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■FLEX SHOW AIKAWA Racing with TOYO TIRESのランドクルーザー・プラドは中央自動車大学校の学生さんがメンテナンスを担当
●卒業する学生さんたちのため、川畑真人からのエール!
2020年11月6日(金)、富士ヶ嶺オフロード(山梨県)にて俳優の哀川翔さん率いるラリープロジェクト「FLEX SHOW AIKAWA Racing with TOYO TIRES」のラリーカーが走行テストを行ったのはすでにお伝えした通りです。
テストを行ったのは東南アジアのラフロードおよそ2000kmを5~6日間で走破するラリーレイド「アジアクロスカントリーラリー」(以下AXCR)に出場するためのマシン。ドライバーは昨2019年に続き川畑真人選手です。川畑選手はD1GPで3度のシリーズチャンピオンに輝き、今シーズンもGRスープラを駆り第3戦終了時点でランキング2位と好調な、誰もが認めるドリフト界のトップドライバーです。
今回、川畑選手がテストをしたランドクルーザー・プラドのラリーカーはD1GPマシンよりはるかに重く非力なクロスカントリー4WDですが、その動きはなかなか軽快で、テスト走行にもかかわらず、まるでファンイベントなどで走るデモンストレーション走行のようなシーンも度々見られました。その辺をちょっと川畑選手本人に伺ってみました。
川畑選手いわく「ボクはドリフトドライバーですから、走りで見ている人を楽しませたい、喜んでもらいたいという気持ちがどうしても出ちゃいます。ラリー中でもコーナーにカメラマンを見つけるとちょっとオーバーアクションで走ろうかなと思ってしまいますし(笑)」。
たしかに魅せる走りはドリフトドライバーにとってとても大切な要素ですね。
ただし今回はもうひとつの理由があったようです。
●マシンメンテを全面協力してくれる中央自動車大学校の学生に感謝
「今回乗ったクルマは基本的には昨年走ったクルマです。でも今日乗ってみると昨年の走りでいろいろと痛んだ箇所が完全にリフレッシュされていて新車に乗っているような気分がしました。ジャンプなども実際のラリーより飛んだけど全然心配はありませんでしたし。
本当にマシン製作に携わった学生さんたちはよくやってくれたと思います(編集部注:マシンの製作は自動車整備の専門学校 中央自動車大学校の学生が担当)。でも、2020年はラリーが中止になってしまったので、来春卒業する学生さんはこのランドクルーザーが活躍する姿を見ることがないんですよね…。」
川畑選手が全開のマシンで生き生きと走る姿を魅せたかった相手は、このマシンを1年かけて作り上げ、テスト中のメンテナンスのため現場に来ていた中央自動車大学校の学生だったのです。ドライバーらしく感謝の気持ちを走りで表現したのです。もちろん限界域での挙動とか本番ではできないチェックもあったとは思いますが、少なくとも撮影ポイントのコーナーにいたカメラマンではなかったようです。
このマシンが東南アジアの大地を全開で走る機会は、現状では半年以上先の話となってしまいました。その頃にはマシンの製作に携わった学生はみんな卒業して社会人なのです。
ちなみに川畑選手のAXCR挑戦は昨年が初めてでしたが、慣れない赤土の大地を全開で走ることに関してドリフトとラリーには共通点は多いそうです。
「まず、(ドリフトドライバーとラリードライバーは)滑っても怖くない(笑)。ドリフトの競技ではスライドさせながらもトラクションを感じながらクルマを脱出方向、つまり縦に進ませるんです。悪路でもやっていることは基本的に違いません。ただFRと4WDによるカウンターステアのあて方などが変わりますけど、アクセルによる姿勢制御はなんら変わりないと思います」とのことです。
●2021年を目指し、学生につきつけられた課題は軽量化!
昨年のAXCRでは6日間の行程を完走したものの、残念ながらトップに2時間近い差をつけられてのクラス2位でラリーを終えました。
多くのメディアが集まった今回のテスト走行では来年の参戦を表明した哀川翔チーム監督に「来年こそはクラス優勝を」と期待されましたが「昨年経験しているのでAXCRはもう未知の世界ではありません。来年はドリフトドライバーとしてのゲスト的な扱いではなく、ラリードライバーから脅威に思われる”ラリードライバー”として取り組んでいきたい」と心強いコメント。
順調なマシンの仕上がりが確認できた今回のテストでしたが、勝つためのマシンに必要なもの、現状で足りないものがあれば教えてください、という記者の質問に「軽量化です」と即答しました。
2021年の夏を目指しマシン製作を行う中央自動車大学校の後輩たちは、過酷な道を走り続ける強度と軽量化の両立という大きな課題をつきつけられてしまったようです。先輩たちが仕上げたマシンをさらに高い次元で仕上げ、川畑選手に渡さなければなりません。
今年は世界中のモータースポーツが新型コロナウイルス感染症の影響に翻弄された1年となってしまいましたが、来年は後輩たちが軽量化に取り組み戦闘力がアップしたマシンで川畑選手に大暴れして欲しいものです。
(文・写真:高橋 学)
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