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■自分の手足をあやつるような操縦性
ジクサー150にまたがって一番に感じたのは「意外に腰高」ということです。
戦闘的なスタイリングから、ガチガチのスポーツバイクをイメージしていたからかもしれません。しかし乗り出してみると、腰高ポジションが良い方向に作用しているのか、車格の割にしっとりと落ち着いた操縦性。いっぽう乗り心地はいかにもスポーツバイクらしくソリッドで、ふわついたところはありません。
ステアリングはきちんとニュートラルで、曲げたいだけ素直に曲がり、いったん曲がればぴたりと安定します。突っ込みからコーナリング中、そして立ち上がりに至るまで、まるで自分の手足を扱うように自然に走り抜けることができます。
■ふだん使いがキモチいいサスペンション
ジクサー150のサスペンションの感触はナチュラルでリニアです。街なかの足として使いやすく、ちょっとしたツーリングにも行け、その気になれば峠も楽しめる万能選手のバランス。基本設計の良さが光るサスペンションです。
サスの挙動や前後タイヤの荷重配分をしっかり感じ取り、ライディングの基本を身に着けたいビギナーライダーには、ジクサー150の素直なサスペンションは最適の選択といえそうです。
■タッチのいいブレーキとABS
フロントブレーキには目立ったクセがなく、ストレートな効き味です。もちろんストッピング・パワーに不足はありません。フロントブレーキ・レバーは、スポーツバイクにしてはやや甘めの柔らかい握りごこち。タウンユースやツーリングでは、コントロールしやすく疲れないレバーだと感じました。
ジクサー150のフロントに採用されているABSは、介入時にも特別な動作感がなく、ほとんどABSを意識させません。パニックのとき、思い切りレバーを握り込みさえすれば、自然としっかり止まってくれる頼もしいブレーキです。
といっても、浮き砂のようなスリッピーな路面でいきなり急制動をかければ、やはり一瞬滑ることはありますし、コーナリング中のブレーキには対応していない点にも注意が必要。ABSを過信せず、パニックを予防する安全運転を心がけたいですね。
■すべてのライダーに愛される小さな本格派
もし普通(中型)二輪免許をとったばかりのビギナーライダーが、どのバイクに乗ろうかと迷っているなら、ジクサー150をお薦めしたいと思います。本格的なバイクの要素をすべて備えていながら、シンプルで軽く扱いやすいマシンだからです。
ていねいに作り込まれたオーソドックスなバイクで身に着けたライディングは、将来どんなハイパワーマシンに乗っても必ず役立つ資産になるでしょう。またバイクライフをスタートさせるには、マシンだけでなく、ヘルメットやウエアなどの装備が必要です。ジクサー150の手ごろなプライスは、バイクと共に暮らす毎日を夢見る若いライダーが最初の一歩を踏み出すとき、きっと頼もしい味方になってくれるはずです。
そしてジクサー150は、経験豊かな本物のベテランライダーにも同じようにお薦めしたいバイクです。最新デバイスによって緻密に制御され、あり余るハイパワーを限界まで引き出せる高性能マシンを乗り継ぎ、バイクはもう味わい尽くしたからそろそろ降りようかと思っている人がいたら、その前にぜひ一度ジクサー150に乗ってみてください。
遠い青春時代、おっかなびっくり道路を走り出したばかりのあの頃の素朴なバイクの感動がよみがえり、せっかくだからもうあと10年バイクで走り続けようと考え直すライダーだって、きっとたくさんいるでしょうから。
【スズキ ジクサー150主要諸元】
全長×全幅×全高:2020mm×800mm×1035mm
シート高:795mm
エンジン種類:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
総排気量:154cc
最高出力/最大トルク:14ps/1.4kgm
燃料タンク容量:12.0ℓ
タイヤ(前・後):100/80-17・140/60-17
ブレーキ:前後油圧式シングルディスクブレーキ
メーカー希望小売価格:35万2千円(税込)
(文:村上菜つみ 写真:高橋克也)
【関連リンク】
ジクサー150 Official Site
https://www1.suzuki.co.jp/motor/lineup/gsx150rlm0/?page=top
村上菜つみさんがスズキ・ジクサー150で出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2020年8月号(7月6日発売)に掲載されています。