オープン2シーターの火付け役となった「ユーノスロードスター」【マツダ100年史・第24回・第7章 その2】

【第24回・2020年7月24日公開】

1989(平成元)年、現在もマツダで継承されている「人馬一体」をコンセプトに開発された「ユーノスロードスター」が発売されました。

「ユーノス」とはこの年に新設された、高級車などのスペシャルティカーを扱う販売チャンネルの名称です。

「ユーノスロードスター」は、2シーターのライトウェイトスポーツカーの火付け役として、国内外で大ヒットしました。ドライバーが手足のようにコントロールできるクルマを目指し、車体の軽量化と適正な重量配分など、細部のチューニングによって軽快で操ることが楽しいスポーツカーとして大きな注目を集めました。

第7章 バブル絶頂と崩壊、そして「Zoom-Zoom」

その2.オープン2シーターの火付け役となった「ユーノスロードスター」

●今なお人気が衰えない「ユーノスロードスター」デビュー!

1989(平成元)年7月、すでにシカゴモーターショーで衝撃のデビューを果たしていた「ユーノスロードスター」が、米国に続いて日本でも発売されました。
2019年にデビュー30周年を迎えましたが、初代NAに始まり、NB、NC、現在のNDまで4世代で進化を続け、いまも変わらず多くのファンを魅了しています。「ロードスター」と聞けば、世界中の誰もが、いまでもこのコンパクトなマツダのオープンカーを思い浮かべるくらいポピュラーなオープンカーです。
ユーノスロードスターは発売前の予約段階で大量のバックオーダーを抱えるほどの大人気となり、翌年1990(平成2)年にはAT車を追加設定して、その年の販売台数は25,000台を超えました。海外でも爆発的な人気となり、同年の世界での生産台数は95,640台の大成功を収めました。
このロードスターの成功を受け、トヨタの「MR-S」やホンダの「S2000」など、消滅しかけていたライトウェイトスポーツカーの市場が活性化しました。

ユーノス ロードスター(1989年9月)。
ユーノス ロードスター(1989年9月)。
ユーノス ロードスターの計器盤。
ユーノス ロードスターの計器盤。

●コンセプトは、人馬一体

現在もマツダの開発のキーワードとして受け継がれている「人馬一体」は、「ユーノスロードスター」の開発から始まりました。
「人馬一体」とは、乗り手がまるで自分の手足のように馬を操り、また馬も乗り手の要求に完璧に応え、馬と人が一体となったかのように、自由自在に走り回ることを意味します。もともとは、戦国時代の優れた騎馬武者を称える言葉です。
ステアリングを握るドライバーが、クルマのひとつひとつの動きを感じながら手足のようにコントロールできるクルマを目指して、「ロードスター」はパワーやスピードでなく、純粋に軽快な走りを楽しむスポーツモデルに仕上げられました。

●誰でも走りを楽しめるライトウェイトスポーツ

人馬一体を実現するために開発陣が特に注力したのは、軽快な走りのための軽量化やコンパクト化です。例えば2シーターの採用や軽いロードスタータイプの幌、アルミボンネット、ステンレス排気マニホールドなどです。
また、軽量化と同様、前後の重量配分にもこだわり、ステアリング操作に対するレスポンスのよい回頭性と安定した車体姿勢を維持するように、重量物をできる限り車体中央に集中させました。
エクステリアとインテリアのデザインは、能面をモチーフにした和のテイストを活かし、新時代のスポーツカーをアピール。また、丸目のリトラクタブル(格納式)ヘッドランプとリアコンビネーションランプは、デザイン性と機能性の両立で高い評価を受けました。
エンジンはあえてターボは使わず、ファミリア用の排気量1597ccの4気筒DOHCに手を入れて120PSにパワーアップ。縦置きエンジンの後輪駆動FR方式を採用して、軽快かつクセのないハンドリングを実現しました。

(Mr.ソラン)

第25回につづく。


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この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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