●「FULL COURSE YELLOW」はグローバルスタンダードな新しい規定
先日鈴鹿サーキットにて開催されたスーパーGT第6戦。その土曜日の公式練習後に「FCY TEST」というスケジュールがあったことは、現地に行かれた方以外にはあまり知られていないと思います。
この公式映像でも放送されなかった「FCY」とは一体何なのでしょう?
モータースポーツ好きな方ならもうご存じの方も少なくないと思いますが、FCYとは「FULL COURSE YELLOW」の頭文字を取ったもので、海外レースでは世界耐久選手権(WEC)など多くのカテゴリで採用され、2018年に富士スピードウェイで開催されたWEC 6 Hours of Fujiでも実際に運用された実績があります。
国内モータースポーツでもすでにスーパー耐久で導入されており、F1ではバーチャルセーフティカー(VSC)と呼ばれる同様の規定もあります。
このFCYは、決勝レース中のコース内でアクシデントが発生した場合に、赤旗で中断するほどではなく、かつセーフティカー(SC)を導入するほどでもない場合に運用されるもので、マシンがレース中にクラッシュすること無く何らかのトラブルでマシンを停めてしまった場合などに運用されるようです。
具体的にFCYはまず、コース上で危険な状況が発生すると、その手前のポストでは後続車に危険を知らせる黄旗が振られます。ここでレースコントロールがFCY導入を決めると、すべてのポストでFCYボードが提示され、この時点でコース上すべてで追い越しが禁止されます。
そしてレースコントロールからFCY発動まで10秒のカウントダウンが始まり、カウントがゼロになるまでに走行中の全車は規定速度まで減速しなければならなくなります。また、FCY発動中はすべてのポストで黄旗が振られます。
コース上の問題がすべてクリアになると、今度はレースコントロールからFCY解除までのカウントダウンが伝えられ、カウントゼロになると全ポストで緑旗が振られ、コース全域で速度制限と追い越し禁止が解除されます。
●FCYで公平なレース展開と安全確保を両立
FCYを導入するメリットは、SCと違いコース全域で速度制限がかかるため、FCYやSC導入前に築いた後続車とのギャップがほぼそのまま残るということです。
特にスーパーGTやスーパー耐久などのように異なるクラスのマシンが混走している場合は、先頭車両の前にSCが入るために場合によってはクラストップのマシンから周回遅れになってしまうという問題もありました。それがトラブルの程度によってはFCYによって回避されるため、最後まで見ごたえのあるレース展開が期待できます。
また、FCYは導入・解除がトップ車両の位置とは関係なく行われるので、コース上の安全が確保されればすぐにレースが再開できるところもメリットの一つとなります。
実はスーパーGTでは2020シーズンからのFCY導入を予定していました。最終的には開催スケジュールや公式テストの日程変更などの理由によって今シーズンの導入は見送られましたが、今回こうしてテスト運用をすることで2021シーズンからの導入に向けてしっかりと準備を進めているということが可視化できたのではないでしょうか。
(H@ty)