噂の「ミラーレス」に欠点はあるのか? 公道試乗で粗探しをしてみたら!?【Honda e 試乗記】

■170万画素カメラを使ったミラーレスを標準装備するHonda e。初物ながらシステム完成度は高い!

Honda_e_cms
ドアミラーの代わりとなるカメラミラーシステムは標準装備。ボディ幅の中に収まっているほどコンパクトだ

すでに、いくつものハイブリッドシステムを量産、燃料電池車(FCV)の市販実績も重ねるなど電動化時代のリーディングカンパニーのひとつ、ホンダが欧州の電動化ZEVトレンドに対応して投入するBEV(電気自動車)が話題の「Honda e」です。

全長4m足らずのコンパクトなボディ、ステアリング切れ角を確保するために新規開発されたRWD(後輪駆動)のプラットフォーム、急速充電での性能を追求してパナソニックと共同開発した新型リチウムイオン電池など、そのレトロチックなルックスに反して、中身は最新鋭のBEVとなっています。

そして、CMS(カメラミラーシステム)を標準装備していることもHonda eの特徴です。クルマのミラーレス化と表現されるCMSはドアミラーのかわりに後方をカメラとモニターによって後方を確認しようというもの。他社では量産車への採用実績はありますが、Honda eは全車標準装備となっているのがポイントです。

CMSには空気抵抗を低減するというメリットがあり、それは少しでも空力を良くして航続距離を伸ばしたいBEVには無視できない効果があるからです。

さらにHonda eは「街なかベスト」という取り回しの良さを重要なコンセプトとして掲げています。ドアミラーよりも左右の張り出しが狭くなるCMSは狭い道でも効果を発揮します。なにしろHonda eの場合はボディ幅の中に収めているというほどで、いわゆるミラー to ミラーは車幅(1750mm)とイコールなのです。

軽自動車でもミラー to ミラーが1800mmを超えることは当たり前ですから、実質的な狭い道をクリアする性能ではHonda eのほうが軽自動車より優れているといえるほどなのでした。

Honda_e_inpanel
12.3インチを2つ並べたインフォメーションディスプレイ、8.8インチのメーターディスプレイ、そして左右に6インチのカメラミラーシステム用モニターと、ずらりと並んだインパネは圧巻。カメラミラーシステムはシステムオフでも切れないため降りるときの後方確認も万全だ

取り回しに有利で空力も優秀。さらにスッキリとした外観にもつながるCMSは、しかし「表示にタイムラグがあるのでは?」「画面がチラチラして見づらいのではないか」「画面にピントが合わせづらいのではないか」「降りるときに後方確認できないのでは?」などといった課題を指摘する声もあります。

ホンダのような大きな自動車メーカーがそうした課題に気付かず、量産車にCMSを採用するはずもありません。

ということで、今回Honda eを街なか試乗するときにCMSの粗探しをすることにしてみたのです。

はたして、その結論は「従来のドアミラーより見やすい」というものでした。

Honda_e_ontheroad
走行時には様々な方向から光が入ってきたり、トンネルなど暗いシチュエーションもあったりする。いろいろと試してみたが、大きな欠点は感じられなかった

まず走行中の見え方ですが、インパネ左右に置かれた6インチディスプレイにより視線移動が少なくて済むのはドアミラーに対するアドバンテージ。さらに画面もクリアでくっきりとしていて滲んで見えるようなことはありません。

公道では逆光やサイド光といった状況になることもありますが、そうしたシチュエーションでも画面がテカってしまって見えづらいと感じることは皆無でした。今回は幸い晴れた日の試乗でしたが、雨の日にはもっと見やすさの優位性が高まるという印象です。

さらに特筆ものなのがトンネルなど暗いところでの視認性の良さ。通常のドアミラーは暗いところでは、当たり前ですが鏡に写る景色も暗くなります。しかしCMSは明るさを調整できるので暗いトンネルの中でも後方ははっきりと見えるのです。それでいながら後方を走るクルマのヘッドライトが眩しいと感じることもありませんでした。

かなり考え抜かれた画像処理を瞬間的にしているという印象です。

Honda_e_advance
2020年10月30日に発売開始となるホンダの電気自動車Honda e。写真は上級グレードのAdvanceで、メーカー希望小売価格は495万円。ボディカラーはチャージイエロー

よく心配される、システムオフにするとCMSの電源が落ちてしまいクルマから降りるときに後方確認がしづらいという点については、Honda eの場合はシステムオフにしてもCMSはオンのままで、ドアを開けて乗員が降りるとCMSの画面がオフになるという仕様になっています。

ですから、道路わきに縦列駐車をして降りるときにもCMSで後方確認をすることができるというわけです。

とはいえ、新しいシステムというだけで拒絶反応を示してしまうのも人間の性なので、すべての人がCMSに馴染めるかといえば、どうしてもしっくり来ないという人はいるかもしれません。

ですから「CMSに大きな欠点は見つからない」というのは、あくまで個人的な感想であって、万人が同じように感じるという保証はできません。ちなみに小生の年齢は51歳。年齢なりにピントを合わせるスピードが遅く、近くが見えづらくなっている上での感想ということは最後にお伝えしておきましょう。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
続きを見る
閉じる