エクリプスクロスをアウトランダーと比較、同じ三菱PHEVでも走りの違いは明確だった 【三菱エクリプスクロスPHEV試乗】

■ヒラリヒラリのエクリプスクロス、ゆったり走るアウトランダー

●プラットフォームは共通のアウトランダーとエクリプスクロス

エクリプスクロスPHEV走り1
サーキットでも楽しいエクリプスクロスPHEV

三菱は早くから電気自動車に積極的なメーカーで、2009年には世界初の量産型EVである「i-MiEV(アイ・ミーブ)」を世に送り出しています。

そしてその後、注目を浴びたのが2代目アウトランダーに設定されたPHEVです。アウトランダーPHEVは2012年の12月に正式に発表されたモデルで、充電できるハイブリッド車の存在を日本人に知らしめたモデルとなりました。

アウトランダーPHEV誕生から約8年、アウトランダーの弟分にあたるエクリプスクロスにPHEVが追加設定されました。

エクリプスクロスPHEV前7/3
スタイリッシュなクーペのようなスタイリングのエクリプスクロスPHEV
アウトランダーPHEV前7/3
キャビンとラゲッジルームに余裕のあるパッケージングのアウトランダーPHEV

エクリプスクロスはアウトランダーとプラットフォームを共有するモデルですが、2018年の日本導入時にはPHEVは設定されず、その登場が待ち望まれていました。そしていよいよ日本導入から2年経ち、マイナーチェンジの時期を迎え、やっとPHEVが設定されたのです。

マイナーチェンジによってエクステリアも大幅に変更。ボディのパネルまわりもかなり変わっています。

もっとも大きな変更点と言えるのがリヤまわりで、従来リヤハッチに採用されていた上下二分割のダブルウインドウはシンプルなシングルウインドウへと変更されました。また、ボンネットの形状も大きく変わり、より力強いスタイリングが強調されています。

エクリプスクロスPHEV正面
マイナーチェンジでボンネットのサイド部分の盛り上がりがより強調され、抑揚が大きくなったエクリプスクロス
エクリプスクロスPHEV 後ろ7/3
従来の上下二分割ウインドウからシンプルなシングルウインドウとなったリヤハッチ

今回はプロトタイプでの試乗となりました。プロトタイプの試乗といっても普段ならもう少し情報が与えられるものですが、今回の試乗では詳細なスペックなどは公開されませんでした。その分、レポーターの感性が試されるとも言えます。

搭載されるパワーユニットはアウトランダーPHEVと同様の2.4リットルエンジンに、前後1基ずつのモーターが組み合わされていますので、システム的にはアウトランダーPHEVと同様と考えていいでしょう。

アウトランダーPHEVは128馬力/199Nmのスペックを持つエンジンに、82馬力/137Nmのフロントモーター、95馬力/195Nmのリヤモーターを組み合わせていますので、エクリプスクロスPHEVもほぼ同等と考えていいでしょう。

●4つの走行モード切り替えで走りが変わる

エクリプスクロスPHEVインパネ
インパネまわりのデザインは大きな変更はない

試乗コースは富士スピードウェイのショートサーキットです。天候はあいにくの雨となりました。このコースの路面は一般道に近いもので、雨が降るとかなり滑りやすくなります。

ピュアエンジンモデルではノーマル、スノー、グラベル(未舗装路)の3つの走行モードが選べる設定ですが、エクリプスクロスPHEVはそれに加えてターマック(舗装路)を追加し4つのモードとされています。

エクリプスクロスPHEV ATセレクター
ATセレクターはPHEV用に変更。レバー左下がセーブ&チャージモードボタン、右下がEVモード選択ボタン。レバー右がドライブモードのセレクト用のシーソースイッチ

スタートの加速感はかなり強力。発進加速Gと同等の指標となる0-5m加速ではランサーエボリューションXと同等、30-50km/hの追い越し加速はエクリプスクロスの1.5リットルエンジン車よりも速い数値を生み出しています。加速感はPHEVの名に恥じないもので、EVらしいスムーズなものです。

エクリプスクロスPHEV走り2
EVモードはもちろん静かでスムーズ。さらにエンジンが始動してもあまり気にならない

雨のサーキットを安心して走れるのはスノーモードです。スノーモードで走ればクルマは安定志向となり、ちょっとラフなステアリング操作をしても、制御デバイスが上手に働いて挙動を乱すことがありません。

しかし、せっかく安全な環境を与えてくれたのですから、ちょっと楽しむこともさせてもらいました。

グラベルモードを選ぶと、ステアリング&アクセル操作によってクルマをアクティブに動かすことができるようになります。

エクリプスクロスPHEV 走り3
コーナーに向かって荷重を前よりに移し、ステアリングを切れば小さな舵角でコーナリングをこなせる

さらにターマックを選べばその走りはグッとスポーティに変化します。ターマックはアウトランダーPHEVにある4WDロックと同じ状態となり、アクセルを踏んだときの強い反応はもちろん、コーナーでグイグイ曲がっていく動きが気持ちいいフィーリングです。

エンジンモデルで感じた「ヒラリヒラリと走る軽快感」は、このPHEVでもまったく失われていません。形はSUVですが、ドライブフィールはかつてのホットハッチのようなのです。

比較車としてアウトランダーPHEVも試乗したのですが、アウトランダーPHEVがゆったりと落ち着きのある走りなのと対照的に、エクリプスクロスPHEVは若々しいドライビングが楽しめます。

エクリプスクロスPHEVタイヤ
タイヤはブリヂストンのエコピア。グリップが高くだけにクルマの動きがアクティブになり、かえってドライブを楽しめた

エクリプスクロスPHEVは燃費を稼ぐためにかなり燃費指向のタイヤが採用されています。移動をメインにした乗り方で、燃費や環境性能を重視するには正しい選択です。

もし、もっとスポーティに走りたいというなら、走り系のグリップの高いタイヤに変更すると安定感を向上できると思います。

ただ、4輪のトラクションとコーナリングフォースをコントロールするS-AWCの性能は少しグリップの低めのタイヤのほうが体感しやすいので、意外とノーマルタイヤでワインディングを走るのは気持ちいいかもしれません。タイヤのグリップアップは「何をしても何も起きない」状態を作り出す可能性があります。

●価格はガソリンが約255万~335万円、PHEV車が385万~450万円

エクリプスクロスPHEVエンジンルーム
エンジンルーム内のレイアウトはアウトランダーPHEVとほぼ同じ
アウトランダーPHEV 充電口
CHAdeMOと普通充電が可能。充電口は運転席側のリヤフェンダーに装備する

EVとしての航続距離はアウトランダーPHEVと同等の性能で、WLTCモードで57.6kmを確保。普通充電と急速充電の両方が可能で、普通充電の場合は約4.5時間で満充電、急速充電の場合は約25分で80%充電となります。

ラゲッジルームに備えたAC100Vコンセントから1500Wの出力が可能、またV2H(ビークル・トゥ・ホーム)機器を使って住宅と接続すれば、エンジンを稼働させた状態で約10日分の電力供給も可能となっています。

エクリプスクロスPHEVフロントシート
フロントシートのホイールド性はよく、スポーツドライビングでのマッチングもいい
エクリプスクロスPHEVリヤシート
リヤシートの居住性もいい。Cピラーはねているが、側方視界もそこそこ確保されている

発売は2020年12月が予定されていて、それまでにPHEVモデルを予約をしたユーザーに対しては、4 種類の「選べるオプションプレゼント」が用意されます。その4つはエクステリアのドレスアップパーツである「ガーニッシュパッケージ」、「前後ドライブレコーダーパッケージ」、アウトドアレジャーでの使い勝手を高める「アウトドアパッケージ」、自宅に充電用AC200V コンセントの設置費用を支援する「充電設備機器設置支援」となっています。

詳細なグレード展開、価格は発表されませんでしたが、ガソリンエンジン車が約255万~335万円、PHEV車が385万~450万円となっています。

リリースの記載にディーゼルの文字はなく、今回のマイナーチェンジでディーゼルエンジンは廃止される可能性が高いでしょう。

(文/諸星陽一・写真/井上 誠)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
続きを見る
閉じる