ウェットサンプとドライサンプの違いは?オイルをオイルパンに溜めるか別体のオイルタンクから供給するかの違い【バイク用語辞典:潤滑編】

■構造が簡単で低コストのウェットサンプが主流、一部のオフロードはドライサンプを採用

●油面が波打ってオイル供給が不安定になるのがウェットサンプの弱点

潤滑方式には、一般的なウェットサンプ方式と一部のオフロードバイクなどで採用されるドライサンプ方式があります。ウェットサンプ方式はオイルパンに溜めたオイルを循環させ、ドライサンプ方式は別体のオイルタンクからオイルを供給して循環します。

ウェットサンプ方式とドライサンプ方式の特徴と得失について、解説していきます。

●4ストロークエンジンの潤滑

ウェットサンプとドライサンプ
ウェットサンプとドライサンプ

4ストロークエンジンは、エンジンのシリンダーヘッドとシリンダーブロック、およびトランスミッションを同じオイルで潤滑します。

オイルの供給方式には、次の2方式があります。

・ウェットサンプ方式
エンジン下部のオイルパンに溜めて、オイルポンプでエンジンの各摺動部に圧送

・ドライサンプ方式
エンジンとは別にオイルタンクを設けて、オイルポンプでエンジンの各摺動部に圧送

以下にそれぞれの潤滑方式について、解説します。

●ウェットサンプ方式

ウェットサンプ方式は、自動車も含めて一般的に採用され、エンジンの下部にオイルパン(オイル溜め)をもつオイル循環システムです。サンプとは、オイル溜めのことです。

オイルポンプで吸い上げられたオイルが、シリンダーブロックとシリンダーヘッドの各摺動部を潤滑した後、自然落下によってオイルパンに戻ります。

構造がシンプルでコストはかかりませんが、エンジン下部のオイルパンに一定の容積が必要なため、エンジン全高が高くなります。また、オイルが高温のエンジン内を循環するのでオイル温度は上昇しやすくなります。

●ドライサンプ方式

ドライサンプ方式は、エンジンとは別にオイルを溜めるオイルタンクを持ち、オイルはエンジンとオイルタンク間を循環しながら、エンジン内部を潤滑します。オイルを溜める必要がないことから、ドライサンプと呼ばれます。

エンジン下部のフィードポンプで各摺動部を潤滑した後、自然落下したオイルはスカベンジング(吸い上げ)ポンプでオイルタンクに戻されて再びエンジンに供給されます。

オイルパンが不要なため、エンジンをコンパクトにできます。また、オイルが別タンクを迂回するため、オイル温度は比較的抑えられます。

ただし、2種類のポンプとオイルタンクが必要なため、重量とコストが増えます。オイルタンク用のスぺースを省くため、フレームの一部をオイルタンクにしているバイクもあります。

ウェットサンプは、激しい走行をするとオイル油面が波打ち、吸い込み時にエアを噛みやすいという欠点があります。安定したオイル量を確保するにはドライサンプの方が優れており、オフロードバイクで主に採用されます。

●オイルを供給するオイルポンプ

オイルポンプ
オイルポンプ

オイルポンプは、シリンダーブロック前面下部に搭載され、通常は容積型のトロコイド式ポンプをクランクシャフトで直動します。オイルストレーナーを通じてオイルパンに溜まったオイルを吸い上げて、エンジン各部に圧送します。

ドライサンプで使うフィードポンプとスカベンジングポンプも同様に一体構造のトロコイドポンプです。フィードポンプによってオイルタンクからオイルを吸引してエンジン各部にオイルを供給すると同時に、潤滑後のオイルはクランクケースに底部に溜まり、スカベンジングポンプでオイルタンクに送られます。


オイルの潤滑方式は、一般的には構造が簡単で低コストのウェットサンプ方式が採用されます。ただし、オフロードバイクのようにオイルパンに溜めたオイルの油面が揺らぎやすい場合は、コストはかかりますが別体のオイルタンクを装備したドライサンプ方式が採用されます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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