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■観客動員の中伝統の「JAF GRAND PRIX」開催
12月6日、三重県の鈴鹿サーキットで第19回「JAF GRAND PRIX」が開催されました。
鈴鹿サーキットで開催される「JAF GRAND PRIX」としては19回目となる今大会はスーパーフォーミュラの第6戦として、同日に予選・決勝が行われるワンデー開催となります。ポールポジションは昨年のチャンピオンであるニック・キャシディ選手。
そして優勝を果たしたのは大湯都史樹選手。大湯選手は今年からスーパーフォーミュラに参戦したルーキーです。
そんなルーキーが「JAF GRAND PRIX」の優勝カップを手に表彰台で流した感激の涙は印象に深く残るものであったと言えます。
しかし、このコロナ禍でこの様な大きなレースを開催するというのは主催者やオーガナイザーの並々ならぬ努力と、選手やメカニック、スタッフやメディアをも含めた関係者の一致団結ともいえる感染症対策がなければ成しえないことなのです。
■徹底した導線管理が決め手なのか?
「JAF GRAND PRIX」に限らずスーパーフォーミュラは今年度の開幕戦から制限付きではあるものの観客動員の下での開催となっています。開催のおよそ2週間前からパドックへ入るすべての関係者に体温測定と観戦者接触の有無を報告するフォームに毎日記入をしネット上で提出することで、関係者自らも健康を管理するという状況を作り出しています。
そこまで事前に健康管理をしたうえで、今回の「JAF GRAND PRIX」ではパドックへ入る関係者は全員、当日の検温を義務付けられます。
その検温所へ向かうためには自動車での入場が義務付けられていました。徒歩や自転車、バイクでの入場は禁止となっています。これは入場時に混雑した場合に「密」な状況を回避するためとのこと。
この検温で37.5度以上の体温となっていた場合はパドックへの入場が拒否されます。今回は該当者がいなかったとのことでしたが、万が一該当者がいた場合であれば、それがチャンピオンがかかっている選手であっても入場を拒否するという徹底した、毅然な対応で取り組んでいくとのことでした。
体温管理とともに徹底していたのは導線管理。特に観客と関係者は健康管理の基準が違うということで一切の接触が断たれていました。いわゆるVIPと呼ばれる観客の方々も同様で、普段はパドックパスをぶら下げて鈴鹿サーキットのピットビル2階や3階のホスピタルエリアとパドックを自由に出入りできる方々も今回はパドックエリアには入場することが出来ません。
グランドスタンドからパドックへ至るトンネル通路もバリケードで封鎖され、パドックへ入ることが出来ない状態になっています。
それはエレベーターも同様で、特別なリストバンドが無い方々はパドックからエレベーターに乗ることも許されません。その様な徹底した導線管理のおかげで「密」な環境を作らないようにできています。
普段は人でごったがえしていたパドックも閑散と言えるほど人がいない状況となっています。
■徹底した管理だからこそできるファンサービス
ここまで徹底した管理の中ではスタンドエリアからの観戦以外できないのではないかと思ってしまいますが、実際はファンサービスも行われています。
人数の制限や選手との交流がないという制限はありますが、ピットを近くで見ることが出来るピットビューイングというファンサービスイベントも行われました。
このピットビューイングも入場から退出まで徹底した導線管理が行われていましたが、来場客の方々に不満を漏らす方が一切おらず、みなさん納得の上で協力的になっているようです。
また、スターティンググリッドの緊張感を味わえるグリッドビューイングも行われました。観客の方々は芝生エリアを立ち止まることなく歩き続けなければなりませんが、スターティンググリッドを間近に見ることが出来ました。
このグリッドビューイングも徹底した導線管理の下で行われてはいますが、このコロナ禍でも管理をきちんとすればファンサービスは出来るというところを示したと言えます。
この様な徹底した管理があるからこそ選手は安心してレースに打ち込めるのです。
願わくばこの状況が早く収束して元のサーキットの環境に戻ってくれることが一番ですが、それまではあらゆる立場の方々が協力し合ってレースイベントを楽しんでいきたいと考えます。
(写真・文:松永和浩)