■V8エンジン搭載で2号機を製作
こんな劇的な復活劇があるでしょうか?
7月24日に滋賀県・奥伊吹モーターパークで、2020年D1GPシリーズの開幕戦が行われました。新型コロナウイルスの影響で、通常より約4ヵ月遅い開幕です。
ここにTeam TOYOTIRES DRIFT-1は川畑選手のマシンとしてGRスープラの2号機を持ち込みました。川畑選手は昨年GRスープラを投入しましたがシリーズは12位。川畑選手の実績からいえば物足りない結果です。
じつは昨年のGRスープラは開幕にまにあわせるために突貫工事で作られ、妥協した部分も少なからずありました。その後実戦の中で課題も見えてきたのですが、シーズン中にはじっくり対策する時間がとれませんでした。
そこでシーズンオフに入ったわけですが、それならばもうイチから作ってしまおうということで、2号機が製作されたのです。
2号機は、非常に緻密なボディ、シャシーのチューンアップが行われ、エンジンも凝りに凝ったツインターボのレイアウトとなりました。
開幕が遅れたこともあってテストもじっくり行うことができ、昨シーズンを通して悩まされたステアリング系の不具合も解消され、トラブルの不安もない状態で開幕戦に臨むことができたのです。
なお、Team TOYOTIRES DRIFTは、GRスープラの川畑選手、180SXの藤野選手、86のポン選手の3台体制ですが、新型コロナウイルスの影響でポン選手が来日できず、今大会は欠場となってしまいました。
3本あった本番前の走行では、初めてのコースということもあり、距離合わせや減衰力、スタビライザー、タイヤの空気圧など、車両の細かいセッティングを行いました。天候が変わりやすく、本番の路面コンディションはわかりませんが、この時点での仕上がりは上々です。
昨年後半はやや自信喪失ぎみだった川畑選手も声のトーンが明るく、順調に走行できていることがうかがえました。
そして単走本番、川畑選手は1本めから素早い振り出しと大きな角度、安定した姿勢を見せて92.9点という高得点を獲得しました。特に88.95km/hという進入速度はウエット路面ではピカイチで、追走での強みになることが期待できました。
同じくTeam TOYOTIRES DRIFT-1の藤野選手は、ラインどりに苦労していたものの、ウエット路面になる前に走れた幸運もあって94.44点をとり、揃って追走トーナメント進出を決めました。
追走トーナメント。川畑選手はベスト16は対戦相手の田中(省)選手のミス、ベスト8は昨年度チャンピオンの横井選手のマシントラブルによって勝利しました。
藤野選手もベスト16は松井選手のマシントラブル、そしてベスト8ではきれいな追走を見せて勝利。準決勝で川畑選手と藤野選手が対戦しました。
1本めは後追いの藤野選手が寄せきれませんでしたが、川畑選手が指定ゾーンを通過できず藤野選手アドバンテージ。しかし2本めに川畑選手は、飛び込みから藤野選手に寄せてきれいにドリフトを合わせ逆転勝利。決勝進出は川畑選手となりました。
決勝。川畑選手の対戦相手は日比野選手です。1本めは先行の日比野選手が、95点というウエット路面としては驚異的な走りを見せましたが、後追いの川畑選手は飛び込みの振り出しを遅らせて距離を詰め、急激に角度をつけて減速すると、やや苦しいラインになりながらも失速することなく日比野選手に近い距離を保って食らいつき、アドバンテージを獲得します。
2本めは加速力で川畑選手が上まわり、日比野選手との差を広げてコーナーに飛び込みます。日比野選手もインフィールドで距離を縮めてきましたがやや失速ぎみになった場面もあってアドバンテージはとれず、川畑選手がGRスープラ2号機のデビューウィンを決めました。
優勝した川畑選手は
「スープラの2号機になってドリフトの幅が広がった。角度もつくし、ある程度のラインの自由度もきくようになって、そういったところは、ボディー作りのところから始まって、各パーツをつける重量バランスであったりとかセッティングノウハウであったりとかそういうところがうまく噛み合ったのかなあと思います」
と語っています。
また、藤野選手は3位に入り
「(準決勝の後追いは)自分がテンパってミスをしてしまい、ついていけなかった状態で、先行のときは、川畑選手が『藤野だから大丈夫だろ』みたいな感じでバシッと来たんで、『これは負けたな』という感じでした。でもすごく楽しんで走れたのでよかったと思っています」
とのコメントでした。
D1GP次戦は第2戦と第3戦デュアルファイナルズ。8月22日・23日に、福島県・エビスサーキットで開催されます。
(文:まめ蔵/写真:D1GP)