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■EVバッテリーから電力を電力系統へ供給するV2G、家庭へ供給するV2H
●自動車メーカーは、EVのバッテリーを活用するための実証試験を各地で実施中
EVとPHEVの普及に伴い、車載している大容量のバッテリーを走行のためだけでなく、バッテリーから電力系統(V2G)や住宅(V2H)へ供給、あるいはその逆で電力系統からEV(G2V)へ電力を供給して有効活用しようとする取り組みが行われています。
EVの車載バッテリーの3つの活用方法と各社の取り組み状況について、解説していきます。
●V2G、V2H、V2Vとは
EVには、20~40kWhの大容量バッテリーが搭載されています。このバッテリーを走行のために使う時間は1日のうち僅かなので、走行で使わないときに電力系統や家庭の電力の安定化に活用しようとする取り組みが行われています。
その活用法として代表的なのが、V2G、V2H、G2Vです。
・V2G(Vehicle to Grid)
V2Gは、EVやPHEVのバッテリーから電力系統へ電力を供給するシステムです。
必要に応じて車載バッテリーから電力系統へ電力を供給して、電力系統の周波数調整や需要調整などを行い、電力系統の安定化を図ります。
真夏の電力ピーク時に、EVバッテリーから電力系統に給電するといった使い方ができます。
・V2H(Vehicle to Home)
V2Hは、EVやPHEVのバッテリーから家庭へ電力を供給するシステムです。
災害時の停電の際に、EVに充電しておいたバッテリー電力を家庭へ供給できます。また、電気料金の安い夜間にEVバッテリーに充電しておいて、電気料金の高い昼間にバッテリー電力を使用することで電気の節約になります。
・G2V(Grid to Vehicle)
EVへの単純な充電だけでなく、太陽光発電や風力発電からの余剰電力のバッファーとして、EVのバッテリー電力を使います。
太陽光発電や風力発電では発電制御に限界があるため、電力系統が不安定になる場合があります。EVのバッテリーへの充電を制御して、需給バランスをとって系統の不安定化を抑制します。
●自動車メーカーの動向
トヨタ、ホンダ、日産、三菱は、EVのバッテリーを活用するための活動に積極的に取り組んでいます。
・トヨタ
トヨタは、経産省「次世代エネルギー・社会システム実証事業」に参画して、豊田市「低炭素社会システム実証プロジェクト」を行っています。EVやPHEVに搭載されたバッテリーを活用したV2Hシステムの開発と実証試験を約10世帯の住宅と連携して実施しています。
実証車両を実証住宅に配備して、電力マネージメントのメリットと災害時などのV2Hの有効性について検証しています。
・日産
トヨタと同様に経産省「次世代エネルギー・社会システム実証事業」に参画して、横浜市のプロジェクトで充放電システムやEVを利用したデマンドレスポンスの検証実験を実施しています。
充放電システムでは、パワーコンデショナーやコントローラーなどのシステムを住宅に設置して検証実験を行っています。デマンドレスポンスでは、住宅の電力需要に対してEVが有効であることを検証しています。
・ホンダ
さいたま市が推進する「E-KIZUNA Project」の一環として、エネルギー需給を総合的にコントロールできる「ホンダスマートホームシステム(HSHS)」を導入した住宅の実証試験を行っています。
停電時や災害時でも自宅分のエネルギーを確保するために、EVやPHEVから家庭に電力を供給するバックアップ機能の検証などを行っています。
・三菱
スマートグリッド実証実験設備「M-tech Labo」によって、出力が不安定な再生可能エネルギーや夜間電力をバッテリーに充電することで、工場やオフィスの電力需要がピークを迎える時間帯に供給し、電力需要の平準化を実現することを目的としています。
太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーは環境対応に優れた技術ですが、コスト高以外の大きな課題は自然まかせで変動が大きく、電力の需給バランスを取ることが難しいことです。
これを解決して再生可能エネルギーを活用するためには、EVやPHEVの普及率を上げてその搭載バッテリーやリサイクルバッテリーを利用するスマートグリッドやV2G、V2H、V2Vが有効です。
(Mr.ソラン)