電します。

一方、界磁回転型三相交流発電機は交流マグネット方式とは逆に、磁石がコイルの内側で回転します。ローターと呼ばれる磁石は鉄芯に電線を巻いた電磁石です。ローターが発電コイル内側を回転するため、ローターの直径を小さくできるメリットがありますが、コストが高いのが課題です。

オルタネーターによる発電電圧は交流なので、電装系が作動する安定した12V直流電圧に変換するために、レクチュファイヤ(整流回路)とレギュレータ(電圧制御回路)が組み込まれています。


エンジンの点火プラグの火花を飛ばしたり、ヘッドライトを点灯したりと、バイクは自動車ほどではありませんが、いろいろな部品で電気を使っています。オルタネーターは、エンジンの動力を使って発電して電装部品に電力を供給し、同時にバッテリーを充電する2つの重要な役目を担っています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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