■熟成したAクラスベースで使いやすいSUVを成立させる
メルセデス・ベンツはコンパクトモデルからA、B、C、E、Sと順にクラスが上がっていきます。一方、SUVにはGLの符合が使われ、同様にGLA、GLB、GLC、GLE、GLSとクラス分けされます。今回試乗したのは、そのSUV系の最小モデルGLAです。
GLAのベースとなったAクラスは1997年に登場。3度のモデルチェンジを経て、4代目に移行しています。新型GLAはこの4代目Aクラスがベースです。
ベースたる4代目Aクラスは、じつにいいクルマに仕上げられています。初代と2代目のAクラスはEV化などを考え、2重底のフロアを採用するなど斬新な考えを盛り込んだモデルでしたが、3代目からは純粋なFF車としての性能を追求、4代目になりそれが熟成したと言えます。その4代目ベースとなる新型GLAですので、乗る前から期待は大でした。
試乗車はAMGライン装着車でボディサイズは全長が4415mm、全幅が1850mm、全高が1605mmとなります。全長は三菱のエクリプスクロス(4405mm)とスバルXV(4465mm)の間くらいなので、さほど長くはありません。
しかし全幅はマツダCX-8(1840mm)より、10mm広いですが、AMGラインではないノーマルモデルだと1835mmとなり5mm狭いだけなので、やはり幅広のクルマという印象となります。
搭載されるエンジンは1.9リットルのディーゼルターボで、150馬力/320Nmとなります。特筆すべきほどエキサイティングな性能はないのですが、実用エンジンとして非常に扱いやすいものとなっています。
ミッションが従来の7速DCTから8速DCTへと多段化されたこともあり、よりシームレスで力強い乗り味を獲得していると言えます。ディーゼルエンジンの特徴である低速トルクの太さと、フラットで力感のあるフィーリングを上手に生かし、イージードライブを可能としています。
アイドリング状態や低速域ではディーゼルらしいノイズを感じますが、30km/h程度になれば気になりません。タイヤノイズや風切り音がうるさいというレベルではなく普通レベルの雑音なのですが、それで消え去ってしまう程度のディーゼルノイズでしかないという意味です。アクセル操作に対して、応答遅れを感じることなくスッと走ってしまうところには感心させられます。
基本駆動力配分を前100、後0として、そこから路面状況などに応じて50対50まで駆動配分を変化させる4マチックを採用。全体的に落ち着きある駆動、加速を披露します。加えてダイナミックセレクトと呼ばれる走行モード(エンジン、トランスミッション、ステアリングなど)を調整する機構を装備します。コンフォートモードが基本で、エコ、スポーツ、オフロード、インディビジュアル(各設定を自由にプリセットできるもの)が選択可能。
スポーツを選ぶとステアリングアシスト量が減り、引き締まったハンドリングを味わうことができます。
定員乗車時で425リットルを確保しているラゲッジルームは、リヤシートの4対2対4の分割可倒式シートバックによって拡大が可能。
フルラゲッジでの容量は1420リットルにもなります。拡大時のフラット性も高く、使い勝手はいいものとなっています。また、ラゲッジフロアボードは下段にセットすることもできるようになっています。
(文・写真:諸星 陽一)