損害賠償とは?相手に損害を与えると金銭による賠償責任が発生【自動車用語辞典:交通事故編】

■金銭による賠償は民法と自賠法(自動車損害賠償法)で規定

●被害者への賠償を保証するため、すべてのクルマに自賠責保険への加入を義務化

交通事故によって相手に損害を与えた場合、被害者に対して金銭による賠償をすることが、民法と自賠法(自動車損害賠償法)で定められています。損害賠償の範囲は、物損か人身事故かなどの発生状況や損害の程度などよって、大きく異なります。

損害賠償に関わる法律や賠償の範囲などについて、解説していきます。

●損害賠償を定めた民法

民法第709条に、「故意または過失によって他人の権利、または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と明記されています。

ただし、損害賠償を受けるためには、以下の4点を立証しなければいけません。

・加害者側に故意または過失があること

・加害者の行為が違法であること

・事故と損害の因果関係

・損害が生じたこと

自動車事故では、加害者の故意や過失といった曖昧な面を立証するのは難しいため、民法だけで損害賠償を請求するのは非常にハードルが高かったというのが実状でした。

被害者の泣き寝入りを極力なくすため、1955年に被害者の救済を目的に民法の特別法として「自賠法(自動車損害賠償保障法)」が制定され、それに基づいてすべてのクルマは自賠責保険に加入しなければならないという自動車損害賠償責任保険制度が確立されました。

●被害者救済のための自賠法

自賠法では、「生命または身体が害された場合の交通(人身)事故の損害賠償は自賠法が民法に優先する」ことが、明記されています。

また、立証責任を被害者でなく加害者に課して、以下の3つの要件すべてを立証しなければ、加害者が損害賠償の責任を負うと定めています。

・運行供用者と運転者が無過失であったこと

・被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと

・自動車の構造上の欠陥または障害がなかったこと

さらに、自賠責保険(自動車損害賠償保険)の契約を結んでない自動車は、運行の用に供してはならないこと、自動車1台ごとの自賠責保険の契約締結を義務付けています。

●請求できる3つの損害賠償

賠償の対象となる交通事故の損害には、積極損害と消極損害、慰謝料の3つがあります。

・積極損害

交通事故に遭わなければ、被害者が支払う必要がなかった出費です。

人身事故では入院費や治療費、病院への交通費、葬儀費用が、物損事故では修理費や代車使用料、車両買い替え費用が相当します。

・消極損害

事故に遭うことによって、本来であれば得ることができた収入の得られなかった分の損害です。

人身事故では休業損害と後遺障害または死亡による逸失利益が、物損事故では休業損害のみが相当します。

・慰謝料

精神的、肉体的な苦痛に対して支払われる賠償金で、被害者が死亡したときには遺族に対しても支払われます。

障害慰謝料や後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。

損害賠償額の算定基準には、自賠責保険の支払い基準、任意保険の支払い基準、弁護士会による基準があり、賠償額が最も高く算出される弁護士会基準の損害賠償請求額を目標金額として、加害者と交渉します。

自賠責保険基準 < 任意保険基準 < 弁護士会基準の慰謝料

交通事故例
交通事故例
事故種類別の損害賠償項目
事故種類別の損害賠償項目

交通事故を起こした場合、一般的には加害者と被害者の保険会社が負担割合や示談金額を交渉するので、加害者と被害者が直接協議することはほとんどありません。

ただし、保険会社がすべてフォローしてくれる訳ではないので、何をどこまで請求できるかなどの基本的な知識は必要です。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

Mr. ソラン 近影

Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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