ダイムラーの歩み:メルセデスベンツをブランド名とするドイツの高級車メーカー【自動車用語辞典:海外の自動車メーカー編】

■起源は、カール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーが別々に設立

●一時はクライスラー社を合併してダイムラー・クライスラーに、現在は手放してダイムラー社

メルセデスベンツは、ダイムラー社が所有する乗用車および商用車のブランドです。ダイムラー社は、2019年販売台数では世界11位ですが、売上高は第3 位です。高価格帯のメルセデスベンツが、売り上げを支えて大きく貢献しています。

高級車メーカーのダイムラー社と高級車ブランドのメルセデスベンツのこれまでの歩みについて、解説していきます。

●会社概要と業績

・会社名:ダイムラーAG

・代表取締役会長:オラ・ケレニウス

・創立:1926年

・資本金(2018.12現在):30億7000万ユーロ

・従業員数(2018.12現在):連結29万8683人

・販売台数:約334万台(2019.1~2019.12)

●起源

カール・ベンツが設立したベンツ社と、ゴットリープ・ダイムラーが設立したダイムラー社が1926年に合併して誕生したのがダイムラーベンツです。合併後に販売されたクルマには、メルセデスベンツのブランド名が冠されています。

合併直後は、ベンツ社のクルマを販売していましたが、すぐにポルシェが設計したニューモデルを投入しました。その後は、高級車とスポーツカーを中心に生産を続けましたが、第二次世界大戦の敗戦によって、規模は縮小されました。

●メーカーとしての歩み

大戦後、4気筒の170シリーズで乗用車の生産を再開したダイムラー・ベンツは、1951年に得意とする6気筒モデル(220/300シリーズ)を復活。このモデルの登場によって、高品質で高性能なクルマ、高級車をつくるメーカーとして歩み始めました。

ダイムラーの歴史
1950年、170Sカブリオレ

現在も続く安全性に対する意識の高さは、ダイムラーベンツの創業時から受け継がれ、1953年に発売された180シリーズには衝撃吸収ボディが採用されています。このように1950年代には、品質の高さと安全性に優れた高級車としての確固たる地位を確立しました。

1998年に米国クライスラーと提携して、ダイムラークライスラーに社名を変更。しかし、2007年には経営不振になったクライスラーを手放し、現在のダイムラーに改称しました。

●往年の代表的なモデル

当初は積極的にレースに参戦し、Sシリーズなどレーシングカーの開発に取り組みました。一方で1930年には、超高級車の770K「グロッサーメルセデス」を発売し、日本の皇室など世界中のVIPが愛用。また第二次世界大戦中は、戦闘機のエンジンや軍事用車両などの生産を行い、国策を支援しました。

大戦後は、4気筒エンジンの170シリーズや6気筒エンジン220/300シリーズで復興を果たしました。

・1954年、ガルウィングドアで有名なスポーツカー300SLのクーペが登場

ダイムラーの歴史
1955年、300SL

・1957年、300SLのロードスターがデビュー

●最近の代表的モデル

1970年代に入ると、1971年に3代目メルセデスベンツSL、翌年にはSクラス、1980年代には名車と呼ばれるモデルが続々と誕生しました。

・1979年メルセデスベンツW126(Sクラス)、1982年W201(190クラス)、1985年W124(ミディアム/Eクラス)が発売

ダイムラーの歴史
1982年、190E

・1989年、世界一安全なオープンカーR129型SLが登場

ダイムラーの歴史
1989年、500SL

・1993年、190シリーズに代わってCクラス発売

・1996年、電動ハードトップのSLK発売

・1997年、FFコンパクトのAクラス発売

ダイムラーの歴史
1997年、A180

2000年以降も、Bクラス、Rクラス、CLSクラスなど次々と新型モデルを投入し、ラインナップの充実を図っています。

・2013年、Sクラスで直列6気筒が復活、ISG(スターター・モーター/ジェネレーター)で燃費改善

・2018年、SUVのGクラスがモデルチェンジ、シャークノーズの3代目CLSが発売

ダイムラーの歴史
2018年、Gクラス

・2019年、メルセデスブランド初の電気自動車EVのEQCを発売

ダイムラーの歴史
2019年、EQC400 4MATIC;

メルセデスベンツは、早くから高品質と安全性、高質感を有する高級車として圧倒的な支持を得て、今日のブランド力を築き上げました。

最近は、環境対応技術にも積極的に取り組み、EVやPHEV、さらにマイルドHEVモデルなど電動車を投入し始めています。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
続きを見る
閉じる