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■世界的な地球温暖化(CO2低減)対策のため、パワートレイン技術の多様化が進む
●欧州ではディーゼル車、日本ではHEVが市場を開発
21世紀になると、石油枯渇や地球温暖化問題がクローズアップされ、クルマに対する環境対応への社会的要求が一層高まりました。燃費向上と排ガス低減のため、ガソリン車に加えてディーゼル車や電動車などさまざまなパワートレイン技術の競合が始まりました。
環境対応技術が最大の課題となった2000年代のクルマと自動車産業について、解説していきます。
●多様化したパワートレイン
2000年に入ると、世界中で地球環境問題がクローズアップされ、燃費規制や排ガス規制の強化が検討されました。メーカーは、ガソリンエンジンの低燃費化だけでなく、ディーゼルエンジンや電動化技術にも着手し、クルマの用途や仕向け地などでパワートレインを使い分けました。
1990年後半に登場したガソリン直噴エンジンのリーンバーンは、耐久信頼性や排ガス規制対応の問題から市場から消えましたが、理論空燃比で運転する直噴エンジンは欧州で2000年以降徐々に増えました。
2000年代半ば以降には、直噴エンジンとターボなど過給システムと組み合わせたダウンサイジングの過給直噴エンジンが欧州中心に普及しました。燃費を改良するために小さめの排気量のエンジンを使い、出力不足を過給機で補うコンセプトです。
ディーゼルエンジンは、1990年後半のコモンレール噴射システムの登場によって大きく進化し、欧州では2000年代半ばにはディーゼル車のシェアが50%近くまで伸びました。
コモンレール噴射は、ガソリンエンジンのように噴射時期や多段噴射など噴射パターンが自由に設定できるため、ディーゼルの課題であった排ガスと燃焼音が解決されたのです。
トヨタ・プリウスに続いて他メーカーからもHEVも登場し、さらに電気自動車EVも商品化されるなど電動化時代に突入しました。
安全技術については、レーダーやカメラを使った自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を採用したモデルが登場し始めました。安全技術も、クルマの大きな商品力となってきました。
●代表的な外国のモデル
2000年前半には、豪華な高性能車も市場に投入されました。
2002年には、ポルシェ初のSUVであるポルシェ・カイエンが登場しました。V型8気筒ターボエンジンは、最高出力380PSを達成し、SUVながらスポーツカーを圧倒する走りを誇示しました。
2003年に登場したフォルクスワーゲン・ゴルフ(5代目)は、燃費を意識して直噴エンジンと6段ATを組み合わせた仕様でした。その後も、DCT(デュアルクラッチ式トラスミッション)の採用、2Lから1.4Lにダウンサイジングするなど、積極的に燃費向上に取り組みました。
●代表的な日本のモデル
1999年発売の代表的なコンパクトカーのトヨタ・ヴィッツに対抗して、2001年にはホンダ・フィットが発売されました。軽快な走りと燃費の良さに加えて、室内スペースを確保することで人気を得て、2002年には国内販売台数でカローラを抜いて首位になりました。
2007年には、スーパースポーツカーの日産GT-Rが登場しました。
スカイラインの後継車ですが、スカイラインの冠を外して車格と性能を大幅に向上させました。3.8LツインターボV6エンジンで最高出力480PSを実現しています。
2009年発売の電気自動車の三菱アイミーブは、リチウムイオン電池を用いた世界初の量産EVで、航続距離は満充電状態で120kmでした。
2000年代は何よりも燃費性能が重視され、将来に向けてパワートレインの多様化が進んだ時代です。HEVはもとより、EVも登場し、さらに欧州ではHEVの対抗馬としてクリーンディーゼルも大きく飛躍しました。
そのため、メーカーには新しい技術の開発のために莫大なリソースが必要となり、提携や合併などメーカーの再編が加速しました。
(Mr.ソラン)