売れる軽自動車はここが凄い! 軽トールワゴンは運転しやすさと余裕の室内が魅力

■背が高いけど乗りやすいのが大きな魅力

軽トールワゴンは運転しやすさと余裕の室内が魅力
スズキ・ワゴンR(右)と日産・デイズなど軽トールワゴンも根強い人気

軽自動車では、ホンダの「N-BOX」やダイハツの「タント」などの軽スーパーハイトワゴンが人気です。一方で、日産の「デイズ」やスズキの「ワゴンR」、ダイハツの「ムーヴ」といった軽トールワゴンというジャンルも存在します。

軽トールワゴンも、各メーカーから人気モデルが数多くラインアップされていますし、新車の販売台数でも軽スーパーハイトワゴンに次いで常に上位を占めるほどの根強い人気を誇ります。

ここでは、そんな軽トールワゴンの魅力について紹介してみましょう(軽トールワゴンは軽ハイトワゴンという呼称もありますが、ここでは軽トールワゴンで統一します)。

●新車販売台数の上位モデルが多い

業界団体の全軽自協(全国軽自動車協会連合会)の統計によると、2019年度(2019年4月〜2010年3月)軽自動車の新車販売台数ランキングでは、1位ホンダ・N-BOX(24万7707台)、2位ダイハツ・タント(17万2679台)、3位スズキ・スペーシア(15万9799台)と軽スーパーハイトワゴンが上位を独占しています。

一方、同じランキングで、軽トールワゴンは4位日産・デイズ(15万4881台)、5位ダイハツ・ムーヴ(11万8675台)、7位スズキ・ワゴンR(7万8582台)などがランクイン(6位はセダンタイプのダイハツ・ミラで8万5288台)。軽スーパーハイトワゴンに迫る人気を誇っているのです。

では、軽トールワゴンは、軽スーパーハイトワゴンとどこが違うのでしょうか。

N-BOXやタント、スペーシアなどの軽スーパーハイトワゴンは、分かりやすく言うと車高が1700mmを超える車体を持ち、後席スライドドアが付いたモデルのことを指します。一方で、軽トールワゴンは車高が1600mm以上で、ドアは一般的なヒンジ式になっていることが特徴です。

軽トールワゴンは運転しやすさと余裕の室内が魅力
日産・デイズ ハイウェイスター

軽スーパーハイトワゴンは、余裕ある全高などによる広い室内空間と、スライドドアという快適装備を備えているのが高い人気を誇る大きな要因。ただし車高が高いため、高速走行時などに風の抵抗を受けやすく、そういった場合にやや運転がしづらかったり、直進安定性に多少不安がある時もあります。

対する軽トールワゴンも広い室内を確保するため、全高は1600mm以上ありますが、軽スーパーハイトワゴンほどの高さはなく、風の抵抗を受けにくい流線型のボディデザインを採用しています。N-BOXなど軽スーパーハイトワゴンのボディが高さを出すためにかなりスクエアな形状となっている点との大きな違いです。

そのため、軽トールワゴンの方が高速走行時の直進安定性などは良好だと言えます。

●運転のしやすさも魅力

軽トールワゴンの元祖といえば、スズキの「ワゴンR」でしょう。1993年に発売された初代モデルから高い人気を誇り、今の主流といえる「背が高く室内空間が広い軽自動車」という方程式を作ったパイオニアともいえる存在です。

軽トールワゴンは運転しやすさと余裕の室内が魅力
スズキ・ワゴンR

2017年に発売された現行モデルは、ボディサイズが全長3395mm×全幅1475mm×全高1650mm。全高こそ軽スーパーハイトワゴンほど高くありませんが、室内高は1265mm、室内長も2450mmを確保。また、後席シートは左右独立してスライドが可能なため、乗る人の体格に合わせて足元のスペースを調整することができます。

そのため、大人4人でもゆったりと足を伸ばして座ることができるのが魅力。また、前席はヒップポイント地上高が635mmと低いため乗り降りしやすく、フラットなベンチシートで運転席から助手席への移動もスムーズにできます。

軽トールワゴンは運転しやすさと余裕の室内が魅力
ワゴンRの室内

さらに、ISG(モーター機能付発電機)と呼ばれるハイブリッドシステムを搭載したグレードなら、JC08モード燃費で31.0km/Lを実現。ワゴンタイプの軽自動車ではトップレベルの燃費性能を誇ります。

ダイハツの「ムーヴ」もワゴンRの対抗馬として発売された初代モデルの登場が1995年ですから、息が長いモデルです。

軽トールワゴンは運転しやすさと余裕の室内が魅力
ダイハツ・ムーヴ

2014年に発売された現行モデルでは、軽量高剛性ボディ骨格構造や足まわりの改良などにより、運転のしやすさを向上。エンジンには660cc・3気筒の自然吸気とターボを用意し、自然吸気の2WD車ではJC08モード燃費は31.0km/Lと、ワゴンRのハイブリッド車と同等の燃費性能を誇っています。

室内も、長さ2080mm×幅1320mm×高さ1280mmと、同じく大人4人が乗ってもゆとりあるスペースを実現。前後ドアは、いずれも約90度まで2段階で開く方式を採用し、乗り降りや大きな荷物のつみ降ろしがとてもスムーズにできます。また、駐車場などで、子どもが勢いよくドアを開けた場合などでも、隣のクルマにドアを当ててしまうことを防ぐ効果もあります。

このように、ワゴンRやムーヴは、免許を取ったばかりの初心者でも運転がしやすい点や、子育て世代などのファミリー層でも使いやすい利便性などが人気の秘密なのです。

●先進の安全装備が充実

日産の「デイズ」と、その兄弟車である三菱・「ekワゴン/ekクロス」も人気が高い軽トールワゴンです。

2019年に発売された現行モデルでは、デイズとekワゴンが親しみやすいデザイン、ekクロスがアウトドアを意識したデザインを採用していますが、基本的な構成は同じ。また、デイズには、スポーティ仕様のデイズ・ハイウェイスターもラインアップしています。

軽トールワゴンは運転しやすさと余裕の室内が魅力
日産・デイズ

エンジンには660cc・3気筒の自然吸気とターボを用意。また、デイズ・ハイウェイスターとekクロスには2.0KWモーターを搭載したマイルドハイブリッド車も設定。これら4モデルのJC08モード燃費は、22.8〜29.8km/Lを実現しています。

軽トールワゴンは運転しやすさと余裕の室内が魅力
三菱・ekクロス

室内もゆとりの空間を確保しているのは同様で、いずれのモデルもサイズは長さ2065mm×幅1340mm×高さ1270mm。特に、後席は大人が足を組んで座れる広さをもち、フロア部に段差がないため足元に窮屈さを感じないゆったりしたスペースを実現しています。

注目は、先進の安全運転支援システム。日産はプロパイロット、三菱はマイパイロットと呼んでいる高速道路同一車線運転支援技術を採用し、高速道路での渋滞走行やロングドライブ時に、レーダーが先行車などを感知してアクセルやブレーキ、ステアリング操作を支援してくれる機能を持っています。

また、アクセル踏み間違い時の衝突被害軽減ブレーキや、駐車時に周囲の状況を画像で確認できるアラウンドビューモニターなども採用します。

さらに、2020年8月には各モデルが一部改良。新に採用したミリ派レーダーなどにより、標識検知機能や前方衝突予測警報、先行車発進通知、ふらつき警報といった機能が追加され、安全装備がより充実されています。

軽トールワゴンは運転しやすさと余裕の室内が魅力
三菱・ekワゴン

ちなみに、前述のワゴンRやムーヴにも、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時の加速抑制装置など、安全運転支援システムを採用。ワゴンRにはスズキ・セーフティサポート、ムーヴにはスマートアシストⅢと呼ばれる装備が搭載されています(いずれもグレード設定)。

このように、軽トールワゴンは、車内の快適性はもちろん、運転のしやすさや先進技術による安全性などが大きな特徴です。室内の広さやスライドドアによる利便性の高さでは軽スーパーハイトワゴンに軍配が上がりますが、トータルバランスで優れる点が軽トールワゴンの大きな魅力だといえるでしょう。

(文:平塚直樹/写真:日産自動車、三菱自動車、本田技研工業、ダイハツ工業、スズキ)

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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