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■世界初のリートワーゲンは、排気量264ccのエンジンを搭載したタイヤも車体も木製のバイク
●エンジン付き自転車に始まり、軍事用として技術が進んで戦後に本格的に普及
世界で初めて2輪車(バイク)を作ったのは、ベンツとともに自動車を始めて作ったゴットリープ・ダイムラーでした。その後、バイクは自転車にエンジンを搭載するという自然な形でスタートし、進化しながら戦後に急速に普及しました。
バイクの誕生と戦後の普及の歴史について、解説していきます。
●初めてバイクを作ったのは?
1886年にカール・ベンツと同時期にガソリン自動車を発明したゴットリープ・ダイムラーは、実は自動車よりも先にバイクを作っていました。
ダイムラーが1885年に作ったバイクは「リートワーゲン」と呼ばれた木製で、ライダーの腰の下にガソリンエンジンを搭載していました。
フレームだけでなくホイールとタイヤも木製で現在の2輪車の概念がなかったため、小さな補助輪が両側に付いた正確に言うと2輪+補助2輪車でした。手元のレバーで2段階のギアを選択できる構造で、エンジン排気量264ccで出力は0.5PS、最速速度は12km/h程度でした。
ダイムラーの息子が走行試験を繰り返し、1886年に特許を取得しました。ただし、ダイムラーは自動車の開発に注力したため、ダイムラーによる世界初の2輪車の市販化は実現しませんでした。
●初めて市販化されたバイクは?
世界初の市販バイクは、1894年のドイツ「ヒルデブラント&ヴォルフミュラー(H&W)」でした。
排気量1489ccの並列2気筒エンジン、出力は0.5PSで最高速は45km/h、生産台数は3000台を超えたと言われています。
水冷エンジンがフレームの下に搭載され、蒸気機関車の車輪を回転させる構造と同じように直接長いコンロッドでリアホイールを駆動させました。
ダイムラーの「リートワーゲン」からわずか10年足らずでしたが、スタイルは現在のスーパースポーツバイクに近く、大ヒットしました。水冷エンジンで始動用のゴムベルトが装備されているなど、現在のバイクに近いコンセプトでした。
日本へは1896年に輸入されましたが、第一次世界大戦の勃発によって製造中止になりました。
●戦中・戦後のバイク普及
20世紀に入ると世界中でバイクメーカーが乱立して、米国では1901年にウィリアム・ハーレーとアーサー・ダビッドソンによって設立されたハーレーダビッドソンが登場しました。ハーレーダビッドソンは、1903年に単気筒エンジン(405cc)を自転車に装着したモペッドタイプのモデルを発売しました。
当時は、まだ部品精度が十分でないため、速度を上げるとハンドルがブレ、始動は押しがけ式でした。またエンジンの燃料供給装置は、布製の芯にガソリンを浸み込ませて空気が通過することでガソリンが供給されるサーフェイス・キャブレター方式で、制御性は良くありませんでした。
皮肉なことに第二次世界大戦によって、バイクは大きな進化を遂げました。偵察用やサイドカー付きで軍事活用するために、性能や信頼性が生死にかかわるためです。現在の負圧ベンチュリー式のキャブレター燃料供給方式やマグネット点火系システムが一般的となり、バイク技術が大きく進化したのです。
戦後、技術進化とともに現在の本格的なバイクが登場し、簡便な移動手段として世界的なバイクブームが起こり、米国や英国、ドイツ、イタリア、フランスそれぞれの国で数百以上のバイクメーカーが誕生しては、また消えていきました。
ガソリンエンジンの発明を機に、20世紀から戦中にかけて自転車にエンジンを搭載したモペッドタイプがバイクの始まりです。戦後、簡便な移動手段や業務用として急速に普及して、現在のスクーターやオンロード、オフロードタイプと用途に応じてさまざまなタイプのバイクが登場しました。
(Mr.ソラン)