目次
■背が高くスライドドア付きで、ミニバンより乗りやすい
近年、軽自動車のスーパーハイトワゴンやトールワゴンが売上好調ですが、コンパクトカーにも背が高いワゴンタイプで根強い人気を誇るモデルがあります。それが、トヨタのルーミー/タンクやスズキ・ソリオです。
最近、コンパクトカーでは新型のSUVが次々と登場し話題になっていますが、地味ながら着実に売上をキープしているこれらコンパクトなトールワゴンについて紹介します。
●常に売上上位を占める隠れた人気モデル
業界団体の自販連(日本自動車販売協会連合会)がまとめた2019年度(2019年4月〜2020年3月)の新車販売台数ランキングによると、トヨタのルーミーは5位(9万2890台)。いわゆるミニバンで最上位がトヨタのヴォクシーで9位(8万1949台)なので、ミニバンよりも売れていることになります。
また、ルーミーの兄弟車タンクも同じく2019年度のランキングで11位(7万5499台)、スズキのソリオが21位(4万4408台)で、いずれもトップ50にランクインしています。
こういった傾向は、コロナ禍により新車販売台数に影響が出た2020年上半期(2020年1月〜6月)も同様です。
自販連が調べた新車販売台数ランキングでは、ルーミーが8位(3万7622台)で13位のヴォクシー(3万3818台)より上位。また、タンクが14位(2万8458台)、ソリオが17位(1万9464台)と、コンパクトトールワゴンが依然として根強い人気を誇っていることを示しています。
●取り回しが良く室内が広いルーミー
コンパクトトールワゴンで最も売れているルーミーは、2016年に発売されたダイハツ・トールのOEM車で、兄弟車には同じトヨタのタンクやスバルのジャスティがあります。
ルーミーのボディサイズは、全長3700-3725mm×全幅1670mm×全高1735mm。コンパクトカーのミニバンとして人気があるシエンタが全長4260mm×全幅1695mm×全高1675mmですから、ルーミーの方が背は高いですが、ひとまわり小さいサイズとなっています。
また、たとえばヴォクシーのボディサイズは全長4710mm×全幅1735mm×全高1870-1825mmですから、一般的なミニバンに比べると非常にコンパクトなボディです。しかも、最小回転半径が4.6mと、免許取り立ての初心者から女性などでも運転しやすい取り回しの良さを実現しています。
一方で、室内は全長2180mm×全幅1480mm×全高1355mmと広々。様々なシートアレンジが可能で、後席は最大240mmのスライドができるため、最前方までスライドさせると、5人乗車で荷室に機内持ち込み用スーツケース4個の積載が可能。
また、後席を70度まで倒せて車中泊も可能な空間を作れたり、乗り降りが楽なパワースライドドアを標準装備するなど、使い勝手の良さが自慢です。
荷室は、1077mmという広いバックドア開口幅と527mmの低い荷室フロア高により、荷物の積み卸しが非常に楽。多機能デッキボードも装備し、2列目シートを倒しボードを反転させ裏面の防汚シートを展開すると、室内を汚さずに自転車などを積むこともできます。
安全装備でも、最も安いXを除くグレードに、衝突回避支援システム「スマートアシストⅡ」を搭載。「衝突警報機能(対車両・対歩行者)」「衝突回避支援ブレーキ機能(対車両)」「誤発進抑制制御機能(前方・後方)」「車線逸脱警報機能」「先行車発進お知らせ機能」の5つの機能でドライバーをサポートしてくれます。
●先駆け的な存在のソリオ
一方、2011年に登場したソリオは、コンパクトカーのトールワゴンとして先駆け的な存在です。
ボディサイズは全長3710mm×全幅1625mm×全長1745mmで、こちらも非常にコンパクト。同じく室内が広く、サイズは全長2515mm×全幅1420mm×全高1360mm、特に室内高はルーミーより高い設定になっています。
後席のスライド量は165mmで、ルーミーの240mmほどではありませんが、大人でも後席にゆったり座れる空間を確保。また、前後のシートを倒してフルフラットにすれば車中泊が可能だったり、助手席側の前と後の席をどちらも倒せば長物も積載できるなど、こちらも様々なシートアレンジができます。
また、安全装備も、衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、ハイビームアシストなどを搭載した「スズキセーフティサポート」を用意。HYBRID SZ、HYBRID SX、HYBRID MZといったグレードに標準装備するほか、HYBRID MXとGにもメーカーオプションで装着が可能です。
●燃費性能や価格面も秀逸
ソリオは、燃費の良さも注目点のひとつ。パワートレインには、1.2L直列4気筒エンジンのガソリン車のほかに、同じエンジンに2.3KW(3.1ps)モーターを組み合わせたマイルドハイブリッド車、1.2Lエンジンと10KW(13.6ps)モーター搭載のハイブリッド車といった3タイプを用意しています。
特にハイブリッド車はJC08モードで32.0km/Lという優れた燃費性能を発揮。マイルドハイブリッド車でもJC08モードで27.8km/L、ガソリン車ではJC08モードで22km/L(4WD)〜27.8km/L(2WD)を実現しています。
ちなみに、ルーミーは1.0Lの3気筒エンジン(69ps)と1.0Lの3気筒ターボエンジン(98ps)といった2タイプのガソリン車を設定。JC08モードの燃費は2WD車で21.8〜24.6km/L、4WD車が22.0lm/L。特に、燃費を気にする人にはソリオのハイブリッド車がおすすめです。
また、価格が比較的リーズナブルなのも魅力です。たとえば、ルーミー/タンクの価格(税込)は、149万500円〜204万6000円。ソリオの価格(税込)は148万6100円〜227万2600円となっています。
ミニバンでは、たとえばヴォクシーの価格(税込)が281万3800円〜344万3000円ですから、コンパクトトールワゴンはかなり安い印象がありますね。
ルーミー/タンクやソリオといったコンパクトのトールワゴンは、小柄な車体が日本の道路事情などにマッチしていて、ミニバンに比べ誰にでも乗りやすい点と、広い室内などによる使い勝手の良さが人気の秘密です。
また、比較的手が出しやすい価格設定になっていることも、根強い人気を持つ理由のひとつだといえるでしょう。
(文:平塚直樹/写真:トヨタ自動車、スズキ)