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■イカツい顔はコンパクトカーにも波及
クルマの顔、フェイスデザインはそのモデルの特徴が最も出る場所のひとつですが、近年流行しているのがツリ目形状のヘッドライトや大型のフロントグリルを採用する「コワモテ顔」。
元々は、トヨタのアルファード/ヴェルファイアなどミニバンに多かったのですが、最近は人気のコンパクトカーにもそのトレンドが波及してきています。そこで、ここでは、そういった精悍でイカツいイメージのフェイスデザインを持ったコンパクトカーを紹介してみましょう。
●日産・キックス
2020年6月に発売された日産の「キックス」。エンジンで発電し、モーターで走る日産お得意のe-POWERを採用し、高い燃費性能と力強い加速感を両立したコンパクトSUVです。
キックスのフロントデザインには、ローマ字のVをモチーフとした形状の「ダブルVモーショングリル」を採用しています。
これは、現行のセレナなどにも採用されているパターンで、セレナでは細いV字のメッキラインに沿うような形でブラックのライナーをマッチさせた形状を採用。
キックスも同様のスタイルを取りつつも、さらに外側へメッキのラインを施すなどでアレンジを敢行。ツリ目の細いヘッドライトとの組み合わせにより、精悍かつアクティブなイメージを演出しています。
キックスが激戦のコンパクトSUV市場で健闘しているのは、このコワモテ顔が要因のひとつかどうかは定かではありませんが、強いインパクトを持つことだけは確かです。価格(税込)は275万9900円〜286万9900円。
●ダイハツ・ロッキー
2019年11月に登場したダイハツのコンパクトSUV「ロッキー」も、大型のフロントグリルとシャープな形状のヘッドライトを持つフェイスデザインが特徴的なモデルです。
軽自動車で培った独自のパッケージング技術「DNGA(Daihatsu New GlobalArchitecture)」を取り入れた車体は、ボディサイズが全長3995mm×全幅1695mm×全高1620mmと非常にコンパクト。5ナンバーサイズながら、広い室内空間と大容量の荷室を持つのが魅力です。
ロッキーは、トヨタにOEM供給されている「ライズ」の兄弟車ですが、どちらもフェイスデザインは車体に対しかなり大きめで、エッジが効いた形状のフロントグリルを採用。また、いずれもメッキパーツなど派手な装飾部品を使わないことで、クロスカントリー4WDのようなオフロード・テイストも取り入れた、迫力ある面構えを持っています。
エンジンは、CVTと組み合わせた最高出力98psを発揮する1.0L・直列3気筒ターボを全グレードに搭載。2WDと4WDがあり、価格(税込)は170万5000円〜222万4200円です。
●トヨタ・ヤリスシリーズ
前モデルのヴィッツから名前を変えて2020年2月に発売されて以来、登録車の新車販売台数で常に上位をキープしているトヨタのコンパクトカー「ヤリス」。
コンパクトカー向けTNGAプラットフォーム(GA-B)を初採用し、軽量かつ高剛性、低重心なボディを採用。力強くシームレスな走りを生む1.5L・直列3気筒のガソリン車とハイブリッド車をラインアップし、ハイブリッド車ではクラストップレベルのWLTCモード36.0km/Lの低燃費も実現。
トヨタのコンパクトカー初のE-Four(電気式4WDシステム)仕様のほか、2WD仕様も用意します。価格(税込)は139万5000円〜249万3000円です。
そんなヤリスのフロントマスクには、近年トヨタのデザインテーマであり、様々なモデルに取り入れている「キーンルック」を採用しています。
キーンルックのキーン(keen)とは、英語で「鋭い」という意味。その言葉が示す通り、ヤリスの顔もエッジが効いた細めのヘッドライトと、大きな開口部のフロントグリルが特徴的です。
また、2020年9月に発売されたハイパフォーマンス仕様の「GRヤリス」では、フロントグリルをより大型化し、フロントバンパー左右の開口部もエッジが効いたデザインとすることで、よりイカツさをグレードアップ。不用意にアオったりしたら食いつかれそうな、迫力ある面構えも魅力のひとつです。
GRヤリスには、最高出力272psを発揮する1.6L直列3気筒インタークーラーターボの4WD仕様と、最高出力120psの1.5L直列3気筒を搭載する2WD(FF)仕様を用意。価格(税込)は265万円〜456万6000円です。
一方、2020年8月に登場したコンパクトSUV「ヤリスクロス」のフェイスは、キーンルックの延長線上ではありますが、ちょっと違ったイメージ。フロント中央、ロア、フェンダーから成る立体構成により、精悍さはありますが、ややジェントルな印象のフロントビューになっています。
ヤリスクロスの車体は、ヤリス同様、コンパクトカー向けTNGAプラットフォーム(GA-B)を採用し、軽くて高剛性、低重心のボディを実現。デッキボード下段時にはコンパクトSUVトップクラスの荷室容量390Lを確保するほか、スーツケース(110L)2個または、ゴルフバッグ(9.5インチ)2個を収納可能とするなどで、高いユーテリティ性も誇ります。
ラインアップには、こちらもヤリス同様1.5Lガソリンとハイブリット車があり、FFの2WD車と雪道などでも高い走破性を発揮する4WD車も設定。価格(税込)は179万8000円〜281万5000円です。
同じヤリスの名前がついていても、モデルの性格などによって、フェイスデザインのイメージが少しずつ異なるのも面白いですね。
●三菱・ミラージュ
三菱の5ドアハッチバック車「ミラージュ」。その6代目現行モデルも、2020年4月のビッグマイナーチェンジで「コワモテ顔」となった1台です。
長い歴史を誇るミラージュは、1978年に三菱初のFF乗用車として登場した初代モデル以来、1995年登場の5代目まで同社コンパクトカーの主力としてラインアップされていたモデルです。
1982年には、クラス初の1.4Lターボエンジンを搭載した2ドアハッチバック車「ミラージュⅡターボ」が大きな話題を呼び、国産コンパクトカーのパワー競争のきっかけにもなりました。セダンモデルなども作られますが、2002年に5代目が生産終了となることで、一旦その系譜は途絶えます。
その後、2012年に世界戦略車のコンパクトカーとして10年振りに復活したのが現行の6代目で、前述の通り2020年の大幅改良によりフェイスデザインも生まれ変わりました。
新型には、三菱のフロントデザインコンセプト「ダイナミックシールド」を採用。これは、デリカD:5やエクリプスクロスなど、最近の三菱車の多くに採用されている共通コンセプトです。ミラージュでは、ボディサイドから中央に向かって包み込むバンパーのプロテクト形状とフロントグリル部を水平・垂直基調のスクエアなラインで構成することで、シャープさと力強さを演出。
また、フォグランプをバンパーサイドに配置することで、ワイドで安定感のあるフロントデザインとしています。
ミラージュのパワーユニットは、最高出力78spの1.2L・3気筒ガソリンエンジンのみ。価格(税込)は143万2200円〜156万9700円です。
(文:平塚直樹/写真:トヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車)